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大学野球選手権 明大、伊勢の好投で38年ぶりのVに王手!

楊順行スポーツライター
明治大は3回から救援の伊勢大夢が7回を1安打の好投で勝利(写真/筆者)

 かつての"ミスター完投"が、見事な救援ぶりを見せた。第68回全日本大学野球選手権大会、準決勝。明治大・伊勢大夢は、東農大北海道オホーツク戦の3回から救援すると、その回には自己最速の151キロを記録するなど、8回まで無安打6三振。チームは8回、4点を奪って勝ち越し。伊勢は9回こそ初ヒットを許したが、球速は最後まで衰えずに打者23人から8三振を奪い、二塁を踏ませない好投で勝利を呼び寄せた。

「言葉は悪いですけど……」

 と、試合後の伊勢。

「先制されたのは(先発した)竹田(祐)。負けても自分のせいじゃない、くらいのつもりで、思い切って腕を振れました」

 と笑わせる。九州学院高時代には、2015年春夏の甲子園を経験。2学年下には、現ヤクルトの村上宗隆がいた。大学に進むと、1年秋からリーグ戦に登板し、昨春には先発二番手として3勝を挙げている。ただし今春は不調で、5試合に救援しただけだった。もともと、九州大会を制した高校2年秋には、明治神宮大会2試合を含め、公式戦全12試合を完投。15年のセンバツ2試合、さらに夏の熊本大会全6試合を1人で投げきった"ミスター完投"である。「ずっと調子が悪くて迷惑をかけていた」今春の内容には満足いくはずもなく、この大会にかけていた。

"伊勢詣で"が始まるか

 すると、先発した福井工大戦では6回2失点で勝利に貢献。この間には「足を上げてからワンクッション入れること」でタメを意識し、自分本来の投球、そしてチームからの信頼を完全に取り戻した。善波達也監督は、「伊勢がポイントでしたね」と好投をたたえ、本人は、

「151キロ? スコアボードの数字を見て、ちょっとうれしかったですね。"これで151が出るんだ"と、もうちょいいけるかなと思ったんですが……。今季一番の投球。相手を圧倒できたのはよかったと思います」

 と満足げだ。三塁側いっぱいのプレートを踏み、サイドハンドよりやや上から投じる直球は、右打者の外角への角度がえぐい。シンカーやチェンジアップも交えるから、外へのスライダーの精度が高まれば、もっと容易に打者を手玉に取れるだろう。これで、なんと38年ぶりの優勝に王手をかけた明大。仏教大との今日の決勝は、満を持してドラフト候補の森下暢仁が先発する。

「マサト(森下)は、雲の上の存在。尊敬しています」

 と伊勢はいうが、この日の好投でスカウトの"伊勢詣で"が盛んになるかもしれない。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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