Yahoo!ニュース

もうウノゼロ狙いは古い? セリエA、過去最多ペースの得点数でプレミアリーグに迫る

中村大晃カルチョ・ライター
セリエAの試合球(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

イタリアのサッカーは守備的だ――このレッテルは、いまだになくなっていない。「カテナッチョ」や「ウノゼロ」といった表現も、一部ではカルチョを揶揄する際に使われる。だが、少なくとも今季のここまでに限れば、セリエAは決してゴールが決まらないリーグではないようだ。

◆過去最多ペースの得点推移

『コッリエレ・デッロ・スポルト』は21日付の記事で、第17節までの今季のセリエAの総得点が474ゴールだと報じた。3シーズン前の473ゴールをわずか1得点ながら上回り、同リーグが20チーム制となった2004-05シーズン以来、最多の数字という(※ペスカーラ対サッスオーロは規定違反でサッスオーロが0-3の不戦敗となったが、もともと2-1で終わっていたので得点数は変わらず)。

このままのペースが続けば、今季のセリエAでは1060ゴールが決まる計算となる。2012-13シーズンの1003得点、2013-14シーズンの1035得点、2014-15シーズンの1034得点を大きく上回り過去最多となる数字だ。979得点だった昨季から81ゴールも多くなる。

第17節終了時では過去13季で最多のペース
第17節終了時では過去13季で最多のペース

◆プレミアやリーガにも負けない?

また、『コッリエレ』紙は、この数字がイングランド・プレミアリーグにひけを取らないものであることも指摘した。同じく第17節を終えた時点で、プレミアリーグの総得点は478ゴール。セリエAとは1ゴールしか違わないのだ。

一方、スペイン・リーガエスパニョーラは468ゴールだが、クラブ・ワールドカップを制したレアル・マドリーが1試合未消化なのに加え、まだ第16節を終えたところとあり、セリエAより試合数が11試合も少ない。『コッリエレ』は、「あちらでは守備のコンセプトが我々のそれとは少しばかり異なるが…」と、挑発なのか自虐なのか、それとも強がりなのか分からない一言をつけ加えている。

◆引き分けやウノゼロが減少

今季のセリエAはただ得点が決まっているというだけではない。ドローに終わったのが170試合中34試合と全体の20%にとどまっている。昨季はシーズン全体で380試合中95試合と全体の25%が引き分けだった。スコアレスドローも昨季の8.1%(380試合中31試合)から6.5%(170試合中11試合)に減っている。つまり、勝利のためにより得点を目指す傾向にあるというわけだ。

少なくなったのはドローだけではない。ウノゼロ(1-0)の試合数も昨季の18.6%から14.7%と減少した。「2-1」に続いて全体で2番目に多い結果ではあるが、「1点を取って勝てばいい」という姿勢は変わりつつあるのかもしれない。4ゴール以上決まった試合が全体の28.2%あり、3ゴール以上なら57.6%という数字もそれを裏付けている。

◆エースに頼るか、“分担制”か

得点を挙げるには、まずはストライカーの決定力が必要となる。例えば、総得点25のインテルはマウロ・イカルディが、同35のトリノもアンドレア・ベロッティが、それぞれ12ゴールで得点ランク首位タイにつけている。

だが、インテルとトリノで得点を記録したのは、それぞれエースを含めて7選手ずつしかいない。これはリーグワースト3位タイの数字だ。一方、ラツィオはチーロ・インモービレが9ゴールと得点ランク6位だが、得点者数はリーグ最多の14名。総得点は32とリーグ5位につけている。

バランスに優れているのが、ユヴェントスやナポリだ。ゴンサロ・イグアインとドリース・メルテンスがそれぞれ10ゴールを記録しているが、得点者数はユーヴェがリーグ2位タイの12名。ナポリもリーグ4位タイの10名がネットを揺らしている。

◆目指すはイグアインの再現より…

昨季のセリエAではイグアインが驚異的なペースでゴールを積み重ね、66年ぶりに得点記録を更新するという偉業を成し遂げた。そのイグアインをはじめ、今季も得点ランク上位を占めるストライカーたちが好調なだけに、今後の活躍にも期待がかかる。

しかし、昨季の総得点数は、それまでの3シーズンを下回る979得点に終わっている。ひとりがゴールを量産し続けるのは難しいことでもあるだけに、今後もリーグ全体のゴール数を伸ばしていくには、各チームが得点源を増やせるかがカギなのかもしれない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事