ソニーとMS 新型ゲーム機競争が静かに開幕 PS5が挑む“壁”
ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」が12日に発売され、マイクロソフト(MS)の新型ゲーム機「Xbox Series X」(10日発売)とのゲーム機競争が静かに開幕しました。過去の対決はいずれもソニーに軍配が挙がりましたが、今回はどうなるでしょうか。ポイントを整理しました。
◇需要と供給のバランス難しく
両ゲーム機とも7年ぶりの新型機で、画面の美しさはもちろん、読み込みのスピードの速さ、現行機(PS4とXbox ONE)の弱点だった機器の音も改善されました。両社とも2バージョンを用意し、上位モデルが499ドルという価格も共通しています。
新型コロナウイルスの「巣ごもり」効果により、ゲーム業界の業績は総じて好調でした。“追い風”は落ち着く兆しはあるものの依然としてプラスであることは変わらず、勢いに乗ってどこまで売れるかです。コロナ対策として、新型ゲーム機発売恒例の派手な販売イベントはなく静かですが、水面下ではし烈な戦いが展開されています。
ポイントは、ソニーがPS4の余勢をかって勝つか、MSがどこまで巻き返せるかです。カギは「Xbox Series X」の低価格版「Xbox Series S」(299ドル)の売れ行き状況でしょうか。ゲーム機の価格は、普及に直結する傾向にあるからです。一方で、自社から発売される専用ソフトの充実度、独占・先行販売される人気ソフトの展開も、ゲーム機の売れ行きに影響します。そしてゲーム機の普及はスタートダッシュが重要なため、初年度の動向も要注目となります。
現段階で見る限りでは、現行機の戦いで勝ち、ネットワークで約4500万人の会員を抱えるPS5が有利ですが、世界で同時期に発売する特性上、商品の需要と供給のバランスを取るのが極めて難しい状況です。品不足に加え、転売ビジネスの広がりによる機会ロスが恐ろしいところです。品不足が長期間続くと、しびれを切らしたユーザーが他のゲーム機に鞍替えしたり、熱が冷めてしまう可能性もあり得るからです。
◇「二世代連続のゲーム機出荷増」なるか
過去3度にわたり対決した両社ですが、今回は従来と違う面もあります。ソニーとMSは競争相手である一方で、クラウドサービスやAI分野で協力関係にあります。またグーグルやアップル、アマゾンが、ゲーム機不要のクラウドゲーム事業に参入しました。各サービスで“すみ分け”ができれば理想ですが、将来的には供給ソフトの奪い合い、顧客の囲い込み合戦になるのは確実です。特にソニーはゲーム事業の依存が高く、PS5のつまずきはグループの業績に直撃します。
新規参入組の動向に注意を払いながら、MSは少なくとも「PS3」に肉薄した「Xbox360」の再現を狙いたいところです。そしてソニーは、二世代続けての「成功」を目指します。ゲームビジネスは浮き沈みが激しく、ゲーム機を世界的に普及・成功させること自体が至難です。そして二世代続けて前世代機の出荷数を上回る「二世代連続のゲーム機出荷増」を達成し、かつ成功を収めたことはソニーもMSも、そして任天堂も実現できていません。PS5は未知の“壁”に挑むことになります。
成功すれば、他業種が嫉妬(しっと)するような莫大な黒字をたたき出すものの、一歩間違えるとビジネス的に一気に苦境になるのがゲームビジネスの恐ろしさです。今後5年以上のビジネスの勝敗を決定づけるかもしれない、今年の年末商戦の結果に注目が集まります。