【第88回都市対抗野球大会第8日】日本通運の阿部良亮がノーヒットノーラン、東芝、西濃運輸も8強入り
第2試合で、日本通運の阿部良亮投手がノーヒットノーランを達成した。完全試合を含めれば、2011年の森内壽春投手(JR東日本東北)以来5人目の偉業。他の2試合も好ゲームで、アマチュア最高峰と評される社会人野球の魅力が詰まった3試合だった。
二回戦/川崎市・東芝 4×1 大津町・Honda熊本
東芝が2年目の左腕・加嶋宏毅、Honda熊本は一回戦に続いてエースの荒西祐大が先発。両投手の気迫あふれる投球で、4回までは互いにゼロを並べる。5回表の東芝は、先頭の服部政樹が左前安打で出塁すると、犠打で二塁へ送り、小川裕生が中越えの三塁打を放って1点を先制。さらに、佐藤 旭の右犠飛で2点目を挙げる。
対するHonda熊本も、1、3、4回と先頭打者がヒットを放ち、犠打で確実に二塁へ進めたが、後続が加嶋に討ち取られて得点できない。僅差ながらも東芝ペースで進んだ試合は、7回表に一死二塁から井川良幸が左前に落として3点目。8回からHonda熊本は継投で追加点を防ごうとしたが、9回表にも東芝がダメ押しの4点目を挙げる。
加嶋には東京ドーム初登板で完封勝利の期待がかかったが、9回裏のHonda熊本は意地を見せ、熊丸武志の二塁打と川嶋克弥の右前安打で1点を返す。ここで加嶋はマウンドを譲るも、東芝が4対1でベスト8に進出した。
二回戦/さいたま市・日本通運 2×0 門真市・パナソニック
この試合は、日本通運の先発・阿部良亮投手の快投に尽きる。浦和学院高、東洋大と名門で腕を磨いてきたが、エースになった経験はない。それでも、ポテンシャルの高さと直向きな練習姿勢を買った藪 宏明監督の目に留まり、日本通運に入社して3年目を迎えた。昨年は都市対抗、日本選手権ともマウンドに登り、さらなる飛躍が期待された今季は、春先から着実に実績を残し、都市対抗南関東二次予選の第一代表決定戦では先発を任される。
一回戦でも五番手でリリーフ登板しており、立ち上がりを無難に滑り出すと、4回までは一人の走者も許さない。2回裏には関本憲太郎のソロ本塁打で先制したが、日本通運も4回まではその1安打のみと、パナソニックの先発・吉川峻平との投手戦を展開する。
5回表には先頭に四球を与え、一死後には死球で一、二塁とされる。しかし、そのピンチを連続三振で切り抜けると、ギアを一段階上げたように映った。6回裏には、一死一、二塁から浦部剛史の左前安打で待望の2点目。
7回表にも四球を与えるが、次打者を併殺に討ち取り、8回の代打攻勢も3者凡退。スタンドがざわつき、必要以上に緊張するであろう9回表も、最後は連続三振で締めた。
一球ごとに気持ちを込めた122球で、9奪三振、3四死球。パナソニックの投手陣も5安打2失点と、締まったゲームで達成された記録だけに、なお価値がある。
二回戦/大垣市・西濃運輸 8×2 東京都・東京ガス
5月のベーブルース杯大会の期間中に西濃運輸を取材した際、伊藤 匠は試合後に自社グラウンドに戻ると、林 教雄監督から100本ノックを受けていた。ルーキーだった2014年に四番を任され、首位打者賞と若獅子賞に輝く活躍で初優勝に貢献。プロのスカウトにも注目されたが、2年目、3年目は苦しんだ。
今季になり、「このままでは伊藤の野球人生が終わってしまう」と考えた林監督から持ちかけ、再び下半身を強化するためにマンツーマンの100本ノックを始めたという。一回戦では、その成果を示す豪快な3ラン本塁打で勝利の原動力になった。そして、真価を問われるこの試合、1回裏死一、三塁から阪本一成の2点二塁打で先制した直後、一回戦のリプレイを見るかのような2ラン本塁打をレフトスタンドに叩き込む。
初回の4点で勢いづいた西濃運輸は、先発の堀田 晃も一回戦の反省を生かしてストライク・ゾーンで勝負し、3回表に地引雄貴に2ラン本塁打を食らったものの、怖がらずに勝負を挑んでいく。
すると、4回裏にも2点を追加すると、なお二死満塁から伊藤が三塁手のグラブを弾く2点二塁打を放つ。これで楽になった堀田は、イキのいい投球で完投勝利。後手に回った東京ガスは、流れを引き寄せることができなかった。