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韓国発の日本代表、具智元。第二の故郷でスクラムをどう押すか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2016年、韓国人初のスーパーラグビープレーヤーに。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 強い男は優しい顔をしている。

 ラグビー日本代表でスクラム最前列の右プロップに入る具智元は、184センチ、122キロの巨躯である。

 元韓国代表左プロップの東春氏を父に持ち、小学生時代は英才教育の一環でニュージーランドのウェリントンでプレー。中学2年で父のプレーしていたホンダの本拠地、三重県鈴鹿市に滞在し、韓国を経て中学3年から4年間、大分県で暮らした。

大分ラグビースクール、日本文理大学付属高校、さらには東京の拓殖大学を経て現在は国内のホンダとスーパーラグビー参戦のサンウルブズをかけもちする。現在23歳。2019年のワールドカップ日本大会での活躍が期待されている。

 日本代表は6月9日、大分銀行ドームでイタリア代表と激突する。スクラムを得意とする欧州の強豪を前に、大分を第二の故郷だとする具がどう挑むか。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――大分でテストマッチへ。

「両親も、高校の監督さんも、いままで教えてもらった人たちも観に来る。たくさん応援メッセージももらっているので、故郷で試合ができる感じがします」

 今季のサンウルブズが2連勝した5月中旬ごろ、具はけがの治療をしていた。前年はけがからの復活と再発を繰り返していただけに「去年みたいに、焦ってもう1回怪我をするのは怖い」としながら、「治ったら、復帰したい」。6月のツアーに間に合わせられるよう、静かに心を磨いていた。

「ヨーロッパはスクラムにこだわっていると思うのですが、もう1回、自分のスクラムをテストしたい」

 当時の希望が、叶いそうだ。

――イタリア代表は6月3日、長野でヤマハと非テストマッチをおこなっています。特にスクラムではどんな印象がありますか。

「ヤマハもいいスクラムを組んでいた。慎さん(長谷川慎スクラムコーチ。以前はヤマハを指導)から、ヤマハの人たちの言うキーポイントも伝えてもらいました。きょうも午前練習で多めにスクラムを組んだんですが、いいイメージがあります。イタリアには落ちる(崩れる)癖はありますが、パワーはある。こっちは8人で低く、組む。いつもと、やることは変わらないです」

――当日、いつもと同じスクラムを組み続けるために注意したいことは。

「向こうは、崩されそうなところから、生き返ってくるようなスクラムを組んできます。それに対しても、僕らは8人で固まる(イタリア代表が崩れそうだからといってまとまりを解かない意味か)」

――イタリア代表は、タックルされながら球を繋ぐオフロードパスを多用しますが。

「ディフェンスではしっかり1人目が下に入って、2人目が上に入って、倒す。それでもしオフロードされても、周りの選手がオンの状態で反応する」

 管理栄養士の助言を素直に聞き入れ、常時および試合直前のエネルギー源補給に注力してきた。4月初旬の段階では、「意外と、炭水化物が足りていないと言われ、最近ではご飯を食べるようにしました」とのことだ。

 サンウルブズの宿舎には食事のバリエーションに課題があるためか、一部主力格も外食に頼りがち。そんななか具は、「僕は毎食、同じものを食べても飽きないので、きつくはないです」。誠実さで磨き上げた強靭な足腰で、イタリア代表のスクラムを押し返したい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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