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日米監督事情2020。日本プロ野球とメジャーリーグの違いは、選手としての実績とポジション、あとは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
トーリ・ルベロ監督(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Jul 6, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本プロ野球(NPB)とメジャーリーグ(MLB)の現役監督を比べると、その傾向には顕著な違いがいくつもある。

 まず、目につくのは、選手時代の実績だ。NPBの12監督に一軍の試合出場なしは皆無。栗山英樹(北海道日本ハムファイターズ)と三木肇(東北楽天ゴールデンイーグルス)を除く10人(83.3%)は、オールスター・ゲームに選ばれている。それに対し、MLBの30監督中7人(23.3%)はメジャーリーグでプレーしたことがなく、オールスター・ゲーム選出は――NPBより狭き門とはいえ――4人(13.3%)にとどまる。元メジャーリーガーの23人に限っても、オールスター・ゲームに選ばれたことがあるのは17.4%だ。

 ポジションにも偏りがあり、NPBは元投手、MLBは元捕手が、それぞれ全体の3分の1(12監督中4人と30監督中10人)を占める。それとは対照的に、NPBの元捕手は矢野燿大(阪神タイガース)、MLBの元投手はバド・ブラック(コロラド・ロッキーズ)しかいない。セ・リーグの監督は、半数の3球団が元投手だ。ア・リーグ西地区は、「サイン盗みスキャンダル」によってヒューストン・アストロズの監督がA.J.ヒンチからダスティ・ベイカーに代わるまで、5監督中4人が元捕手だった。

 また、NPBの監督のうち、現職につくまで、その球団に在籍したことがなかったのは、栗山だけだ。西村徳文(オリックス・バファローズ)は2016~18年にヘッド・コーチ、三木は2019年に二軍監督を務め、そこから監督に就任した。MLBの監督は、在籍経験ありとなしが15人ずつ。半々に分かれている。

 NPBで他球団の監督を経験しているのは、2010~12年に千葉ロッテマリーンズを指揮した西村のみ。MLBは、他球団で采配を振ったことのある監督が12人(40.0%)を数える。ボブ・メルビン(オークランド・アスレティックス)、テリー・フランコーナ(クリーブランド・インディアンズ)、ジョー・マッドン(ロサンゼルス・エンジェルス)、ジョー・ジラルディ(フィラデルフィア・フィリーズ)の4人は、現在の球団の前に2球団。ベイカーは、開幕とともに5球団となる。

 なお、NPBとMLBのどちらでもプレーした監督は、日米で計5人。アレックス・ラミレス(横浜DeNAベイスターズ)、井口資仁(千葉ロッテ)、高津臣吾(東京ヤクルトスワローズ)、トーリ・ルベロ(アリゾナ・ダイヤモンドバックス/NPB時代の登録名はトレイ・ロブロ)、ゲーブ・キャプラー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)がそうだ。

 彼らのうち、高津は選手時代に、キャプラー以外の3人とチームメイトだった。ヤクルト/東京ヤクルトでは、2000年にルベロ、2001~03年と2006~07年にラミレスとプレー。2005年にシカゴ・ホワイトソックスで投げた時は、井口もチームにいた。ラミレスとルベロは、2人とも1998年にインディアンズでプレーしたが、メジャーリーグでの出場は、8月にルベロが6試合、9月にラミレスが3試合。彼らは、AAAのバッファロー・バイソンズでチームメイトとして過ごした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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