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清宮だけじゃない! センバツの主役/その2  櫻井周斗[日大三]竹田祐[履正社]etc.

楊順行スポーツライター
昨年は智弁学園が初優勝。さて、今年は……(写真:岡沢克郎/アフロ)

第1日第1試合から第2日第1試合までの4試合に登場する8チームをAブロックとし、以下順にB、C、Dとしよう。まずAブロックでは初日、早くも日大三と履正社という、もったいないような好カードがある。

履正社は大砲・安田尚憲もそうだが、若林将平、筒井太成というクリーンアップが、昨秋公式戦の通算打点で上位3位までを占めるという得点力が脅威だ。チーム本塁打も、15本で最多。ただ日大三には、エース・櫻井周斗がいる。昨秋の東京大会決勝では、早実の清宮を5打席連続三振に取った左腕だ。

5三振はいずれも決め球・スライダーでのもの。「スライダーはカウント球と、決め球の2種類」とは本人で、最速144キロの直球と組み合わせ、早実からは14の三振を奪った。ただ、秋の背番号が8だったように、「投手としての経験が浅く、球数が多い」(小倉全由監督)。力で押すタイプのため、球数が多いと格段に球威が落ちてくる。早実戦でも、164球を投げてサヨナラ負けと力尽きた。「無駄な球を減らすこと」を課題としてきた冬、どれだけの成長を見せているか。

また日大三といえば、強力打線が伝統だ。昨秋公式戦の15本塁打は、履正社と並ぶ。ことに東京大会の準決勝で3ラン、決勝でも3ラン含む4安打5打点と覚醒した金成麗生に注目。身長193センチ、背筋力なんと300キロを越える大型一塁手は、アメリカ人の父を持つイケメンとして、デカプリオの愛称でも知られる。

なるか、150キロ超え……熊本工・山口翔

日大三打線に対する履正社のエースは、竹田祐だ。神宮大会決勝で自己最速の145キロをマークし、先発・救援で全4試合、20回3分の1を投げて1失点と、優勝に大きく貢献した。生まれ育ったのは、大阪府の大東市。履正社のライバル・大阪桐蔭の所在地にほど近い。話しているうちに、

「そういえば、高校時代の藤浪(晋太郎・現阪神)さんを町で見かけたことがあります」

と教えてくれた。エースとしてジャイアンツカップに出場した生駒ボーイズ時代には、練習グラウンドが近かったため、大阪桐蔭の練習を見学したこともあるという。それでも「大阪では、桐蔭ばかりが勝っていたので」という反骨心もあり、履正社に進む。だが入学当初は、強豪のレベルに愕然とした。

「1年上の寺島(成輝・現ヤクルト)さんと並んで投げると、イヤになりました。シュッ、という球のうなりがまるで違うんです」

さらに寺島の学年には、山口裕次郎(現JR東日本)という好投手もいたため、1年秋の新チームではショートを守った。だが昨春、「踏み出し幅を少し狭めて」課題だった制球力が向上。登板機会はなかったが、夏の甲子園ではベンチ入りを果たし、寺島らのサポート役に回っていた。

新チームがスタートすると、トレーニングの成果が球速アップに直結。大阪の準決勝では、大阪桐蔭に二ケタ安打されながら粘り勝ちし、神宮大会決勝では、「どこに投げても打たれそうだった」という清宮に2四死球を与えたが、ヒットは許していない。「左右どちらの打者にも、きちんとインコースに投げられる」(岡田龍生監督)のが、安定感につながっている。竹田はいう。

「寺島さんから"握りつぶす感じでリリースしろ"と教わったイメージが、やっとつかめてきました。それが球速アップにつながったのかもしれません。150キロを目ざしたいです」

自室の天井には、大谷翔平(現日本ハム)が高校時代に実践していたことで知られる目標達成シートが貼ってある。目標とするのは、もちろんチーム初のセンバツ制覇だ。

さらにこのブロックには、最速149キロの熊本工・山口翔もいる。「伸びのある直球とスピード系の変化球が持ち味。直球は、アベレージで140キロを超えていると思います」。第1日第3試合の登場で、相手は春連覇がかかる智弁学園とこれも好カードだ。もしかすると、初日から150キロ超えが見られるかもしれない。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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