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子供の虫歯は減少中・乳歯の「う歯」数の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
子供の虫歯は減っているのだろうか(写真:イメージマート)

厚生労働省は2023年12月、歯科疾患実態調査(※)の2022年調査分の概要を発表した。同調査結果には「う歯(齲歯。齲蝕した歯。いわゆる「虫歯」)」をはじめとした、歯に関する状況を推し量れるさまざまなデータが盛り込まれている。今回はその中から、乳幼児などにおける乳歯と「う歯」の関係について確認を行う。

今回対象としたのは乳幼児など(各法令に「乳幼児」として定められた0~6歳のうち1~6歳、さらには取得可能な調査年においては14歳まで)における平均的な「う歯」の数の推移。グラフ中に「dft指数」とあるが、この「dft」とは「Decayed and Filled Teeth」の略で「虫歯」と「(虫歯を)処理済みの歯」のこと。つまり「dft指数」とは一人あたりの「虫歯か、虫歯だった歯の数」を意味する(ちなみに大文字は永久歯、小文字は乳歯を指す。今件は資料では小文字で記述されているため、乳歯の動向となる。「虫歯」「(虫歯を)処理済みの歯」双方を持たない人も含めた被験者全員の平均値であることに注意)。またグラフ中空欄の部分は値が存在しないことを意味する。

↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、年齢階層別)(2022年)
↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、年齢階層別)(2022年)

↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、1~7歳)
↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、1~7歳)

↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、8~14歳)
↑ 乳歯の一人平均う歯数(dft指数、8~14歳)

「未処理歯」の基準が変わっているため(1993年以前と1999年以降では「未処理歯」の診断基準が異なる)厳密な意味での継続性は無いが、おおまかな動きとしては「成長するにつれて虫歯が増える。6歳がピークで以降は減る(永久歯に生え替わり始めるから)」「以前よりも最近の方が、乳歯の虫歯の数は少なくなる」傾向なのが分かる。直近の2022年では6歳児の平均虫歯+虫歯だった歯は1.2本だが、1987年時点では8本近く存在していた。

「乳歯にう歯(未処理・処理済み含む)を持つ人の割合」そのものも減少を続けており、1987年時点では5歳児で89.9%・6歳児で90.5%だったものが、2022年時点ではそれぞれ17.6%・30.8%にまで低下している。dft指数が減退しているのも、「乳歯にう歯(未処理・処理済み含む)を持つ人の割合」そのものが減っているのも一因ではある。

↑ 乳歯にう歯(処置完了・未処置合わせ)を持つ人の割合
↑ 乳歯にう歯(処置完了・未処置合わせ)を持つ人の割合

この理由について特に説明は無いが、公衆衛生の進歩、歯みがきをはじめとした虫歯予防の啓蒙の結果など、多方面での努力の成果によるものと考えられる。個体差もあるためゼロにすることは事実上不可能だが、このままさらに減少の動きを見せて欲しいものだ。

※歯科疾患実態調査

歯科保健状況の把握のために必要な資料を構築するため、1957年以降原則6年毎に実施しているもの。今回概要が公開された2022年分については、国民生活基礎調査において設定される地区からさらに抽出した300単位地区の満1歳以上の世帯員を調査客体としている。調査対象者数は男性1239人・女性1470人の計2709人。一部は質問紙調査だけでなく口腔診査受診も実施している。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は 【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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