無敗の3階級王者 田中恒成がもっとも意識している選手とは
無敗で3階級を制覇したWBO世界フライ級チャンピオン田中恒成(24=畑中)。
昨年末に行われた試合では、日本人キラーのウラン・トロハツ(中国)を豪快なKOで沈め、3度目の王座防衛を果たした。
快勝であったにもかかわらず、田中は試合後のインタビューで「もうそろそろ一皮むけたい」と話していた。
若くして3階級を制覇したが、自分の結果に決して満足していない。
試合を終えた田中と名古屋市内の飲食店で待ち合わせし、インタビューを試みた。
試合を終えて
ーーー年末のウラン・トロハツ戦を終えて今の心境はどうですか。
田中:試合は満足しています。
ーーー自分の中で何か手応えはありましたか。
田中:ありました。これまでは、過程が良くて試合が悪かった。過程は悪くて試合は良かったということはありました。
ですが、過程も良くて試合も良かったということはありませんでした。
今回はきちんと過程をつくった上で試合も良かったから、結果に結び付くということが分かって良かったです。
ーーー私も現地で観戦しました。力強さも増していましたね。
田中:減量がうまくいって調子が良かったおかげで、いつもより身体に力がありました。それをそのまま試合に出せました。
ーーースピードもかなり増していましたね。
田中:実はライトフライ級に上げたあたりからスピードが落ちている感覚がありました。それを大晦日の試合で取り戻すことができました。
ーーースピードについてこだわりはありますか。
田中:あります。スピードは一番の武器でこれで負けたくないと思っています。
意識を変えた
ーーー試合後の会見で「調整がうまくいったことが一番の勝因」と語っていましたが、減量方法を変えたのですか。
田中:一番変えたのは「意識」ですね。
ーーー意識ですか。減量に関してはどうですか。
田中:減量も自分の気持ち一つですよね。今回は本当に失敗できないという危機感がありました。
今までの試合は勝っていても、レベルの低いパフォーマンスをしているのは分かっていたのです。
このままでは本当に普通のボクサーになってしまう、それがとても嫌でした。
なので、減量でどうにかなるものならと意欲的に取り組みました。
意識している選手
ーーー今の階級に限らず、他の階級で意識する選手はいますか。
田中:いっぱいいます。
ーーー井上尚弥選手(26=大橋)とか。
田中:もちろん。
ーーー今はいい選手がたくさんいますよね。
田中:拳四朗選手(28=BMB)は安定感があるし、京口紘人選手(26=ワタナベ)も強いですよね。
ーーーやはり同じ日本人の世界チャンピオン、特に軽量級の選手を意識しますか。
田中:はい。特に尚弥さんは刺激を一番受けます。
ーーーどういったところに受けますか。
田中:強さです。
ーーー超えたいですか。
田中:1番ですから、超えたいという想いしかありません。
ーーーモチベーションになりますね。
田中:そういう人がいるからもっと頑張ろうと思います。海外の選手ではなく日本人選手だからこそ、なおさら意識しますよね。
しかも、世界のトップになろうとしている人ですから刺激を受けます。
ーーーー学生の時から井上選手の存在は意識していましたか。
田中:学生のときは僕の兄(田中亮明)が井上選手と試合をしていました。
当時僕は兄にかなわなくてボコボコにされていました。
ーーー恒成君がですか。
田中:はい。兄とは同じ階級だったのにスパーリングもやらないぐらいでした。
井上選手は、その兄に勝っていたので強いなと思っていました。
ーーーでは、井上選手のことは高校生の時から意識していたのですね。
田中:そうですね。
今後の田中
ーーー今後の目標やゴールについてどう考えていますか。もっと強くなるということでしょうか。
田田中:そうですね。抽象的なことしか言えないのですが、まだ全然満足できていません。
ーーー足りない、満たされない感じですか。
田中:そうですね。試合で勝ってうれし涙を流してみたいです。そういう勝利を、そういう戦いを望んでいます。
絶対勝てないと思ってしまうような試合にチャレンジして、真剣に取り組んで、それで勝てたら絶対うれしいと思います。
ーーーそういうヒリヒリする試合をしたいということですか。自分が勝てないような強い選手と戦いたいということですか。
田中:そうですね。
ーーートップになりたいという想いはどこからきていますか。
田中:ボクシングを始めたときから、それしかありません。
ーーーなるほど。では、世界チャンピオンになるより、自分の強さを証明したいということですね。
田中:そうです。評価よりも、一番強くなりたいということです。色々な思いを抱えてここまで来て、今はそれしかありません。
この取材後、2月4日名古屋市内で行われた会見で、田中が階級をスーパーフライ級に上げ4階級制覇に挑戦すると発表した。
強豪がひしめくスーパーフライ級であれば田中の求める試合が実現するだろう。
今後さらなる田中の活躍に期待したい。