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ウクライナ軍「7万円のFPVドローン3機で連携して6億円以上のロシア軍の戦車を破壊」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「非対称の戦い」には何機でも必要なドローン

2023年9月にウクライナ軍が公式SNSで「3機の500ドル(約7万円)のFPVドローンで450万ドル(約6億6400万円)相当のロシア軍の戦車T-90Aを破壊しました」と動画とともに報告。標的に突っ込んでいき爆発するシーンをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影することも多い。FPVはドローンに搭載されたカメラからの風景が操縦者に見える。500ドルのドローン3機だから合計1500ドル(約21万円)でロシア軍の重厚な戦車に対して遠隔地でドローンを操縦している兵士らが連携しながら攻撃。最後は煙を吹き出した戦車を置き去りにしてロシア兵が逃亡すると3機目のドローンが戦車に向かって突っ込んでいき、とどめを刺した。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

小型民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいく、いわゆる神風ドローンによる攻撃や、小型民生品ドローンから爆弾を投下して標的を爆破させるなどウクライナ軍では1機数万円程度の安価なドローンによってロシア軍の高額な軍事施設や戦車などを破壊している。今回ウクライナ軍が公開した動画でも500ドルのドローン3機で450万ドル相当の戦車を破壊している。

ウクライナ軍が調達してきた安価な民生品ドローンに爆弾を搭載して突っ込んでいくだけだが、高価な歩兵戦闘車や対戦車ミサイルにでも突っ込んでいき爆発させたら、それらの軍事施設や兵器は使用できなくなる。いわゆる「非対称な戦い」で、コストパフォーマンスは高い。

だが、このような安価なドローンで高額な設備に攻撃をしているのはウクライナ軍だけでない。ロシア軍もイラン製軍事ドローン「シャハド」でウクライナ軍に突っ込んできたり、ウクライナ軍と同じように安価な民生品ドローンに爆弾を搭載してウクライナ軍に爆弾を投下したり、突っ込んで爆発させたりして攻撃を行っておりウクライナ軍とウクライナの民間インフラ、一般市民の生活に多大なダメージを与えている。

安価だが攻撃から監視・偵察までドローンは役立っている。だがすぐに検知されて簡単に破壊されてしまう。ドローンは戦場では何機あっても足りない。戦場での兵器は数がものを言う。クラウゼヴィッツも戦争論の中で「数の優位は戦術においても戦略においても勝利の最も一般的な原理である」(クラウゼヴィッツ著・清水多吉訳「戦争論(上)」中公文庫、2001年、P276)と語っていた。

▼500ドルのドローン3機で450万ドルの戦車を破壊したことを報告するウクライナ軍公式SNS

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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