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益虫テントウは可愛い殺し屋①=ナミテントウ

天野和利時事通信社・昆虫記者
アブラムシを襲うナミテントウ成虫(左)とハムシの幼虫を襲うナミテントウ幼虫

 テントウムシは愛らしい虫の代表だ。絵本やアニメでは大抵、優しく、可愛いキャラクターとして描かれる。虫好きの子供たちにとってはアイドルだ。

 テントウムシは、園芸家の敵「アブラムシ」を退治してくれる益虫としても、高く評価されている。しかし、益虫ということは、他の虫たちにとっては殺し屋でもある。子供たちの夢を打ち砕くことになったら申し訳ないのだが、これが自然界の厳しい現実なのだ。

 まずは、どこにでもいるお馴染みの「ナミテントウ」を紹介しよう。ナミテントウは、「並み」というから、「これがナミテントウ」とすぐに分かる姿をしているかと言うと、そうでもない。

多種多様な模様のナミテントウ。写真の6匹はすべてナミテントウ。
多種多様な模様のナミテントウ。写真の6匹はすべてナミテントウ。

 このナミテントウほど、1匹1匹異なる千差万別な模様をしている虫も少ない。テントウというから星が10あると思う人がいるかもしれないが、星が10あるナミテントウを見つけることはまずない。テントウの仲間で確実に10の星を持つのは、トホシテントウというやつで、これは肉食ではなく、ウリ科植物の葉を食べるから「害虫」の部類に入るかもしれない。

 ナミテントウの模様で一番多いのは、黒地に赤い星が2つの型。赤い星が4つのもの、赤い星が10以上あるものもいる。逆に赤やオレンジの地に黒い星がたくさんあるものも多く、オレンジ一色のものもいる。

 模様が大きく異なる同士でも、互いにナミテントウだと分かるようで、全く模様の異なるカップルが交尾していることもよくある。

互いに模様が全く違うナミテントウのカップル。
互いに模様が全く違うナミテントウのカップル。

 ナミテントウの主食はアブラムシの仲間だが、イモムシでも小さいものには襲いかかることがある。そうした光景は、まさに肉食の殺し屋である。

 幼虫も、生物農薬として期待されるほどの益虫であり、殺戮者だ。幼虫の共食いシーンもたまに目にする。成虫が仲間の卵を食べているのもよく見かける。

共食いするナミテントウの幼虫。
共食いするナミテントウの幼虫。

産卵中のナミテントウ。
産卵中のナミテントウ。

仲間の生んだ卵を食べるナミテントウ成虫。
仲間の生んだ卵を食べるナミテントウ成虫。

仲間の蛹を食べるナミテントウ成虫。
仲間の蛹を食べるナミテントウ成虫。

 そんなシーンを見て、「可愛いテントウムシの裏の顔を見てしまった」などと思ってはいけない。それこそがテントウムシの真の姿であり、自然界のバランスを保つヒーローの姿でもあるのだ。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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