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群馬で犬が12人にかみつく 人を襲った犬はどうなる? 凶暴な犬に遭遇したときの対策

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
犬が怒っているイメージ写真(写真:イメージマート)

7日夕方、群馬県伊勢崎市の公園で、学童保育の小学生から大人まで合わせて12人が次々と、犬にかまれました。かんだ犬は体長約130センチの「四国犬」で、すでに確保され、動物愛護センターに保護され、飼い犬だったことが明らかになったと、日テレNEWSは伝えています。

人を襲った犬はどうなるのか?

「厚生労働省 飼い犬が人を咬んだ場合の手続きについて」より
「厚生労働省 飼い犬が人を咬んだ場合の手続きについて」より

事件を起こした犬は野良犬ではありません。この犬の飼い主は上記のような「事故発生届」を管轄の保健所か動物愛護センターに提出する必要があります。

「厚生労働省 飼い犬が人を咬んだ場合の手続きについて」より
「厚生労働省 飼い犬が人を咬んだ場合の手続きについて」より

それに加えて、上記の「咬傷犬狂犬病検診票」のような狂犬病の有無に関する検診を受けて「診察の写し」を提出する必要があります。

今回の犬は、1回目に狂犬病の有無がないか、獣医師により診断されます。そして、2週間後に2回目の検診を受けます。それを経て、狂犬病にかかっていないということになり、飼い主に伝えられます。

もし、狂犬病の予防注射を打っていない場合は、2回目の検診の後に、予防注射します。

12人もかんだ犬ですが、このような検診を受けて、たぶん飼い主の元に帰ると推測されます。もちろん、自宅から逃げて多くの人をかんだので、警察や保健所から、指導を受けます。

SNS上では、殺処分されるのでという投稿が数多くありますが、いまの時代は、殺処分とはあまりしない時代になっています。

実際問題、日本でも狂犬病の可能性はあるか?

日本国内では、人は昭和31年(1956年)を最後に発生がありません。また、動物では昭和32年(1957年)の猫での発生を最後に発生がありません。

しかし、海外では狂犬病が発生しているので、犬にかまれたら注意をしなくはていけません。

狂犬病は一旦発症すれば効果的な治療法はなく、ほぼ100%の方が亡くなります。いくら60年以上、日本に狂犬病が発生していなくても注意は必要です。

四国犬ってどんな犬?

柴犬は、雨の日に散歩が嫌いで嫌がる様子などをよくSNSで見かけます。その一方で、今回、事件を起こした四国犬は日本では珍しい犬です。

柴犬より少し大き目な犬です。四国犬は、主に高知県の原産の中型犬です。もともと猟犬で、絶滅の危機に陥ったので、1937年(昭和12年)に国の天然記念物として指定されました。

(体重)

雄 17~23 kg

雌 15~18 kg

(体高)

雄 49~55 cm

雌 46~52 cm

日本犬は、主人には忠実でありますが、他の人には懐かず警戒心を示します。

FNNプライムオンラインの取材で、飼い主が「基本的に人懐っこい犬です。人にけがを負わせるという話で、私もビックリしている。ご迷惑をおかけして、大変な思いさせて、申し訳なかった」と答えています。

飼い主には、従順ですが、外で知らない人ばかりいて、不安になり興奮状態になると、人をかむことはあるのです。

公園などで凶暴な犬と遭遇した場合、どのように振る舞うべきか

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

現実的に、凶暴な犬に遭遇することは、絶対にないわけではないです。今回のように、学童保育で公園で遊んでいたら、急に犬に襲われてかまれたのですから。

凶暴な犬に遭遇したら、以下の5つのことに気をつけてください。

1、犬から走って逃げない

四国犬は猟犬です。そのような犬は、特に走っているものを追いかける習性がありますので、走らないでおきましょう。

2、その場で動かない

犬は動いているものを標的にします。じっとして、気配を消して佇んでおきましょう。

3、大きな声を出さない

犬が苦手な人が、犬に襲われそうになっているときに、静かにしておくことは、難しいです。でも、大きな声を出すと犬が興奮します。

4、犬と視線を合わさない

凶暴な犬がウロウロしていると、じっと見てしまいますが、視線を合わさないようにしましょう。犬にすれば、喧嘩を売られているのかと勘違いしてしまいます。

5、犬に背中を見せない

すぐにも逃げたいところですが、犬に背中を見せると追いかけてきます。ゆっくり下がるのがいいです。

現場にいなかったので、これは推測ですが、犬は猫のように上下運動ができないので、犬の体高より高いところに上ってしまうのがいいです。公園なので、滑り台の上に乗ってしまうのもいいです。

咄嗟のことなので、そのようなところに上がれないこともありますが。

犬は悪くない、飼い主は適切に飼いましょう

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

四国犬に襲われて12人もの人が、かまれて痛い目に遭い、怖い思いをしました。命に別条がなかったのは、よかったです。そうはいっても、特に小学生の人は、犬を見ると怖くて仕方のない人もいることでしょう。

咬傷の手当は当然ですが、心の方もきちんと治療をしてもらいたいです。

人をかんだ四国犬は、自宅が外装工事をしていたので、それでイライラして逃走して、今回のような事件になったのかもしれません。外装工事をしているようなときは、室内に閉じ込めておくべきだったのでしょう。

犬にしてみれば、自分の家というテリトリーに知らない人が入ってくるので、気にいらないし、興奮して公園でこのような事故になりました。犬の性質を理解して、絶対に逃げないように2重、3重に警戒しておくことは重要です。

飼い主の判断ミスで、被害に遭う人が出てくるのですから。犬を飼う場合は、その犬の習性をよく理解して飼ってほしいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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