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田中澄憲新監督、サンゴリアスのよさを「取り戻す」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季はゼネラルマネージャーとして、ダミアン・マッケンジー(右)の入団会見に出席。(写真:REX/アフロ)

 旧トップリーグで歴代最多タイの5度の優勝を誇り、昨季のリーグワン元年を準優勝とした東京サントリーサンゴリアスで、今季、田中澄憲新監督が就任した。

 もともと務めていたゼネラルマネージャー(GM)を辞し、ミルトン・ヘイグ監督からバトンを受け継いだ格好だ。

 2017年に入閣した明治大学では、監督就任1年目の18年度に22シーズンぶり13度目の大学日本一に輝いている。手腕と眼力が期待される。

 

 11月25日、東京都内のグラウンドで東芝ブレイブルーパス東京と練習試合を実施。45―28で勝利した後、原点回帰への思いを述べた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部。

——試合では、ボールを持たない選手の機敏さ、反応の鋭さが際立ちました。

「クラブの歴史を選手が理解し、サンゴリアスのラグビーにプライドを持つ。そうしてきたつもりです。僕らって、他のチームには7~8人、多いところでは10人以上もいるカテゴリーA(日本出身者と同枠で起用できる)の外国人選手が、2人しかいません。いくら(大卒の)いい選手がいると言っても、日本人なので。小さなディテールを大事にして勝ってきたチームなので、そこにはこだわっています」

——プレシーズンの練習がハードになったと噂されています。

「サンゴリアスって、ハードなチームなので。そうじゃないと、勝てないんじゃないですか。皆、それがわかっているし。(特定の)人に依存しないのがサンゴリアスの良さだと思います。そういうチームを作るというか、取り戻す過程なんですよね、いま。それで勝てなかったら意味がないので、そうして(原点に立ち返って)、勝つ、ということです」

——チームには「アグレッシブ・アタッキングラグビー」という普遍的なテーマがあります。定義づけるとしたら。

「(サンゴリアスは)日本で一番のファイティングスピリッツを持つ(べき)チームですし、リスクを恐れないで勇気をもってチャレンジすることがアグレッシブ・アタッキングラグビー。ぶらさずにやります」

 クラブの原点に立ち返りながら強化する重要性については、幾多の名将に学んでいる。

 そもそも「アグレッシブ・アタッキングラグビー」をチームの哲学としたのは元監督で現イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏だ。社是の「やってみなはれ」と紐づけて唱えた。田中はジョーンズのもと選手、広報を歴任した。

 明治大学を率いていた頃、世界的名将を引き合いに出してこう話したことがある。

「強いチームには独特のカルチャーがある。一流の人は、来る前にそれを調べてくる。エディー・ジョーンズ、ウェイン・スミス(※)はそうです。普通の人は、中に入ってから『あ、そうなんだ』と気づいて適応する。あまり賢くない人は、適応できずに自分のやりたいことを押し通す」

 就任の経緯については「…やれ、と言われたから。(コーチ陣の人事権を持つのが一般的な)GMが(監督に)手を挙げたらおかしいじゃないですか」と言葉を濁すが、こうも続ける。

「やると決めたら覚悟を決めないと」

 明治大学で監督の主将の間柄だった2年目の箸本龍雅は「安心感はあります。ただ、それに甘えることなく自分のやるべきことをやっている感じです」と話している。

 別な関係者は「昨年までも選手間の結束力はあったが、今季はスタッフと選手との間にも結束力がある」と証言した。

 サンゴリアスはリーグワン初戦を12月18日、東京・味の素スタジアムで迎える(対クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)。

※ウェイン・スミス=元ニュージーランド代表アシスタントコーチで、コベルコ神戸スティーラーズ(現名称)が2018年度のトップリーグ制覇した際の総監督。スティーラーズでは会社見学を繰り返し、選手やスタッフの帰属意識を高めた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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