ユウタである意味。玉森裕太3年目の『ドリームボーイズ』。
滝沢秀明主演による2004年の初演以来、帝劇ジャニーズ公演初となるW主演体制を敷く2015年の舞台『ドリームボーイズ』。3年連続主演を務める玉森裕太とともに、千賀健永と宮田俊哉の3人が共演する人気舞台が9月3日に開幕した。9月12日には『ドリームボーイズ』初出演の中山優馬、菊池風磨、マリウス葉によるバージョンも開幕。初日公演前には通し稽古と囲み取材が行われた。
帝劇ジャニーズ公演初のW主演体制
ボクシングを題材に夢を追う幼馴染み3人を描く『ドリームボーイズ』。玉森が帝劇舞台の額縁を無重力的に行き来する「フレームフライング」や摩天楼を駆け抜ける「壁フライング」、玉森、千賀、宮田の3人同時フライングなどダイナミックな名物シーンに加え、毎年新たに投入される技にも注目が集まるのがこのシリーズ。
昨年は直径3メートルのリングに挟まれながらフライングする回転技「玉フラ」がお披露目されたが、今年はさらに「玉フラ」に続けて新技「たまのぼり」をパフォーマンスする。繋がった3つの鉄のリングを使い、玉森が自身の筋力だけでフライングのさまざまなバリエーションを披露するのだが、天井に向けて昇りあがるような様や、全身ピンクであることから、稽古しながら「鯉のぼりみたいだな」と感じたことから、玉森が命名したものだ。
高度な技術を要求される技につける名前のほっこり加減にも玉森らしさがうかがえるが、その奥には強い思いが秘められているのはいうまでもない。前回以上の作品を作り上げるために新技に取り組むのはエンターテイナーとして当然のことだが、玉森・千賀・宮田の3人は今回はKis-My-Ft2のコンサートツアーが同時期に行われているなかで、『ドリームボーイズ』の舞台に立っているのだ。ツアーと舞台を並行して行うのには並々ならぬ体力と精神力が要求されるのは想像に難くない。
玉森がユウタにもたらすもの
だが、その高いハードルに立ち向かう闘志を表に出すのではなく、淡々と向き合いながら超えていく。そんな穏やかな強さを秘めた玉森裕太という個性が、彼の清々しい佇まいとあいまって、トラブルのすべてを一人で引き受けようとする主人公ユウタのせつない覚悟をより深いものとして観る者の胸に響かせる。それが玉森の『ドリームボーイズ』。演者の持ち味が観客の中でさらに増幅されるのも、役名が演者の名前のカナ表記である作品ならではの面白さだ。
ユウタのライバルであるチャンプを演じる千賀は、マイケル・ジャクソンの『スリラー』をアレンジし、得意のダンスで魅せれば、宮田はユウタの弟ユウキとの会話でものっけから見事なアドリブ(と思われる芝居)で笑いをとっていた。3人それぞれの持ち味もたっぷり楽しませるうえに、They武道(山本亮太、林翔太、江田剛)、安井謙太郎、真田佑馬、萩谷慧悟、森田美勇人、増田良、半澤暁と踊れるメンバー揃いのカンパニーが繰り広げるハイテンションのパフォーマンスの迫力がたまらない。
Wキャストの中山、菊池、マリウスの3人が客席で見学する姿もあった通し稽古。「ライバルというよりは同じものを同じタイミングでやるから、この『ドリームボーイズ』っていう作品がもっと盛り上がればいいのかな」という玉森のユウタが、どう深化していくかも注目だ。
『ドリームボーイズ』は9月3日〜9月30日まで東京・帝国劇場で。
中山・菊池・マリウスの公演は9月12日〜14日、18〜20日。