アトピー性皮膚炎の重症度判定に使えるADCTとは?皮膚科医が解説
【アトピー性皮膚炎の症状管理に役立つADCTとは?】
アトピー性皮膚炎は慢性的な炎症性皮膚疾患で、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。痒みや睡眠障害、精神的ストレスなど、皮膚症状だけでなく様々な問題を引き起こすのです。そんなアトピー性皮膚炎の症状管理に役立つのが、ADCT(Atopic Dermatitis Control Tool)と呼ばれる評価ツールです。
ADCTは、アトピー性皮膚炎の症状コントロールを患者さん自身の視点から評価するための質問票です。症状の重症度、激しい痒みの頻度、日常生活への支障、睡眠障害、精神的な影響など、直近1週間の症状を6項目で総合的に評価します。スコアが7点以上だと「コントロール不良」と判定されるのです。
今回、オランダの2つの大学病院皮膚科で通院中の成人アトピー性皮膚炎患者812名を対象に、ADCTを用いた症状コントロールの評価が行われました。その結果、59%の患者さんが「コントロール良好」と評価されたのです。一方、「コントロール不良」と評価された患者さんは、症状がより重症で、QOLの低下や激しい痒みを伴っていることがわかりました。また、「コントロール不良」の患者さんの多くが、外用剤のみでの治療を受けていました。ADCTは患者さんの症状コントロールをシンプルに評価でき、より積極的な治療への移行の判断にも役立つツールと言えるでしょう。
【ADCTを活用した皮膚科診療のメリット】
ADCTを皮膚科診療に取り入れることで、医療者と患者さんのコミュニケーションが改善し、より的確な治療方針の決定につながります。ADCTのスコアを通して、患者さん自身も自分の症状を客観的に理解できるようになるのです。
また、ADCTは症状の重症度だけでなく、QOLへの影響も評価できるのが特徴です。痒みの程度やQOLの低下具合は患者さんごとに異なるため、ADCTを用いることで一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療が可能になります。
海外ではADCTの有用性を示す研究報告が相次いでおり、日本でもADCTを用いた症例報告が出てきています。今後、日本の皮膚科診療でもADCTの活用が広がっていくことが期待されます。
【ADCTを生かすためのポイント】
ADCTを有効活用するためには、スコアの意味を正しく理解し、治療方針の決定に反映させることが大切です。「コントロール不良」と評価された場合は、外用剤から全身療法への変更を検討すべきでしょう。また、患者さんの性別や年齢、ライフスタイルなども考慮に入れ、オーダーメイドの治療を心がける必要があります。
もちろん、ADCTはあくまで補助的なツールであり、医師の診断を代替するものではありません。皮膚所見や検査データ、患者さんとの対話を重視しつつ、ADCTを上手に活用していくことが求められます。また、アトピー性皮膚炎は様々な合併症を伴うこともあるため、皮膚以外の症状にも目を配る必要があります。
参考文献:
Chen R, Loman L, van der Gang LF, Sloot MM, de Bruin-Weller MS, Schuttelaar MLA. Assessing Disease Control in Patients with Atopic Dermatitis by Using the Atopic Dermatitis Control Tool in Daily Practice. Dermatology. 2024 Oct 22. doi: 10.1159/000541466. Epub ahead of print. PMID: 36214569.