今季初の甲子園開催・広島戦 1イニングで一巡した打者全員に打たれ…《阪神ファーム》
今季初の甲子園開催となったウエスタン・広島3連戦。27日は阪神が才木浩人投手、広島が高橋昂也投手と同じ2年目の19歳同士の先発でした。才木投手が2回に4点を失い、そのあとは抑えたものの、7回に石井将希投手と藤谷洸介投手が合わせて9連打(5連続タイムリーを含む)で7失点。広島打線は出場した全員の17安打です。阪神打線はわずか3安打で、2点を返したとはいえ高橋昂投手に完投を許しています。
ちなみに、翌28日はキッチリとお返ししました。先発全員とはいかなかったけれど計15安打で、陽川尚将選手の逆転3ランが効いていますねえ。江越大賀選手と北條史也選手も3安打ずつです。
そうそう、甲子園の試合では選手の登場曲が聞けるのも、ファンの方にとって楽しみの1つでしょう。そして、ことしは7回に相手チームの応援歌も流れました!ファームの他球場では以前からやっていたんですけど、ついに阪神も1軍と同じく今季から始めたわけですね。鳴尾浜では行われないことなので、ぜひ甲子園でお楽しみください。
横田がシートノック初参加、小豆畑も復帰
さて、試合結果の前に2つほど。まず脳腫瘍からの復帰を目指す横田慎太郎選手が27日から、試合前のシートノックに参加しています。本隊での打撃練習には以前から入っているものの、シートノックは初めてのこと。ライトの守備位置で大きな声を出し、打球を追って投げ返す、その間もチームメイトの声に笑顔で応えるなど、生き生きとした動きと表情でした。スタンドからご覧になった方も多いでしょう。
夕方、練習が終わった横田選手に感想を聞いたら「緊張しました!」というのが最初の言葉。「久しぶりだったので。一球一球、必死に」。2016年のシーズン以来ですか?「はい。1年ちょっと。だいぶ離れていましたね」。感覚を思い出せた?「そういうのはまだなくて。ほんとに一球一球って感じでした。これから慣れていけるように頑張ります!」
初めてのシートノックが甲子園、というのも首脳陣の配慮ですかね。もちろん試合中は新しくなったベンチの最前列で声を出し、外野手とのキャッチボール、生還した選手を元気に迎え…。もう完全に“あるべき光景”となってきました。かといって、じゃあ即試合出場と周囲が急かすことだけは避けたいですね。焦らなくて大丈夫、ちゃんと待っているからと言ってあげたいです。
また小豆畑眞也選手も、27日から本隊に完全合流となりました。安芸キャンプ終盤の2月26日に左足を痛め(左太もも裏の筋挫傷と診断)、戦列を離れていたもの。経過が思わしくなかった時期もあり、ちょっと長引いてしまったようですが、今回はしっかり完治させての復帰です。本人も「きょうから完全復帰ですよ」と笑顔いっぱい。「足も問題ないです。いつでも出られます!」と張り切っていました。
では試合の詳細をどうぞ。
《ウエスタン公式戦》4月27日
阪神-広島 9回戦 (甲子園)
広島 040 000 700 =11
阪神 000 000 110 = 2
◆バッテリー
【阪神】●才木(2勝2敗1S)‐石井‐藤谷‐歳内‐島本 / 小宮山-長坂(7回~)
【広島】○高橋昂(2勝1敗)(9回) / 坂倉
◆本塁打 堂林2号3ラン(才木)
◆三塁打 江越
◆二塁打 美間、中村奨、陽川
◆盗塁 島田(7)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中:江越 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 1) .224
2]二:熊谷 (3-0-1 / 0-0 / 0 / 0) .178
3]遊:北條 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .184
4]左:板山 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .276
5]一:中谷 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .176
6]三:陽川 (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .186
7]捕:小宮山 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .300
〃捕:長坂 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .271
8]右:島田 (3-1-0 / 0-0 / 1 / 0) .219
9]投:才木 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .167
〃投:石井 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃投:藤谷 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃投:歳内 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
〃打:岡崎 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .300
〃投:島本 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
才木 6回 89球 (7-2-2 / 4-4 / 3.55) 148
石井 0.2回 26球 (6-0-0 / 5-5 /11.25)139
藤谷 0.1回 23球 (3-0-0 / 2-1 / 3.38) 140
歳内 1回 12球 (0-1-0 / 0-0 / 9.64) 142
島本 1回 9球 (1-1-0 / 0-0 / 7.20) 142
《試合経過》※敬称略
才木は1回、先頭に四球を与え、1死後に内野安打と四球で満塁のピンチを迎え、なおも2死一、二塁で3番・堂林に3ラン…4点を先取されました。その後は3回と4回が三者凡退。5回は堂林(この日5打数4安打3打点!)の中前打と捕逸で1死二塁とするも無失点。6回は先頭・美間の左二塁打を浴びながら、北條の好守などで追加点は与えていません。
7回は石井と長坂のバッテリーに代わり、1死を取ったあと庄司に内野安打され暴投で二塁へ。堂林の右前打で庄司がホームを狙うも、島田の送球でタッチアウト!ところがメヒアの中前打で一、三塁として岩本の中前タイムリー。なおも2死一、三塁で美間が右前タイムリー。また一、二塁で坂倉も右前タイムリー。ここで石井は降板します。この時点で7対0。
2死一、二塁で登板した藤谷は中村奨にタイムリー二塁打、続く桑原にも2点タイムリー。この時、センター江越のバックホームが逸れて桑原は二塁へ。打者一巡して青木のところで、初球がストライクなのに長坂は捕逸、走者は三塁へ。さらに4球目でまた捕逸(2つともバッテリーのサインミスと思われます)で1点追加されました。庄司を投ゴロに打ち取ってようやく終了。7回だけで打者11人、安打はすべて連打で9、そのうちタイムリーも5連続、計7失点です。
打線は6回まで得点なし。走者は2回に先頭の板山がエラーで、3回は島田がファーストへの内野安打で(二盗成功)、4回は先頭の北條が四球を選んで(暴投で二塁へ)、という3人だけ。つまり内野安打の1安打のみでした。11対0となった7回裏、1死から中谷は四球を選び、続く陽川が初球をレフトへ!左越えのタイムリー二塁打となりました。
8回は歳内が3番からの堂林、メヒア、岩本を三者凡退に切って取り、その裏は1死から江越がレフトフェンス直撃の三塁打!次の熊谷が初球を打って右犠飛。もう1点返します。9回に登板した島本は坂倉に右前打されるも、わずか9球で抑えて無失点。こちらの打線も4番から三者凡退に打ち取られて試合終了。高橋昂に完投を許しています。
1軍で勝つために必要な力と技を
試合後、矢野燿大監督は才木投手について「言葉にするなら“もったいなかった”かな」と2回2死からの4連打で4点を失ったことを話しています。「最初のヒットは追い込んでから、次はボールボールでヒット、(一、三塁になって)1ストライクで何でもできるカウントを打たれてタイムリー。最後は1ボールから仕留められた(3ラン)。トータルで言うと、ピッチングになっていない。投球を組み立てるところまでいっていない」
例を挙げて振り返りながら「高卒2年目にそこまで求めるのはレベルの高い話だけど、将来はそこまでいくピッチャーだから。能力的にも性格的にも、持ち合わせているから。課題は、あの回。それと立ち上がり先頭にフォアボールを与えたのも。そこを反省して上がっていってくれたら。ファームでゼロに抑えても1軍で勝てるかというと“?”のマークがついてしまうところが、まだある」と続けました。
また「その点、広島の高橋(昂)は“ピッチング”をしていた。力を抜いているわけではないけど、いい意味でリラックスして、決めるとこではしっかり三振を取りにいく。きょうの試合では向こうの方がピッチングできていたかな」と言っています。1軍を見据えて「改善というより、成長していく中のこと。勝つためにはそういうことが必要だから。投げるだけなら今のままでもできるし、今のまま行って何勝かできる可能性は持ち合わせていると思うけど、もっと高いところを目指してほしい」と矢野監督。
なおリリーフした石井、藤谷両投手に関しては「単なる力不足でしょう。石井は(1死一塁で)初球にワンバン投げたり、藤谷はなかなかアウトが取れないうえにサインミス。でも投げることで課題が見えるから」と矢野監督。7点を失った7回の連打とバッテリーミスですね。
高橋建投手コーチの才木投手評は「粘ったことに関しては、ハートが強いので。中5日でこういう結果になったのかもしれませんが、4点取られてから粘り強く投げられたことは評価できる。と(1軍に)伝えるつもりです」というものでした。
明確な反省と収穫・才木
では才木投手のコメントをご紹介しましょう。中5日での先発は「別に疲労感とかはなかった」としていますが「きょうは自分の感覚のボールが投げられていないので、そこを次はしっかり修正していきたい」とのことです。反省点は?「初回は先頭のフォアボールで流れを悪くしてしまった。2回はポンポンと2アウトを取ってから、打たれて打たれて点を取られた。どちらももったいなかったと思います。立ち上がりが課題かなと」
立ち上がりに力が入りすぎた?「ちょっと力んだという感じはありました。ブルペンから真っすぐが走っていなくて空回りしたかも。テンポよく投げられたらいいなと思っていたんですけど…。後半はリズムを戻していけたので、そこは収穫。それを最初からできるようにすれば」
後半の収穫に関しては「カーブで空振りを取れたり、バッターのタイミングが合っていなかったので。またフォークも空振りが取れて、いい感じだった。小宮山さんにもいい配球をしてもらいました」と才木投手は振り返っています。
初甲子園にハードルが上がった?
次に石井投手。初めての甲子園で「緊張しました」と言いつつ「緊張は常にしているんですけど。マウンドに上がってから、自分の思っている感じでできなくて…」と肩を落とします。焦った?「はい。どうしようかなとマウンド上で考えてしまって、ズバズバ攻める感じにならなかった」。ブルペンでは普通に投げているのに「マウンドに上がったら別人になってしまう。いつも」なのだそうです。
甲子園球場だからという理由ではなかったみたいで、ただ「甲子園のグラウンド内に入って体を動かすのは初めてで、大学までは球場自体を見たこともなかったから、ちょっと自分の中でハードルが上がっていたかも」と振り返る石井投手。「練習している時に、ちょっと高ぶっていた」と明かしてくれました。
それにしても、よく打たれた…。「止まらなかったです。(島田)海吏に救ってもらったけど」。同じ上武大から入団した同期の守備に感謝しつつ、抑えきれなかった自分自身への反省が、このあとに続いたのでしょう。
7盗塁目の島田「熊谷に追いつかないと!」
8回に、強烈な当たりでフェンス直撃の三塁打を放った江越選手は「真っすぐです。追い込まれていたので、詰まったけどあそこまで行ってよかったです」とのこと。あとちょっとでしたかねえ。それと6回の左飛もいい当たりだったのに、レフト方向へ吹いていた風の向きがたまたま変わったのが残念。鳴尾浜なら、とタラレバなことを考えてしまいましたが、同じように思われた方いらっしゃいませんか?
話を聞いているところへ通りかかった嘉勢打撃投手は「堂林は放り込んだのになあ」と言い残して去っていきました。きっと風が…。いや、センターへ放り込んだんですね。
島田選手にナイススロー!と声をかけたら「たまたまです」と照れた様子。石井投手が、助けてもらったと言っていましたよ。「石井が投げていたので、何とかしてやらなきゃと思って。あのあと抑えられたらよかったんですけど」。打つ方ではチーム3安打のうち1本の内野安打と、盗塁も決めています。「これで7個目ですね。熊谷に追いつかないと。今、13個?すごいですね」
やはり同期であり、同じように足を武器にしている選手ということで「負けられない、負けたくない」気持ちは強いと言います。そのうえで「技術はアイツの方があるので。バッテリーとの駆け引きがうまい。ただ走るんじゃなくて、たとえばキャッチャーが“そこで行く?”と驚くようなところでスタートするとか。駆け引きですね。うまいと思います」と相手を認めてもいました。
そして「僕は失敗が多いので…。精度を上げていきたい」と島田選手。同じチームにライバルがいるのは、とてもいいことだと聞きます。いつかは1軍で競い合うであろう2人を注目していきましょう。
甲子園で聞く、自身の登場曲
最後は熊谷敬宥選手。2月22日と25日、安芸キャンプの練習試合で1番を打った以外、教育リーグも公式戦も8番(DHを採用した場合)か9番しかなかったのですが、この日は初めて2番という打順。何か変化はありますか?「打席の中で考えることが多くなりました。1番の江越さんが出塁したら、そういう作戦もあるので。また江越さんが初球から打ちにいくと、ボールを見たりとか」
2番だとバントもあるし、それで足を生かすことができたりしますね。「いくとこはしっかりいかないと。もっとチャンスメイクできるように頑張ります」。矢野監督によれば「打席の数も増えるので」とのことで、28日はまた9番に戻りました。
それと、登場曲がかなり懐かしい『BE MY BABY』(COMPLEX)だった熊谷選手。選んだ理由を尋ねたら「気分が上がるじゃないですか」という返事。でも流行ったのは生まれる前ですよね?「はい。昔の曲が好きなんで」。なるほど。甲子園の打席に向かいながら初めて聞いた、自身の登場曲はどう?「よかったです!」。かなり印象に残りましたよ。「わかりやすい方がいいでしょう?」。おっしゃる通りです。
<掲載写真は筆者撮影>