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史上最年少のオスカー受賞者誕生か!?「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ!!

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
オスカーの大穴で本命・ティモシー・シャラメ(写真:Shutterstock/アフロ)

賞レースで一際目を引く「君の名前で僕を呼んで」

 本年度の映画賞レースも佳境に入って来た。作品ではゴールデン・グローブ賞の7部門で候補に挙がったギレルモ・デル・トロの「シェイプ・オブ・ウォーター」や、同6部門で続く「スリー・ビルボード」、ワシントンを始め全米の批評家協会賞を3つ制覇した「ゲット・アウト」あたりがフロントランナーだろうか。「ゲット・アウト」と並ぶ最大のサプライズというか、今年のアワードシーズンを象徴する異色作は、少年と年上の青年とのひと夏の恋を北イタリアの美しい風景をバックに綴る「君の名前で僕を呼んで」だ。同作はロサンゼルス批評家協会賞の作品賞受賞を始め、作品自体への高評価もさることながら、高い確率で主演男優賞部門を制覇している点が注目される。

 主人公を演じる現在21歳のティモシー・シャラメは、ニューヨーク、L.A.、ボストン、シカゴの各批評家協会賞で主演男優賞を、また、ゴッサム・アワード、ハリウッド映画賞、ナショナル・ボード・オブ・レビューで新人俳優に贈られるブレークスルー・パフォーマンス賞を受賞。その演技がいかに瑞々しく、プロの批評家たちに衝撃を与えたかが伺える受賞結果だ。勿論、シャラメは年明け早々に発表される第75回ゴールデン・グローブ賞のドラマ部門主演男優賞でも、トム・ハンクス、ダニエル・デイ=ルイス、デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン等、過去に輝かしい受賞歴がある実力派のベテランたちと共に堂々候補リストに名を連ねている。

夏のロンバルディアで燃え上がる少年と青年の恋

 1983年の北イタリア、ロンバルディアにある瀟洒な別荘で、家族と共にひと夏を過ごす17歳の少年、エリオが、大学教授の父親が別荘に招いた24歳のアメリカ人大学院生、オリヴァー(アーミー・ハマー)と恋に落ちる。映画のプロットと言えばそれだけなのだが、イタリア人監督のルカ・グァダニーノは、エリオが思春期独特の素直さで自然にオリヴァーに惹かれていく過程を、アルプスから染み落ちた冷たい水を湛えた川や、風がそよぐ乾いた草原や、夏休みで閑散とした街角をキャンバスに使い、まるで絵画を描くように映像にして行く。そしてシャラメは、エリオのオリヴァーに対する興味がやがて恋に変わっていく様子を、時折性的欲望を無邪気に爆発させる場面を挟みながら、恥じらうことなく、とても自然に演じている。

瑞々しいティモシー・シャラメの肉体と表情

夏に恋する少年、エリオ
夏に恋する少年、エリオ

 このテーマを観客に嫌悪感を持たず受け容れて貰うために、早くからキャスティング作業を始めたグァダニーノは、2013年にエージェントから紹介されたシャラメをエリオ役に決めたと言われる。フランス人の父とユダヤ系アメリカ人を母に持ち、叔父が監督で祖父が脚本家という芸能一家に育ったシャラメは、名門コロンビア大学を卒業後、何本かのTVドラマやオフ・ブロードウェーの舞台出演はあったものの、当時はまだほぼ無名。その後にクリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」に出演したり、「スパイダーマン・ホームカミング」のオーディションではトム・ホランドと最後まで主役の座を争ったりもしている。

 グァダニーノがシャラメを選んだ理由は、幼い頃に父親の故郷フランスに住んだことがあることから、劇中で使われるフランス語が堪能で、同じくイタリア語が抵抗なく話せるヨーロッパ的な感性を察知したからではないだろうか。狙い通り、シャラメは言語の壁もセクシュアリティの垣根も抵抗なく乗り越えて行く少年の屈託のなさと、そして、ハリウッドの若手俳優にはない独特のデカダンを漂わせて、終始観客の目を釘付けにするのだ。

来たるG.G賞とオスカーも制覇するのか!?

 そんなシャラメと、監督が「ソーシャル・ネットワーク」を見て惚れ込み、オリヴァー役をオファーしたというハマーが演じるラブシーンのスリルが半端ない。前々作の「ミラノ、愛に生きる」でも試みたように、グァダニーノ作品ではラブシーン及びセックスシーンのリアリティが、他のどの映画より傑出している。ディテールにこだわるその描写は、昨今のハリウッド映画がスルーする真のエロチシズムを思い起こさせるものだ。

 初主演作で監督の無理難題に応え、その体と表情で初恋の切なさを演じきったティモシー・シャラメ。アワードシーズンのラストを飾るアカデミー賞で、もし、主演男優賞に輝けば、29歳で受賞した「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディの記録を一気に破って、弱冠22歳で史上最年少ウィナーになる。どうやらその可能性は大いにありそうだ。

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「君の名前で僕を呼んで』

2018年 4月 TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開

配給:ファントム・フィルム

提供:カルチュア・パプリッシャーズ/ファントム・フィルム

(C) Frenesy, La Cinefacture

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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