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ブスケッツ、シェーネ、マテュイディ。中盤の関係性と、試合を司る戦術解釈力。

森田泰史スポーツライター
シェーネとマテュイディ(写真:ロイター/アフロ)

中盤を制する者は、ゲームを制す。

もはや、一昔前のフレーズかもしれない。現代フットボールにおいては、トランジションが鍵を握る。攻守はめまぐるしく入れ替わる。攻撃が即ち防御であり、守備は攻めるための準備段階だ。

■重要性

ただ、中盤の選手の重要性は変わらない。

バルセロナの黄金期でシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシというアーティストを輝かせていたのは、間違いなくセルヒオ・ブスケッツだった。

ブスケッツこそがチームの運命を握る、所有者であった。そのためにはボールを受ける前に多くの情報を受け取らなければいけない。その情報を統合して、整理する必要がある。プレーの予測だ。二手先、三手先を読む。情報処理能力が問われるのである。

今季のチャンピオンズリーグのパス本数のランキングで、トップに立つのがブスケッツだ。上位に位置するのはブスケッツ、イバン・ラキティッチ、ジョルディ・アルバ、アイメリック・ラポルテ、フレンキー・デ・ヨングである。ブスケッツの数字(パス本数969本/パス成功本数908本/パス成功率93%)は驚嘆すべきものだ。

ブスケッツはトップデビューした2009-2010シーズン以降、パス成功率89%以上を維持している。2010-11シーズンには、1試合平均パス本数86本(リーガ)、99本(チャンピオンズリーグ)とキャリアハイの数字を記録した。

だが今季は1試合平均パス本数67本(リーガ)、79本(チャンピオンズリーグ)と彼のキャリアでワースト2位の数字だ。ラキティッチ、アルトゥール・メロ、アルトゥール・ビダルといった選手たちと中盤を構成したが、シャビやイニエスタがいた頃のようには自在にチームを動かせていない。

■組み合わせ

誰と組むか、という問題だ。そこで注目したいのが中盤の関係性だ。

アヤックスに所属するラス・シェーネやユヴェントスでプレーするブレーズ・マテュイディは目立つ選手ではない。チャンピオンズリーグにおけるデータはシェーネ(568本/496本/87%)、マテュイディ(301本/264本/88%)というものだ。

一方で、「相棒」に意識を向けると異なる視点が提供される。先のランキングで5位のデ・ヨング(804本/718本/89%)、準々決勝で敗退しながら11位に位置するミラレム・ピアニッチ(640本/563本/88%)、彼らを生かしているのがシェーネであり、マテュイディだ。

シェーネとマテュイディは引き立て役だ。錨(いかり)として、ピアニッチやデ・ヨングのポジションを確保する。彼らに空間を与える。戦術解釈力。判断力。試合を読む力。そのどれもが優れているから、できる芸当だ。

用心深く、ほとんど囁くように、誰も気にしないかのように彼らは淡々とプレーする。最小限の力で、最大の効果を発揮する。数字と統計のフィルターを通過した時、彼らの本質が見える。細かい動き、ポジション修正、見えない駆け引き。その結集が、試合全体で見た時に、大きな成果をもたらしている。

彼らのようなタイプの選手は静寂の中に存在する。決して、メディア受けする選手ではない。ビッグクラブの関心、それに付随する高額な移籍金、議論、噂...。そういうものとは無縁だ。彼らは騒音を出さない。完璧な機械のように、である。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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