アマゾン、今度の配達先はあなたの車
米アマゾン・ドットコムは先ごろ、購入商品の受け取り場所に自家用車を指定できるサービスを始めると発表した。
車のトランクに配達する「Amazon Key In-Car」
サービスは「Amazon Key In-Car」といい、同社の有料プログラム「Prime」の会員に追加料金なしで提供する。
当初は、全米37都市とその近郊で始めるが、順次規模を拡大し、利用可能な都市を増やしていくとしている。
サービスの仕組みは次の通りだ。
まず、顧客はサービス専用のスマートフォン用アプリをダウンロードし、アマゾンのアカウントと、車載情報サービスのアカウントをリンクさせておく。
次に、アマゾンのウェブサイトやアプリで買い物をする。その際、駐車場所を入力し、配達先に「In-Car Delivery(車に配達)」を選び、注文確定ボタンを押す。
配達当日は、4時間枠の配達予定時間が通知される。そして、配達時は、アマゾンのドライバーが正しい注文商品を持ち、入力した駐車場所にいるかをシステムが確認し、認証。
これにより、ドライバーは車のトランク、あるいはドアを解錠できるようになる。
商品を車内に入れた後、ドライバーは車を施錠し、配達を完了。顧客には、その旨を通知する。
このとき鍵の閉め忘れ対策として、一定の時間がたつと、自動施錠する仕組みも用意している。また、顧客はアプリで、いつ、解・施錠されたかを確認できる。
駐車場所は、自宅のガレージ前や、道路、職場の駐車場など、どこでもかまわない。ただし、一般に開放されている場所で、入力した駐車地点から2ブロック以内である必要があると、アマゾンは説明している。
まずはGMとボルボの車で
現在のところ、このサービスを利用できる車は、「シボレー」「ビュイック」「キャデラック」などのゼネラル・モーターズ(GM)車と、スウェーデンのボルボ・カーの一部の車種。
GMには「OnStar」という車載情報サービスがある。ボルボにも「Volvo On Call」という同様のサービスがあり、今回、これらのサービスが、アマゾンのシステムと連携した。
アマゾンによると、現時点で、Amazon Key In-Carを利用することが可能な自動車オーナーは、GM車だけでも、700万人以上いるという。
不在時宅内配達の「Amazon Key」を拡大
このAmazon Key In-Carは、同社が昨年10月に米国で始めた、不在時宅内配達サービス「Amazon Key」を拡大したものだ。
こちらは、顧客自宅の玄関ドアに専用の電子錠を取り付け、「Amazon Cloud Cam」と呼ぶセキュリティーカメラを、屋内に設置して、利用する。
今回のKey In-Carのように、配達ドライバーは、玄関ドアを解錠し、商品を宅内に置き、施錠して帰っていく。
配達の様子は、カメラで捉えており、顧客はその映像を、職場などの離れた場所からスマートフォンで見ることができる。この点が、Key In-Carとは異なる。
アマゾンによると、いずれのサービスも、解錠の際の認証通信は暗号化される。また、配達ドライバーには特別なコードやキーなど、一切渡さないとしている。
これらアマゾンのサービスは、物流事業の拡大を狙った施策と言えるのかも知れない。
この話題について報じている、米ウォールストリート・ジャーナルの記事は、「アマゾンは小売事業の全工程を自社で管理しようとしている」とも伝えている。
小売事業の全プロセスにおいて、最終段階に当たるのが、顧客の手元に商品を届ける作業。同社はこれを自社でコントロールすることで、eコマース事業の効率化、そして顧客利便性の向上を図ろうとしているようだ。
(このコラムは「JBpress」2018年4月26日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)