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G20で日韓首脳会談を見送る日本の手法はかつての中国と韓国のそれと全く同じ!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
G20サミットでの文在寅大統領との首脳会談を見送る予定の安倍首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 「会うべきか、会わざるべきか」―どうやら安倍首相はハムレットのように悩むこともなく、大阪でのG20首脳会議(28-29日)での韓国大統領との会談を見送ることにしたようだ。すでにその決定を韓国側に伝えているようでもある。

(参考資料:文大統領と「会う?」「会わない?」 安倍総理の意中は?)

 首脳会談を断った表向き理由は「日程上」の理由、即ち「多忙」が理由だ。G20サミットには日韓を除く加盟国18カ国の首脳を含め国連(UN)、国際通貨基金(IMF)など国際機関のリーダーらがこぞって参加するため通常ならば「時間が取れないから」との「理由」で十分説明がつくかもしれない。

 しかし、多忙の中、安倍総理は米中ロの3か国首脳を含め少なくとも十数カ国のリーダーとは単独会談を行うようだ。結局、その中に韓国が含まれないということは日本外交の「優先順位」から外れたということだ。最も近い隣国であるにもかかわらず外された理由は、安倍首相が文在寅大統領を嫌っていることに尽きる。嫌う理由は、一言で言えば、元徴用工問題への文大統領の対応に不満を持っていることの証でもある。

 再三にわたってG20サミットの前までに徴用工問題の解決策を示して欲しいと要求してきたにもかかわらず、返事を引き延ばした挙句の果てに直前になって受け入れ難い内容の提案をしてきたことに怒り心頭したのだろう。日本の拒否反応に「過去と未来は切り離して話をしたい」と安倍首相との首脳会談に意欲を示していた文大統領は内心落胆しているであろう。

 国民の70%以上が安倍政権の韓国への対応を支持し、またメディアも同調し、政権与党でも「文大統領との首脳会談を見送るべき」との声が上がっていただけに、加えて7月に参議院選挙が控えていることもあって安倍首相にとってリスクを冒す必要はないのかもしれない。

 日本の「決定」に韓国は表面的には冷静に対応しているようだ。韓国大統領府は「我々は(会談する)準備ができているが、日本はその準備ができていないようだ。その気になったらいつでも安倍首相に会うつもりだ」と、首脳会談ができないのは「日本の準備不足」にあると国民には説明している。

 韓国のこうした対応は、ハノイ会談後に膠着状態に陥った非核化交渉を巡る米国の北朝鮮への対応を彷彿させる。トランプ政権は金正恩政権に対して「北朝鮮は交渉の準備ができてないようだ。対話の扉は常に開いている。準備ができれば、直ぐにでも応じる用意がある」と、3回目の米朝首脳会談を開きたければ米国の要求を受け入れるよう決断を迫っている。

 日韓間では、本来、決断を求めているのは日本で、韓国ではないはずだ。文政権が元徴用工の問題で決断すれば、首脳会談は直ぐにでも開催できる。しかし、日本がG20での日韓会談を拒否したことで逆に韓国はそれを口実に何事も対話で紛争の解決を求める国際社会に「対話に前向きな韓国、後ろ向きの日本」のイメージを作り出すかもしれない。

 かつて慰安婦問題で日本政府が善処しないことに態度を硬化させた朴槿恵前大統領は安倍首相との首脳会談の受け入れに「従軍慰安婦の問題で日本が誠意を示し、環境を整えることが重要」との前提条件を付けていたが、これに対して安倍首相が「前提条件を付けるべきではない」と反論し、「課題があれば、まず会って話をすべき」と首脳会談の必要性を訴えていたのは周知の事実である。

 結局、「元慰安婦などの問題が解決しない状態では、首脳会談はしない方がましだ。首脳会談をしても得るものがない」と執拗に言い続け、2015年11月まで2年9か月も安倍首相との首脳会談を朴前大統領が拒み続けたこともまだ記憶に新しい。

 安倍首相はかつて中国との間でも「日中首脳会談開催には領土(尖閣)問題の存在を認めることを条件とした中国に対して「条件は呑めない」として「無条件の対話」を呼び掛けたことがある。

 また、日本では元徴用工問題で韓国が態度を改めなければ、「経済報復も止むなし」との勇ましい声も聞かれるが、日中関係が悪化し、中国で日本製品ボイコット運動が起きた時、確か「政治と経済は切り離すべきだ」と言い続けていたのも他ならぬ日本である。

 日本が今、行おうとしていることは「大人げない」とか「子供じみている」とか「エキセントリック」とか散々揶揄してきた韓国や中国がかつて日本に対して取ってきた手法の再現でもある。

 文句があれば、言いたいことがあれば、直接会って、面と向かって言えば済むことである。G20サミットはそれができる絶好のチャンスだ。せっかくの機会を自ら棒に振ることはない。文大統領を相手にしないからといって、日本以外に中国やロシアなど多くの首脳らと会談を予定している文大統領がG20サミットで蚊帳の外に置かれることもなければ、何よりも元徴用工の問題が解決するわけでもない。日本の「韓国無視」は良く言って、抗議の意思表示ではあるが、別な見方をすれば、単なる鬱憤晴らし以外の何物でもない。

 安倍首相は現在、北朝鮮には金正恩委員長との首脳会談実現に向け無条件対話を呼び掛けている。「条件をつけずに率直に、虚心坦懐に話し合ってみたい」と口癖のように言っている。

(参考資料:拉致問題で譲歩、後退する安倍政権 過去の発言から180度転換)

 独裁国家の指導者とは胸襟を開いて話はできるが、民主主義国家の指導者とは話ができないというのも実に困った話だ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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