障害のある人の“新たなしごと・はたらき方”を発見する「Good Job!展」
「福祉」と「仕事」の新しい関係づくり
社会の変化や価値観の多様化により、私たちのライフスタイルは大きく変わりつつあります。誰もが誇りを持ってはたらき、豊かになれる社会のあり方を模索する試みが、全国各地で起きています。
今回で4回目を迎える「Good Job!展」では、障害のある人やその周辺でうまれつつある魅力的なプロダクトや、ユニークな取り組みに、今後のライフスタイルを考えるヒントがあるのではないかと考え、さまざまな事例を紹介してきました。
今年は、宮城・東京・大阪・大分を舞台に展覧会・セミナーを開催し、出会いと仕事がうまれる場づくりを展開中です。そこで、東京の渋谷ヒカリエで開催された「Good Job!展 東京」と、「Good Job!Award」を取材してきました。
企画展「未来をつくる挑戦」
企画展「未来をつくる挑戦」では、デザイナーや伝統工芸、地域コミュニティとの協働から生まれた5つの事例を紹介していました。同時に今年度から公募プログラム「Good Job!Award」を実施し、各地から魅力的な取り組みが集結しました。
ユニークな視点、発想、姿勢、試行錯誤から生まれた、これからの社会をつくる取り組みをご紹介します。
◎「TOMORROW IS TODAY」Good Job!プロジェクト×原田祐馬×吉行良平
デザイナーと障害のある人がともに手を動かし、生活に根ざしたプロダクトを開発する取り組みです。奈良県産の素材=和紙、木材や金属、革紐を用いてワークショップを実施。ゆるやかなルールのもと、その場にいる人たちの関わりを設計し、生まれ出る表現からつくり方・はたらき方を探っています。
◎「ありがとうファーム 」株式会社ありがとうファーム
岡山県岡山市の商店街のなかにある、株式会社ありがとうファームが運営しています。障害のある人が楽しく暮らし、一般就労に結びつく環境を目指しています。就労継続支援A型事業により、地域に根付いた囲碁・将棋クラブや、カフェ、食堂、テレワーク、ゴスペルなど、多様な仕事づくりを行っています。
“美しい京都をより美しく”を合言葉に、ゴミコロレンジャーに扮し清掃活動を行う「ゴミコロリ」。ワークショップ、スポーツ、寸劇上演などを通じてさまざまな子どもたちと交流する「コドモとアソブ」、「京都人力交通案内『アナタの行き先、教えます。』」など、遊ぶことと働くことを両立させる新しい仕事観を提案しています。
◎「RAKUZEN」合同会社楽膳
福島県の会津塗りの伝統工芸士、障害者支援NPO、デザイナーの協働により実現した漆器などの工芸食器です。障害のある人が開発のプロセスに関わり、底部の加工を工夫し握力の弱い人でも自然な仕草で持つことができる「楽膳椀」などがあります。
◎「日本漆総合研究所」一般社団法人日本漆総合研究所
御神輿の修復を通して、障害のある人を対象に技能伝承を行うほか、障害のある人の仕事として宮城県石巻市の硯や建材に使用される雄勝石を使った窯神様(東北地方の一部の地域に古くから伝わる怒り顔の面)や、地元の木材を使った積み木づくりなどに取り組んでいます。
社会の中で新しい価値観をつくる象徴「Good Job!Award」
今年度よりスタートした公募プログラム「Good Job!Award」では、既存の労働観にとらわれない発想で、障害のある人の可能性をいかした新しいしごと、アートやデザインの力をいかした創造的なしごと、先駆的・革新的・実験的な取り組みなどを募集しました。国内外から障害のある人との協働で生まれた魅力的なしごと・はたらき方を募集し、118件の応募の中から12件が一次審査を通過しました。
そして、12/20(日)には一次審査を通過した12件の最終プレゼンテーションが行われ、大賞と準大賞が選ばれました。
◎大賞「ドニさんの家」ドニさんの家×社会福祉法人オリーブの会
精神に障害を持つ人が作業する農園の一角に、福祉という枠組みの中にいない「ドニさん」が空き家を借りて暮らすという試みです。「ドニさんの家」では、フリースペースとして、食やカラダを見つめ直すようなワークショップが開催されており、多様な生き方やはたらき方を模索する場をつくっています。
◎準大賞「つばめキャンドル」
社会福祉法人燕市社会福祉協議会就労支援センター×企画製作室Bridge
結婚式場で使用されたキャンドルを再成形しています。キャンドルチップを積み重ねてつくる製法は障害のある人が楽しく、バリエーションも広がる工夫があり、ワークショップにも活用されています。「おにキャン」「つのキャン」などの商品ラインナップがあります。
「障害をもつ人はイノベーダー」大賞と準大賞の受賞理由
――審査員のコメントより
これからの「Good Job!展」の方向性を決める中で、大賞をどちらにするのか迷いました。
今回、一次審査を通過した12件の中には東京からの入選が1件もありませんでした。しかし沖縄からは3件、京都からも2件が入選していますが、これは今の社会の価値観がよくあらわれていると思います。このことを社会に問いていくことこそが、これからの「Good Job!展」の役割だと考えています。
障害をもつ人はイノベーダーだと思います。そして、これからの社会の中でオルタナティブとして、新しい価値観をつくる象徴として「ドニさんの家」が相応しいという結論に至りました。
さいごに
いかがでしたでしょうか?「Good Job!展」に展示してある様々な取り組みの中に、何か良いアイデアはありましたか?今、ここで新たな活動の萌芽が育まれようとしています。この記事をご覧になっているみなさんにも新しいしごと、はたらき方を探していただければと思います。
「Good Job!展」の今後のスケジュールをせひご確認ください!