「のぞみ」ばかりの東海道新幹線で「ひかり」が果たす役割とは? 中規模駅利用者への配慮、乗客は多い
東海道新幹線には、「のぞみ」「ひかり」「こだま」が走っている。「のぞみ」は大きな駅のみの停車で、東名阪を直結する役割を果たしている。1時間に最大12本走らせることができ、日本の大動脈・東海道新幹線の中心的な列車である。いっぽう「こだま」は、各駅に停車し、短距離の移動を高速でできるようにするという役割を果たしている。通勤・通学などの利用も多いだろう。「こだま」は日中では、東京発は2本となっている。
では、「ひかり」はどのような役割の列車なのか。
都市圏私鉄の「急行」のような役割を果たす「ひかり」
都市圏の私鉄では、速達型の種別と、各駅に停車する種別など、複数の列車種別があることが多い。その中で、通過する駅もあるけれども、停車する駅もそこそこあるという中途半端な列車種別が存在する。多くは「急行」や「快速」を名乗っている。
「特急」が「のぞみ」で、「各駅停車」が「こだま」なら、「急行」は「ひかり」といった感じだ。
一定の速達性があっても、中規模な駅での利用者をがっちりと確保し、さまざまな利用者層の要望に応える列車ということになる。
現在の「ひかり」は、おおまかに分けて「のぞみ」の停車駅に加えて静岡や浜松に停車する列車と、小田原もしくは豊橋に停車し、名古屋以遠は各駅に停車する列車の2タイプに分かれている。これらには少々の停車駅が加わる。
巨大都市とは言わないまでも、各地域の中心的な都市や、乗り換えなどがある駅に停車し、それらの地域の利便性を図っているというのが、「ひかり」の果たしている役割である。
いまの「ひかり」は、どんな列車なのだろう? 機会があったので乗ってみた。
中間駅利用者で混雑する「ひかり」
新大阪9時18分発の「ひかり」644号に乗車してみた。乗車したのは7月15日で、「海の日」だった。なお普通車指定席である。「ひかり」は、東京~新大阪間のみの「のぞみ」のようにフレキシブルなダイヤではなく、完全な定期列車として走っている。
新大阪や京都からは、それほど多くの人が乗車してくるわけではない。人も少なく、ゆったりとした感じである。
米原のホームに入線すると、ホームには長い行列ができている。「のぞみ」の恩恵を受けられない駅だと、このように多くの人が利用するのかと驚いた。いっぽうでこの列車は9時44分米原着の敦賀発特急「しらさぎ」の接続を受けている。この利用者が結構いるということなのだろう。なおこの「しらさぎ」は名古屋に向かうので、米原で乗り換える人は東京方面に急ぐ人だとわかる。
米原には9時52分に到着し、9時57分に出発した。ダイヤ上はこの5分間で「のぞみ」を2本退避できるようになっている。
岐阜羽島には10時09分に着く。駅のホームにはものすごい人が並んでいる。乗車率は上がる。岐阜羽島での利用も結構多いとわかった。同駅は10時15分に発車、それまでに「のぞみ」を退避する。
名古屋には10時25分に着く。ここでの乗降は激しい。隣のホームに後から到着した「のぞみ」が先発し、10時31分に発車する。
続いての豊橋には10時50分に到着。多くの人が乗り込み、ほぼ満席に。51分発車なので「のぞみ」退避は想定されていないのだろう。
ここからは新横浜まで一直線。12時12分に東京に着く。「ひかり」でも3時間かからないことには驚かされた。
中間駅での利便性と速達性
「ひかり」は、静岡や浜松、豊橋、米原など、それなりの大きさがある都市や、乗り換え需要のある駅に停車し、そこと大都市圏を結ぶ列車だという役割を果たしているとわかった。停車する際には「のぞみ」を退避しなければならないことはあるものの、東海道新幹線3列車は列車の性能を完全に統一しており、「ひかり」でも利用者のためにできるかぎりの速達性を提供しようとしている。
静岡や浜松などの政令指定都市や、豊橋・岐阜といったそれなりの大規模都市、あるいは米原のような乗り換え駅のため、「ひかり」は走る。
巨大都市のようなところではない駅でも、それなりの利便性を確保するために現在の「ひかり」はあり、かなりの利用者が存在するのである。