令和3年地価調査発表 ~固定資産税都市計画税は、値下がりするのか?
1 地価調査とは。そして驚くべきポイントとは?
(1)都道府県地価調査とは?
9月21日、令和3年都道府県地価調査の結果が国土交通省より公表されました。
(参照:国土交通省ホームページhttps://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_fr4_000001_00065.html)
都道府県地価調査とは、都道府県が毎年この季節に発表する「地域の標準的な土地の単価の適正な価格の指標」で、この調査によって決定される価格を都道府県地価調査基準地価格といいます。ちなみに3月下旬にも同様のものが国土交通省から公表されており、こちらは公示価格といいます。
これらは一定の実務経験を有する不動産鑑定士の鑑定評価に基づくのですが、ほとんどの地点は前年と同じ場所で価格を発表しているので、「この地点は前年から上昇した」「この地点は下落基調」といった分析ができるのです。
(2)今年の傾向は?
今年の場合は、例えば東京の住宅地や名古屋、福岡では上昇基調だったようです。私自身も都内の市や町の数地点の都道府県地価調査基準地価格を決定するための鑑定評価を担当させていただいているのでわかる面もあるのですが、確かに都内の住宅地は例外的な地点を除き、微増傾向にある気がします。
その一方で、東京都心の商業地の地点は△0~2%程度の微減が多いのですが、驚いたことに、新宿区歌舞伎町の「新宿5-1」の地点はこの1年間で△10.1%、中央区銀座の「銀座5-15」の地点は△9.0%、大阪市の道頓堀沿いの「大阪中央5-3」に至っては△18.5%と、特に繁華街での中心部の地点では極端な下落が目立ちます。このことから、コロナ禍における繁華街でのダメージが大きい様がうかがえます。
これに関連するネットニュースを見ていたところ、コメント欄に「固定資産税・都市計画税も下がるのかなぁ」という疑問の声があったのを発見しました。今回は、この点について所見を述べたいと思います。
2 地価が下がっても、固定資産税・都市計画税が下がるとは限らないって、ホント?
(1)税額減免の条例とは?
固定資産税や都市計画税は、宅地の場合、住宅地とそれ以外で税額の計算式が異なるのですが、「まずは固定資産税評価用の価格」を求めて一定の算式に当てはめ、税額を計算する流れになります。
そして固定資産税評価用の価格は、実際の市場の価格よりは安めなのですが、一定程度は公示価格や都道府県地価調査基準地価格とは連動します。
「だったら、例えば下落基調の東京都区部の商業地の固定資産税や都市計画税も下がるのでは?」と普通は思うでしょう。
ただ、もちろん例外はありますが、結論からいうと、「下がらない場合も多い」と思います。
なぜか。
それは、税額減免の条例があるからです。
この条例は、ある年の地価が急上昇しても、その年の固定資産税・都市計画税まで急上昇させると納税者側に酷なため、例えば都内であれば「前年の税額の1.1倍まで」に上昇幅を抑える制度です。なお、令和3年についてはコロナ禍の特則で基本的には1.0倍以内となっています。
ちなみに、都税事務所によると「地価が下がっている場合に税額の減額幅を抑える制度」という逆パターンの条例はないそうです。
(2)けっきょくのところ固定資産税・都市計画税は下がるの?
実は、東京都区部の高額商業地の場合、過年度の経緯が累積している結果、「今の税額が本来あるべき税額まで上がりきっていない」場合があり、このような場合にまで税額を下げるのは妥当ではありません。
このため、「令和3年の地価が下がっているから、令和3年の固定資産税・都市計画税も下がる」という期待が削がれる結果となるのです。もちろん総務省も一定の配慮は求めていますが、それでも下がらない場合は多いと思います。
個人的な予測ですが、コロナ禍においても一定の需要が認められるため一部の特殊な地域を別として、ここ1~2年程度は首都圏の住宅地は全体的に微増傾向を描くのではないかと思います。
したがって、首都圏や京阪神のほとんどの都市部の地域でも、固定資産税・都市計画税が劇的に安くなるのは今時点では現実的ではないかと思います。