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余市―小樽間19.9kmの鉄道維持に社員80名!?「余市駅を存続する会」北海道庁試算に苦言

鉄道乗蔵鉄道ライター

 2022年3月、2030年度末に開業が予定されている北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道からの経営分離が予定されている並行在来線後志ブロックの長万部―小樽間140.2km全線での廃止の方針が決定された。

 このうちの余市―小樽間19.9kmについては、コロナ禍前の輸送密度が2000人を超えており、鉄道として存続させる妥当性のある区間として余市町長が最後まで鉄道としての存続を訴えかけていた。しかし、協議会の席では、北海道庁側から鉄道路線維持のために沿線自治体の財政規模を上回る負担額を提示され、強引に廃止の方向に持ち込まれた。

 こうした、理不尽な北海道庁側の姿勢に対して、余市観光協会会長をはじめ、有志の町議会議員や町内在住のJR北海道OBでは「余市駅を存続する会」を設立。ホームページとツイッターアカウントを開設し、草の根的な情報発信を続けている。

▼余市駅を存続する会ホームページ
https://yoichi-railway.com/
▼余市駅を存続する会ツイッター
https://twitter.com/JrJr47919919

 「余市駅を存続する会」では、2022年12月「道庁試算収支の問題点」をホームページに掲載。北海道庁が試算した余市―小樽間19.9kmの鉄道維持のために必要となる費用について、「経費があまりにも過大に見積もられている」と余市町内在住のJR北海道OBなどのメンバーで数値の精査を行ったという。

 北海道庁の試算では、余市―小樽間を第三セクター鉄道として存続させる場合、45.4億円の初期投資額が必要となり、年間約5億円の赤字が出るとされた。

(北海道庁公開資料をもとに赤枠を加筆)
(北海道庁公開資料をもとに赤枠を加筆)

 しかし、本来であれば必要ではない鉄道施設の経費や、通常の第三セクター鉄道では考えられないほど高額に設定された車両価格、さらに従業員の平均給与額を500万円とした場合80名分に上る人件費が計上されているなど、鉄道事業の中身をよく知る前出のJR北海道OBは「呆れるほどひどい内容」だと憤る。ちなみに、余市―小樽間19.9kmと同程度、19.2kmの営業キロで列車を運行している鳥取県の第三セクター・若桜鉄道の社員数は17名だ。

▼余市駅を存続する会「道庁試算収支の問題点」
https://yoichi-railway.com/index.php/mondaiten/

 「余市駅を存続する会」では、2023年に入り鉄道政策にも詳しい大阪府のまちづくり団体から、鉄道統計年報に基づいて作成された「地方鉄道のサービスレベルを示した散布図」の提供も受け、この資料はホームページトップにも掲載された。資料からは、余市―小樽間よりも遥かに少ない輸送密度でも安定的に鉄道を維持している第三セクター鉄道が多いことが分かる。

 さらに、警察庁が公開している2021年度の「運転免許統計」によると、路線バスを運転できる大型2種免許の保有者は、その81%が50代以上で占め、働き盛りに差し掛かる20代、30代の保有者はわずか5.1%。今後、ドライバーの高齢化と人手不足がより一層加速すると見込まれ、赤字の鉄道路線の廃止によるバス転換が必ずしも地域交通維持のための解決策にはならない時代に突入している。

2021年度「運転免許統計」より筆者作成
2021年度「運転免許統計」より筆者作成

 「余市駅を存続する会」によると、2023年に入りニッカウヰスキーなど、余市への観光客は相当数戻ってきているといい、ニセコリゾート地の玄関口となる倶知安駅から余市駅を通り小樽駅へと向かう列車は、連日、混雑しているという。このまま鉄道の廃止を強行すれば、沿線地域の交通網の崩壊、さらに観光などの地域経済の破壊をもたらしかねない。

特に、余市ー小樽間では混雑が常態化している
特に、余市ー小樽間では混雑が常態化している

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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