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サッカー選手が失業者や犯罪者になる道を断ち切れ。Kリーグが引退選手の人生設計を支援

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
パク・チソンも第二の人生を歩んでいる。(写真:ロイター/アフロ)

Kリーグを運営する韓国プロサッカー連盟が今年度から、とあるアカデミー・プログラムを実施するという。

『Kリーグアカデミー引退選手進路教育課程』と題されたそれは、引退を控えたりその年齢に差し掛かった選手たちを対象に、引退後の人生設計やキャリア作りを学び、専門家の助言やアドバイスも得られる教育プログラムらしい。

とても望ましく、待望の試みだ。というのも、韓国ではスポーツ選手として引退したあとの“第二の人生”に関してあまり整備されていないからだ。

ワールドカップ出場や韓国代表など、現役時代に華々しい活躍を見せた人気選手はいい。最近では日本でも活躍したアン・ジョンファンがテレビタレントとして大成功を収めているし、ホン・ミョンボ、パク・チソンなど2002年ワールドカップ・メンバ―たちは協会幹部に指導者など、それぞれ要職についている。

最近はあの自由奔放なイ・チョンスが、40歳にもならない若さで仁川(インチョン)ユナイテッドの強化本部長に就任して大きな話題にもなった。

(参考記事:今だからこそ知りたい!! 韓国人Jリーガー、あの人たちは“いま”

ただ、指導者や解説者として活躍したり、タレントとして引退後も注目を集めているのはごく一部の限られた選手だけだ。

それどころか引退したあと、サッカーに関連する仕事に従事できず、事務職や販売業、サービス業など、サッカーはおろかスポーツともかけ離れた人生を送っている者も多い。

最近は犯罪に手を染めてしまう選手も出た。かつてKリーグのベストイレブンに輝き、韓国代表としても2007年アジアカップ予選に出場。ACLでは浦和レッズなどJリーグ勢との激闘も経験したチャン・ハギョンだ。

引退後は少年サッカー教室を運営していたというチャン・ハギョンだが、現役選手に八百長を持ち掛けていたことが明るみになり、実刑判決を受けている。

こうした事件を未然に防ぐためにも、選手たちに引退後の人生設計やそのための就業訓練などを実施する必要があるとKリーグも感じ、アカデミー実施に踏み切るのだろう。

ただ、韓国のスポーツ選手たちが引退後に待ち受けている現実は厳しい。昨年11月に国会議員のキム・ヨンジュ議員が大韓体育会(KOC)に調査させた資料によると、引退後に就職できたとしても、その半数以上(59・9%)が非正規雇用で、月収200万ウォン(約20万円)に満たない場合が38%もあるという。

現役時代に数億ウォン(約数千万円)の年俸を稼いできたKリーガーたちからすると、「スズメの涙」にもならない程度の収入だが、それでも就業できるだけでも幸運かもしれない。

(参考記事:最高額は日本キラーの大巨人!! 韓国Kリーグの平均年俸はいくらなのか

というのも、イ・ヨンジュ議員によると2017年度に引退した40歳未満のスポーツ選手1733名のうち35.4%が「無職」と答えたというのだ。

イ・ヨンジュ議員は先日も韓国スポーツ界で起きていたパラハラ・性暴力の事件件数が124件もあったことを明かして波紋を呼んだが、引退した選手の無職率もショッキングだった。

(参考記事:驚愕!! 韓国スポーツ界の暴力・性的暴行による懲戒はなんと124件!! 最も多かったのは…

もちろん、この数字は韓国スポーツ界全体のもので、Kリーグに限定された統計データではないが、当然のごとくこの中にはサッカー選手も含まれている。

それだけにアカデミーを実施して選手たちのセカンドキャリアをしっかりフォローアップしていこうというKリーグの取り組みには、大いに期待したい。

また、この点においては2002年にキャリアサポートセンターを設立し、選手たちのセカンドキャリア支援を行ってきたJリーグから学べることも多いだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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