「子供無し世帯」「一人親と子供のみ世帯」が増加中…「核家族」の中身の実情をさぐる(2024年公開版)
核家族は増加中だが、その中身は
世帯構成の一様式である「核家族」。その構成の実情変化を厚生労働省の国民生活基礎調査(※)の結果から確認する。
今回取り上げる「核家族」とは「夫婦のみ」「夫婦+未婚の子供」「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」で構成される世帯であると定義されている。要は三世代世帯ではない、核のみの世帯。1人だけで構成される「単身世帯」は含まれないことに注意。
まず「核家族」そのものだが、漸増を続けている。
そこで核家族を「夫婦のみ」「夫婦+未婚の子供」「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」の構成区分で区別して、それぞれの要素の推移を見ることにする。「夫婦のみ」はいわゆる「DINKS(ダブルインカム・ノーキッズ)」のライフスタイルを取ると自主的に決めている、あるいは諸般の事情でそうせざるを得ない夫婦の場合もあれば、(結婚してからまだ日が浅く)子供が授けられていないだけの場合もある。「父親か母親のどちらか一方+未婚の子供」は配偶者と死別、離婚した、あるいはいわゆる「未婚の母(・父)」の場合が想定される。または一人身となった親と、その親を介護する子供で構成される世帯もありうる。さらには片方の親が3か月以上の長期出張をしているなどで別居している場合も考えられる(その場合は今調査の項目において該当者は調査から除外される)。
まずは各種類の世帯数を積み上げた棒グラフが次の図。核家族が全体として増加しているのは先のグラフにもある通りだが、その内部構成の動向は「子供がいない核家族世帯の大幅な増加」と「一人親+未婚の子世帯の漸増」であることが分かる。
夫婦と子供から構成される、世間一般的なイメージとしての核家族数は1980年代までは急増、その後は横ばい、そして1990年以降は漸減に転じた。そして今世紀に入ってからは1400万世帯から1500万世帯のボックス圏内での推移に移行し、安定した動きとなっている。一方で夫婦のみ・一人親と未婚の子供世帯は漸増を続けており、核家族内の構造も少しずつ変化を遂げている。
構成比の算出で構造変化を見る
続いて、全核家族世帯数に占める世帯種類別構成比推移。このグラフで「核家族」を指し示す構造世帯の中身が、年月の経過とともに少しずつ変わりつつあるようすがよくわかる。
中央部分の赤い「夫婦と未婚の子供のみ」世帯の比率が年月の経過とともに漸減し、両サイド(「夫婦のみ」と「一人親と未婚の子のみ」)から圧迫を受けているのが確認できる。特に「夫婦のみ」の比率増加は著しく、この50年あまりの間で核家族全体に占める割合は2倍以上となっている。
また今世紀に入ってからは、その「夫婦のみ」世帯比率の増加も落ち着きを見せ、「一人親と未婚の子のみ」が増加を継続していたのが目にとまる。上記でも触れているが、高齢化に伴い介護される側・する側で構成される世帯、高齢者夫婦の片方が亡くなることでひとり親と子供だけ(子供の人数は単数とは限らない)となった世帯、さらには離婚した子持ち夫婦の増加によるものと考えられる。
一方、ここ10年ほどに限れば、「夫婦+未婚の子のみ」が減り、「一人親+未婚の子のみ」はほぼ横ばい、そして「夫婦のみ」が増加の動きを示している。特に2022年以降において「夫婦のみ」の伸び方が著しい。あるいは新型コロナウイルス流行の影響があるのかもしれない(2020年は新型コロナウイルス流行で調査そのものが中止されている)。
最後に純粋な世帯数を折れ線グラフにしたものを作成する。
「夫婦と未婚の子供のみ」世帯”数”は上記でも言及した通り、1980年代までは急増したものの、その後は横ばい、さらに1990年以降は漸減に転じ、今世紀に入ってからは横ばいに。一方で「子供がいない核家族世帯の大幅な増加」と「一人親+未婚の子世帯の漸増」が確認できる。さらに2022年以降において上記で触れたように「夫婦のみ」の伸び方と「夫婦+未婚の子のみ」の減り方が顕著なものとなり、あと数年で両者の序列が入れかわりそうではある。
「一人親+未婚の子世帯の漸増」は高齢者がいる世帯の増加で説明ができる。一方で「子供がいない核家族世帯」、つまり「夫婦だけの世帯」の増加は、単に「子供が授かるのを待っている状態」「しばらく新婚生活を楽しみたい世帯」の増加だけでは説明がつきにくい。
色々と理由を探してみたが、「結婚しても子供を持つ必要性を感じない夫婦の増加」が大きな要因と考えられる。要は「子供を持つ事に消極的な、親と同居もしない夫婦だけの世帯が増加している」ことになる。
世帯・家族に対する価値観の変化や、生活の上での金銭的な厳しさがこの傾向をもたらしているのだとすれば、早急に何らかの、そして長期的な視点で対策をする必要があろう。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2023年6月1日に世帯票、同年7月13日に所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収、または政府統計共同利用システムにより回答され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万471世帯分、所得票が4674世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2023年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票と貯蓄票のみの調査が実施されている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。