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今春卒業予定の大学生の1月末時点での就職内定率は87.8%、前年同期比でプラス1.1%ポイント

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 内定を勝ち取り桜に見送られる形で卒業できるか……

2月1日時点の内定率は5年連続の改善

厚生労働省が2016年3月18日に発表した2015年度における大学等の新卒者就職状況に関する最新調査結果によると、2016年1月末時点の大学卒業予定者の就職内定率は87.8%となった。前年同期比で1.1%ポイントの改善となる。つまりそれだけ同じ時期における就職状況が改善したことになる。

↑ 中卒~大卒予定者の就職(内定)率(2016年1月末時点と2015年同時期)
↑ 中卒~大卒予定者の就職(内定)率(2016年1月末時点と2015年同時期)

短期大学の就職内定率は大学や高等専門学校と比較して低めに出てしまう。今回調査の就職内定率もそれに習う形で、やや差が生じている。もっともこれでも前年同期と比べるとプラス7.9%ポイントと大幅な改善。

前回(2015年12月1日時点)、前々回(2015年10月1日時点)の調査結果発表時点では一部属性で前年同期比にてマイナス値が出るなどの軟調さがあったが、その主要因と考えられる解禁日(民間企業の大学・短期大学における学生の採用面接解禁時期)がこれまでの4月から8月へと大幅に後ろ倒しとなったことの影響は、ようやく今回発表時期に至り、薄れた、無くなった感はある。

今年度分では初めて具体的数字が計上された中学新卒者の内定率は、前年同月と比べてマイナスを示している。求人数は増えているものの、求職者数が減っており、求人倍率も増加した上でのマイナスであることから、求職者が就職先をより熟考して選択中であるか、望みの好条件による求人案件が提示されていない可能性がある。単に雇用市場が悪化した結果としての内定率の低下ではなさそうだ。

中期的な内定率の推移

厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定率)において、過去のデータを逐次抽出し、(金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため)過去11年間における動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にある状況が容易に把握できる。

↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(~2016年2月1日)
↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(~2016年2月1日)

厚労省では2月1日時点における就職内定率は2000年3月卒業者の分から計上しているが、その領域内では最高値は2008年3月卒業者の88.7%。今回の87.8%はそれに次ぐ値となる。

↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(各年2月1日現在)
↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(各年2月1日現在)

大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感では無く、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気が良くても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。

つまり学生諸子の就職率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それと共に安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更をスナック感覚で行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。

他方、中学・高校卒業者は大学卒業者と比べて短期間での離職率が高いことでも知られている。

↑ 在職期間別離職率の推移(中学校・高等学校・大学卒業者)(3年目までの総計)(2013年は1年目と2年目、2014年は1年目のみ)(厚生労働省「若年者雇用関連データ」から作成)
↑ 在職期間別離職率の推移(中学校・高等学校・大学卒業者)(3年目までの総計)(2013年は1年目と2年目、2014年は1年目のみ)(厚生労働省「若年者雇用関連データ」から作成)

内定率そのものは高くても、定着率が低ければ、企業も学生も双方とも不幸となる。企業側の人手不足が深刻化する昨今、「仕方なくこの企業を選ばざるを得ない」といった状況も減りつつあるのが幸いなところ。定着率も上昇し、より健全な、雇用・被雇用双方が望む状況に移行しながら、就職内定率が上がるよう、望みたいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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