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鎌田大地のデビュー戦勝利を阻んだのは何者? 新星候補アルムクビストは「タイの海岸育ち」

中村大晃カルチョ・ライター
2023年8月20日、ラツィオとのセリエA開幕戦で同点弾をあげたアルムクビスト(写真:ロイター/アフロ)

ラツィオに加入した鎌田大地は、セリエAデビュー戦を白星で飾れなかった。

8月20日のレッチェとの開幕戦で、ラツィオは1-2と敗れた。先制しながら、鎌田交代後の終盤に立て続けに失点し、逆転負けを喫している。

マウリツィオ・サッリ監督が状態の遅れを認めていただけに、ベンチスタートが有力視されていた鎌田だが、ふたを開けてみれば先発出場。指揮官の期待の大きさがうかがえるスタメン入りだ。

■鎌田のデビュー戦は?

実際、背番号6のパフォーマンスは悪くなかった。加入から日が浅く、チームとの関係を深める必要があるのは言うまでもない。だが、攻守両面で随所に知性を感じさせた。好機の起点となるパスやボックス内への飛び出しなど、ところどころで求められているクオリティーも見せている。

現地評価は決して高くない。各メディアの採点も、及第点となる6点もあったが、5.5点や5点が少なくなかった。とはいえ、辛口採点でもポテンシャルへの期待を感じさせる寸評が多かっただけに、「すべてはこれから」というところか。

辛口採点になったのは、セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチと比較されるなかで、得点や結果に直結するプレーがなかったからだろう。チームの結果も影響したはずだ。

■プレシーズンから好調のアルムクビスト

ラツィオの勝利を阻む同点弾をあげたのは、レッチェの新戦力ポントゥス・アルムクビスト(動画1分33秒から)。ロシアのロストフからレンタルで加入した今季のクラブ初補強だ。アクロバティックなゴールパフォーマンスを、『La Gazzetta dello Sport』紙は「オバ・オバ・マルティンス流」と評した。

スウェーデン出身の24歳は、プレシーズンからこの今季序盤にかけて絶好調だ。練習試合の2試合、コッパ・イタリアのコモ戦(動画58秒から)、そして今回のラツィオ戦とゴールを決めている。

ラツィオ戦ではタッチ63回、ドリブル成功7回、デュエル勝利11回、パス成功率91%を記録。ドリブルはレッチェで11年ぶりの数字だった。

■ビーチで磨いた技術

イタリアメディアによると、アルムクビストは幼少期をタイで過ごした。獣医の両親の仕事の都合だ。ビーチでボールを蹴る機会が多く、そこで技術が磨かれたという。なお、姉もプロサッカー選手で、スウェーデンリーグやU-19欧州選手権を制した経験を持つ。

スウェーデンに戻ったアルムクビストは、15歳のときにストックホルムでナイキのアカデミーキャンプに参加。ノーショーピングのユース入りを果たし、2016年に初プロ契約を結ぶ。ただ、決して順調なキャリアとは言えず、レンタル生活を繰り返し、2020年にロストフへ移籍した。

ウクライナ侵攻でFIFAがロシアのクラブに所属する外国人選手の移籍を容認したのを受け、2022年3月にユトレヒトへ移籍。昨季はポーランドのポゴニ・シュチェチンで過ごしている。

若手発掘に定評のあるレッチェのパンタレオ・コルヴィーノは、以前から注目していたようだ。2020年9月、U-21欧州選手権予選でイタリアがスウェーデンに0-3と敗れた際、ドッピエッタ(2得点)を記録したのがアルムクビストだった。このとき、ラツィオのルカ・ペッレグリーニとも対戦している。

■いずれエムバペやクバラツヘリアにも?

アルムクビストは入団会見で自分の特徴にスピードをあげた。これまでのリーグで常にスプリントが一番速かったと自負している。スポーツディレクターのステーファノ・トリンケーラもまず速さに触れ、「ダイナミックで強く、1対1で積極的」と表現。深さ(裏)を突くこともできると評した。

そのスピードとビーチで磨いた技術で、左右どちらの両翼もこなせるアルムクビストは、インスピレーションを感じたアイドルはいないと明かしている。だが、様々な選手をチェックしており、「名前をあげるならキリアン・エムバペをよく見ている」とのことだ。

キャリアベストはシーズン5ゴールと、決して得点力が武器ではない。代表でも、ネットを揺らしたのは前述のU-21イタリア代表戦だけだ。ただ、アルムクビストは入団会見で得点やアシストでも貢献したいと意気込んでいる。

ここまでは、その言葉どおりにできていると言えるだろう。ただもちろん、シーズンは始まったばかりだ。この勢いを保てれば、レッチェは完全移籍を目指すかもしれない。

ロシアを経験し、イタリア到着時に無名だった有望株といえば、クビチャ・クバラツヘリアを思い起こす人もいるだろう。アルムクビストは昨季のMVPのように大ブレイクできるか。今後に注目だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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