男子サッカーがスペインとなでしこジャパンから学ぶこと
五輪の女子サッカーは、男子サッカーよりメダルの価値が重い。年齢制限のないチャンピオンシップ。W杯同様、五輪で収めた成績が、直にその国の実力を推し量るバロメーターになる。内容も重要だが、それ以上に結果が問われる。
一方、男子はW杯のステイタスを10とすれば、五輪のそれは1程度。今回の場合は、翌年W杯(カタール大会)が控えているので、そのステイタスは通常よりさらに下がる。サッカーはホームの有利が際立つ競技。森保一監督が掲げる目標も金メダルになるが、冷静に考えれば、最大の注目ポイントは、今後に期待を抱かせるサッカーができたか否かになる。
五輪代表選手の中から、この9月に始まるW杯最終予選のメンバーに残る選手がどれほどいるか、定かではないが、監督の顔は変わらない。五輪で酷い成績を残せば更迭論も出るだろうが、それはともかく、監督の力量をチェックするには、五輪は絶好の機会になる。
男子と女子それぞれのトーナメントが一緒に行われる珍しい機会だ。今日は男子、明日は女子という感じで、交互に試合をする。先日も似たようなパターンで親善試合が行われた。
男子が大阪(ヨドコウ桜スタジアム)でホンジュラスと対戦したその2日後、女子が京都(サンガスタジアム)でオーストラリアと対戦した。男女両チームを思わず見比べることになった。さらにその3日後、男子がスペインと神戸(ノエビアスタジアム)で対戦する。
オーストラリア監督は試合後、日本について「今回の五輪に出場するチームの中でも最も技術的に優れたチーム」と述べた。しかし、この傾向はいまに始まったものではない。なでしこジャパンは10年前、2011年W杯で優勝を飾った時、すでに技術的には世界一の座に就いていた。体格に勝る相手に技術で渡り合い、その結果、まさに柔よく剛を制するがごとく、手にした栄冠だった。
だが、その後、体格で勝る国が次々に技術を進化させたことで、日本の地位は徐々に後退。FIFA女子ランキングは現在11位。落ちるところまで落ちたという印象だ。
だが今回、ホームの利を抜きにしても、ランキング以上の成績を残すような気がしてならない。期待値の背景にある要因は、オーストラリア監督も指摘した世界一の技術だ。日本に追いつけ追い越せとばかり、他国は技術力を大きく上昇させたとは先述の通りだが、それでも日本は先を越されなかった。負けじと技術力を向上させたからに他ならない。それを原動力に失地を回復する傾向にある。右肩上がりに転じている。これ流れでどこまで上を狙えるか。女子の五輪サッカーは、そうした意味で見物というか、興味深い。
ベスト8なのか、ベスト4なのか、メダルに手が届くのか、なんとも言えないが、姿勢にブレはない。私たちにはこれしかないという、割り切りというか、気概のようなものを感じる。技術で他の追随を許さない姿。他国の監督に「日本は技術では世界のトップ」と、言わしめる姿は、長年、男子サッカーを取材してきた筆者には、羨ましく感じられる。
男子サッカー界も見習うべき姿勢だと考える。男子はまだそこまで割り切れていない。技術的にもスペインとの間には、依然として大きな差がある。体格面でもスペインに劣っているというのに、だ。
日本は、W杯本大会に出場する32チームの中では毎回、30番目あたりを定位置にする低身長国だ。女子と同じ立場にある。デュエル(1対1の強さ)やインテンシティ(プレーの強度)の追究こそ欠かせないテーマだと声高に叫ぶ人は多いが、それが1番、2番ではないと考える。技術を極めることを列強と対峙する最適な方法とするべきである。もちろんバランスの問題であるし、男子と女子でサッカーの競技性が微妙に異なることも承知している。しかしそれでもここは、女子の方法論にあやかるべきだと考える。
さらに日本の女子は見るからにフェアプレーだ。故意に相手の足を踏んだり、肘撃ちをしたり、接触プレーの際に変な反則を犯す選手はいない。サッカー選手かくあるべしと言いたくなる、模範的なプレーを続けている。正攻法と言いたくなる方法論で、上位をうかがおうとしている。いい意味での綺麗事を追究しようとするその姿勢。男子サッカーも見習いたいものである。男子は、「世界で最も技術的に優れたチーム」と評されるチームになった時、どれほどの結果を残せるか。技術を最大の拠り所に、世界とどこまで戦えるか。その可能性に懸けてみる価値はあると考える。