「社会保険料、40年度3割増」を放置すれば「異次元の少子化対策」の効果はマイナスになる
現在の経済状況と人口動向が続いた場合、今後の社会保障負担はどれだけ増えるのでしょうか?
報道によれば、社会保険料は2040年度に今より3割増える可能性があるとのことです。
社会保険料、40年度3割増 給付膨張に歯止めかからず 専門家試算、少子化対策の効果相殺 (2023年6月23日 2:00 日本経済新聞)
このことは一定の前提を置いた計算(=(高齢世代数(40)/高齢世代数(20))×(現役世代数(20)/現役世代数(40))=(39,285/36,027)×(69,382 /58,079)=1.20×1.08=1.30)からも確認できます。
したがって、現状のまま社会保障を放置するならば、2040年度の現役世代の社会保険料負担が3割増えるのは確からしいということになります。
では、個々の家計ではどの程度毎月の負担が増えることになるのでしょうか?
そこで、総務省統計局「家計調査」を使って機械的に試算してみました。
まずは、所得階層別・勤労世帯の毎月の社会保険料負担増加額です(表1)。ひと月当たりの増加額ですから、12をかけることで一年あたりの社会保険料負担増額に変換できます。
平均的な勤労世帯でひと月2万円弱、一年あたり24万円弱負担が増えることになります。
次に、年齢別に見たものが下表2です。
結婚・出産予備軍、子育てに入ったばかりの世代である34歳以下の世代では、ひと月1万6千円超、一年あたりでは20万円弱の負担増となることが分かります。
この試算はあくまでも機械的なものであるとはいえ、岸田内閣が「異次元の少子化対策」と称して児童手当などをばら撒いたとしても、社会保障を放置しておけば、その効果は薄れるどころか、マイナスになってしまうわけです。
また、「異次元の少子化対策」では、社会保険料への上乗せ(子ども・子育て拠出金含む)が検討されているそうですが、それが現実のものとなれば、さらに家計の社会保険料負担は増える訳です。
全世代型社会保障の完成を目指してこのまま社会保障が肥大化するのを許していけば、当然負担の増加も現役世代のみならず高齢世代も含めて全世代が負うことになるわけですが、果たしてそれが私たちが望む社会なのでしょうか?