クレカの二段階認証は利用者にどのような影響を与えるのだろうか
クレジットカードの安全性をより確かなものとするため、最近では二段階認証を用いるところもある。その安全対策は利用者にどのような判断の変化、影響を及ぼすのだろうか。内閣府が2016年9月に発表した、クレジットカード取引の安心・安全に関する世論調査(※)の結果を元に確認していく。
今調査の結果によると、クレジットカードの利用に際して行われる安全対策の一つ、いわゆる「二段階認証」の仕組み(クレジットカード番号などの入力に加えて、事前にクレジットカード会社のホームページ上で登録したID・パスワードを入力することにより本人認証などを行い、「なりすまし」などの不正取引を防ぐ方法)に関して、知っている人は6割近く。
では実際に、インターネットで買い物をする際にこの「二段階認証」が求められた場合、人はどのような対応を示すだろうか。回答者の心境、実情に関して選択肢から一つ選んでもらった結果が次のグラフ。心境はともあれ利用するとした人は4割強。面倒だから他の購入方法の選択をするなり、別の店を選ぶ人は合わせて1割強。そもそもインターネットで買い物をしない人は1/3強となった。
「インターネットで買い物をしない」人を除き、ネットで買い物をする人限定で試算すると、3/4強は「二段階認証」を許容し利用する、1/4足らずは「避ける」との思惑を有していることになる。
男女別ではそもそも論として女性の方がインターネットで買い物をしない人は多いが、している人の間でも「避ける」派の割合が多い。ネット通販利用者に限定すると、男性は避ける派は22%だが女性は26%となっている。全体でもネット通販利用者限定でも、男性の方が「(面倒だけど仕方ないので)利用する人」は多い。
これを男女別に仕切り分けした上で年齢階層別に見たのが次のグラフ。
クレジットカードの利用そのものや安全対策に関する認識同様、現役世代では男女の差はあまりなく、やや女性が肯定利用派が低い程度。しかし定年退職を迎える年齢となると、女性の方が避ける割合、そしてそもそもインターネットで買い物をしない人の割合が増えてくる。「二段階認証」も結局のところ、「なんだか難しくて手間がかかるもの」的な雰囲気でとらえられているのかもしれない(実際に面倒なのは否定できない)。
またどの年齢層でも一定の割合で「(二段階認証が面倒なので)クレジットカードによる支払い方法以外を用いて買う」人がいることにも注目したい。見方を変えると二段階認証がクレジットカードの利用を避けさせているとも見て取れる。使わなければその購入に関するリスクは生じないのだから、ある意味究極の安全対策には違いないのだが。他方「面倒なので入力不要なお店で買う」、つまり二段階認証の導入でお客を他に奪われることを意味する回答が、どの属性でも少数なのは幸いではある。
ちなみに上記で試算したようにインターネット通販を利用しない人や「分からない」などの回答を除き、「(面倒だが)入力して利用」を肯定派、「他の方法を使って購入」「入力の必要が無い」を忌避派として再計算した結果が次のグラフ。忌避派は色を同系統として、まだ該当店にとっては売り上げとなりうるケース「別選択肢」と、お客を逃してしまう結果「他の店で」を別途計算している。
インターネット通販を利用する人に限定しても、男女を問わず高齢層、大よそ50代以降は二段階認証を嫌い、別の店で買う選択をしてしまう人の割合が増加する状況が確認できる。この年齢階層では男性では2割から3割、女性では3割から4割が、「二段階認証が求められるのなら、別の店で買う」と答えている。
無論「二段階認証をしているからこの店で購入する」との選択をする人も少なくないだろうが、元々は顧客へのサービス向上、より確かな安全性の提供のための仕組みが、思惑とは裏腹にお客を避ける一因となってしまっているのは、皮肉ではある。
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※クレジットカード取引の安心・安全に関する世論調査
2016年7月21日から31日にかけて日本全国の18歳以上の日本国籍を有する者の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた3000人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1815人。男女比は841対974、年齢階層比は18-19歳32、20代142、30代219、40代289、50代283、60代398、70歳以上452。