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アマゾン従業員の年収中央値が300万円とは? FBの2600万円とは対照的

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米アマゾン・ドットコムにおける従業員の年収中央値は、2万8446ドル(307万円)で、米フェイスブックの年収中央値である24万430ドル(2593万円)のわずか1割強程度にとどまる。

ITビッグ4の中で異質

 GAFAとも呼ばれるITビッグ4(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、世界中に勢力を広げる、米国を代表するテクノロジー企業として、比較されることが多い。

 これら企業の従業員は、多くが高額な報酬を得ている。だが、巨大な物流施設を数多く持つアマゾンは、4社の中で異質だと、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 同紙によると、2万8446ドルというアマゾンの年収中央値は、大手菓子メーカーのハーシーと同水準で、ホームセンター大手のホームデポよりも若干高い。

 米国では2010年にドッド・フランク法(米金融規制改革法)が導入され、上場企業には、役員報酬と一般社員の給与格差の開示が義務付けられた。これに基づき、今年(2018年)に入って、約330社の大企業が、初めて年収の中央値を公表したという。

 これにより、50万人超いるアマゾンの従業員は、その大半が、いわゆる「6桁の年収」(数千万円)を稼ぐ人ではないことが分かった。

 それら大半の人々は、ソフトウエアのコードは書かない。トラックから荷下ろしし、フォークリフトを運転し、商品を集めるために、1日数キロメートル歩く。

 ただし、その給与は、他社で倉庫業務に携わる人々のそれと同じ水準であり、アマゾンの給与が特に低いというわけではない。他のテクノロジー企業とは違うということにすぎない。

小売り・物流のカテゴリーでは上位

 有価証券報告書のデータ分析を手掛けるMyLogIQによると、年収中央値が高い米企業には、バイオテクノロジー企業のインサイト(25万3015ドル、2730万円)などがある。

 前述したとおり、フェイスブックの中央値は24万430ドル(2593万円)で、これに次ぐ額。また、ツイッターは16万1860ドル(1745万円)、セールスフォース・ドットコムは15万5280ドル(1674万円)。

 これに対し、アマゾンは、2万8446ドル(307万円)だが、この額は、小売り・物流のカテゴリーで見ると5番目に高く、ホームデポや、百貨店大手のメイシーズ、衣料品大手のギャップ(GAP)、小売り大手ウォルマート・ストアーズを上回っている。

「グーグル、UPS、ウォルマートが合併したような企業」

 アマゾンの創業は1994年。同社はその翌年から書籍のネット販売でサービスを開始し、1997年に上場。それから20余年。ソフトウエアで業務を効率化したり、デジタルコンテンツ配信サービスを手がけたり、クラウドコンピューティング市場で業界トップになったりと躍進した。

 最近では、AI(人工知能)アシスタントサービスで、他社を大きく引き離している。こうして、同社は、その技術力を背景に、事業を拡大してきた。

 しかし、これらの仕事を中心的に行うのは、シアトルの本社などに勤務する約4万5000人のホワイトカラー職。アマゾンの物流施設で、商品を集めて梱包し、運搬などに携わる大半の人々は、これとは対照的だとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 同紙によると、こうして、多岐にわたる職種を必要とするアマゾンについて、専門家は、「グーグルと、大手物流事業者のUPS、ウォルマートの3社が合併してできたような会社だ」と表現している。

 サプライチェーンと物流のコンサルティング会社、MWPVLインターナショナルによると、アマゾンは2018年6月現在、世界に741の物流施設を持っている。

 この中には、フルフィルメントセンター(発送センター)、ソーテーションセンター(仕分けセンター)、デリバリーステーション(宅配ステーション)、eコマースの商品を最短1時間以内で届ける「プライム・ナウ(Prime Now)」の拠点などがある。

(このコラムは「JBpress」2018年4月24日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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