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『THE SECOND 2024』東野幸治と有田哲平の共演が大成功、番組に勢いをつけた両者のやりとり

田辺ユウキ芸能ライター
2年連続で『THE SECOND』の司会を担当した東野幸治(写真:つのだよしお/アフロ)

結成16年以上の漫才師を対象としたお笑い賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』(フジテレビ系)が5月18日に開催され、結成19年目のガクテンソクが優勝を飾った。

同コンビは、1回戦でラフ次元、準決勝で金属バット、決勝でザ・パンチ戦に勝利し、頂点へとのぼりつめた。ツッコミの奥田修二は第1試合開始前の煽りのVTRで「何者かになってから(漫才を)辞めたい」と語っていたが、優勝後は「何者かになれたんですけど、漫才辞めません」と漫才師として生きていくことを宣言。感動的なエンディングとなった。

これまであまり絡みがなかった東野幸治と有田哲平のマッチアップ

ベテランらしい充実したネタが続いた『THE SECOND 2024』。しかも、全国ネットのお笑い賞レースのなかで最長級の「4時間」という放送時間にもかかわらず、賞レースとしても、バラエティ番組としても尻上がりにおもしろくなっていった。

その「勝因」に挙げられるのが、前回大会に引き続き東野幸治が司会をつとめたことと、その相手役的なポジションであり、ハイパーゼネラルマネージャーという見届け人の役割に、これまでテレビ番組などで東野幸治と絡みがそれほど多くなかった有田哲平(くりぃむしちゅー)を抜てきしたことではないだろうか。

「乗っからせ上手」な有田哲平、「乗っかり上手」な東野幸治

2023年大会は松本人志(ダウンタウン)がアンバサダーを担当し、さまざまなコメントを発信。東野幸治と松本人志は若手時代からの長い付き合いで、勝手知ったる仲。そういうこともあって東野幸治もどちらかというと進行役に徹し、トークの部分は松本人志に一任していた感じがあった。それが東野幸治と松本人志の関係性でもあったのだろう。

しかし今回は、松本人志の芸能活動休止を受けて有田哲平が「代表的なコメントを発する立場」として席に座った。東野幸治、有田哲平は誰もが認めるお笑い芸人ではあるが、過去にそれほど絡みがない二人を大事な賞レースの場でマッチアップさせるのは、たとえ実力者であっても未知数の要素があまりに強い。果たしてうまく噛み合うのか、それとも噛み合わないのかーー。

ただ、そんな東野幸治と有田哲平が、大会が始まってすぐに絶妙な掛け合いをみせた。有田哲平が、これまで断ってきた賞レース出演を決めた経緯を明かした上で「前任者がいらっしゃらないんで」と松本人志の名前を口ごもると、すぐに東野幸治は「松本さんって名前、出しても大丈夫ですから!」と切り返した。お笑いの賞レースという緊張感が漂うなかで、バラエティ慣れした二人によるこのやりとりは、番組の雰囲気を作ってくれるものだった。同時に、独特の気持ちの高ぶりも良い具合にやわらげてくれた。

また有田哲平は、たとえば1回戦第2試合のラフ次元対ガクテンソクの後「二組とも漫才のネタを何回も練習してるだろうし、ステージで何回もかけているのに(ネタの内容を)知らないフリしてやっていく技術があるじゃないですか。一回聞いて、下がって、思ってたのと違ったとか」と漫才のシステム自体をイジるなど、「それを言ったら元も子もないですよ」というような発言などで笑わせた。その後も攻め過ぎず、引き過ぎず、的確な批評と出場者へのリスペクトに適度な笑いをからめてコメントしていった。もちろん東野幸治は、そういった有田哲平のコメントの一つひとつにちゃんと乗っかっていく。スルーすることはない。あらためて、有田哲平は「乗っからせ上手」であり、東野幸治は「乗っかり上手」であることを確認できた。

東野幸治のデリカシーゼロ発言「有田さん、1点が多いってことは決勝に向けての不安材料ってことですよね」

ちなみに二人に共通するのは、「おもしろい」という意味での毒っけやイジワルさを持っている点だ。

有田哲平はコンビ名が海砂利水魚だった時代、出演番組『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)でつけられていたキャッチコピーが「邪悪なお兄さん」だった。書籍『黄金ボキャブラ天国』(1998年/フジテレビ出版)のコンビ紹介欄で「有田の人相の悪さと上田のガラの悪いツッコミで、ボキャブラでは殺しネタなどブラックな笑いを得意とし」と記されているように、根底にあるのは“黒さ”である。その本質は、MC役をつとめ、ゲスト出演のお笑い芸人らを次々と落とし穴へと突き落としていく『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)でもはっきり伝わってくる。

一方、東野幸治も「白い悪魔」と称される芸風の持ち主である。タモンズとザ・パンチが準決勝第2試合に進出することが決定したときも、東野幸治は、全国ネットでこの2組の対戦が放送されるのはありえないとし、日本テレビの名前を出して“挑発”。両コンビの対戦ではザ・パンチが勝って決勝進出を決めたものの、採点で3点満点中1点をつける一般審査員が多かったことから「有田さん、1点が多いってことは決勝に向けての不安材料ってことですよね」と、デリカシーゼロなことを笑みを浮かべながら言っていた。このように第1回大会ではやや薄味だった“東野幸治らしさ”が、今回は濃厚に堪能できた。今回の司会としての回し方は、関西ローカル番組『マルコポロリ!』(フジテレビ系)での進行ぶりを彷彿とさせるもの。人があまり触れられたくないところを見逃さず、いやらしくすくい上げていくのだ。

ただそういう彼らのスタイルが、緊張感みなぎるこの大会において、バラエティ的なスパイスとなった。さらにそのスパイスは、後半に進むにつれてどんどん効き目が増していった。つまり、前述したように尻上がりに番組がおもしろくなっていったのだ。

4時間番組は当然、視聴者的にも中だるみしたり、疲れが出てきたり、なんなら眠気に襲われるものである。しかし、東野幸治、有田哲平の刺激的なやりとりは、いつ何時でも確実に笑わせてくれるものでもあり、それはバラエティ番組として良質さを感じるものでもあった。

有田哲平の「トイレ待ち」からバラエティ的な勢いが出てきた

今大会である意味、ハイライトとなったのが、有田哲平がトイレへ行くために一旦退席したタイミングではないだろうか。

もちろん東野幸治は、有田哲平の「トイレ待ち」を嬉しそうにイジる。生放送だが焦る気配がなく、むしろその思わぬ事態を楽しんでいるようでもある。このあたりでフッと番組全体もリラックスできたのか、『THE SECOND 2024』にバラエティ的な勢いが出てきた。東野幸治も気持ちが軽くなったのか、そのあとのタモンズとザ・パンチの準決勝第2試合の感想を突然、前回王者のギャロップの毛利大亮に無茶振りして困惑を誘った。なんとかコメントを絞り出した毛利大亮に対して、次は有田哲平が「CM中に毛利さんがコメントを振られてて、(コメントを)また振られたら(内容を)変えてきたのがすごい」と意地悪に突っつく。この時間帯はかなりドライブ感のあるやり取りが続いた。

さらに、東野幸治、有田哲平だけではなく、スペシャルサポーターの博多華丸・大吉も、ネタ評と笑いのバランスをうまく保たせながらコメントしていく。それでいて東野幸治も、有田哲平も、博多華丸・大吉も、ファイナリストの邪魔には一切なっていなかった。ちゃんと出場者が主役になっていた。

有田哲平も、博多華丸・大吉も、もしこれが審査員として採点する立場であればスタンスも違っていたはず。しかしそうではなく気楽なポジションでやれたところが番組に絶妙にハマっていたように思える。その点で『THE SECOND』の特徴である、お笑いファン100人による一般審査員システムが功を奏したと言えるのではないか。

ちなみに東野幸治は、4時間の放送時間のなかで、起きた出来事をかなり細かく拾い上げていた。それにもかかわらず時間的なバタつきも、ダラつきもまったく感じさせなかった。その上で、有田哲平、博多華丸・大吉、そして出場者たちもコントロールしていった。これは驚異的な進行だったのではないだろうか。東野幸治の司会力は次元が違うことを証明してみせた。

『THE SECOND』は2023年の第1回大会から、番組進行・構成、カメラワーク、審査システムなど様々な面で成功を収めていた。そんななか第2回では、東野幸治と有田哲平という交わりがほとんどなかった二人のマッチアップをこれまた成功させた。キャスティング面でもここまでの成果を残すとは、末恐ろしい賞レース番組であり、またバラエティ番組でもある。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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