記録的な猛暑から平年並みの暑さへ フィリピンの東には台風5号になるかもしれない雲の塊
活発な梅雨前線
梅雨前線上で発生した低気圧が北陸から東北南部を通過するため、梅雨前線の活動が活発になっています(図1)。
このため、7月19日から20日にかけて、北~西日本では広い範囲で雲が広がり、所々で雨が降り、雷を伴った非常に激しい雨の降る所もある見込みです。
特に東北地方では大雨となる所もあるため、4日前に大雨が降った秋田県など、土の中に水分が残っている地域では、土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。
また、7月20日は東日本の上空約5500メートルに氷点下6度という、ちょっとした寒気が流入してきます(図2)。
それほど強い寒気ではありませんが、強い日射によって地表付近が30度以上となると、上下の気温差は40度近くとなり、大気が不安定となる見込みです。
北日本から東日本では落雷や竜巻などの激しい突風、急な強い雨に注意してください。
暑さ一服
令和5年(2023年)7月中旬は、太平洋高気圧の強まりとともに、東北南部から東日本・西日本では晴れて気温が記録的に高い日が続いていました。
しかし、活発になった梅雨前線により、7月19日は強い日射によって気温が上昇したのは、梅雨前線の南側に位置する関東~東海だけで、全国的には暑さが一服しています。
これまで、今年の最高気温は7月16日に群馬県・桐生で観測した39.7度ですが、7月17日には愛知県・豊田で39.1度、7月18日には三重県・桑名で39.0度と、連日39度超えでしたが、7月19日に全国で一番気温が高かったのは、千葉県市原市・牛久と千葉県茂原市・茂原の37.2でした。
7月19日の最高気温が35度以上の猛暑日は14地点(気温を観測している全国915地点の約2パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日は390地点(約43パーセント)と前日に比べ大きく減少しました(図3)。
しかし、夏日は713地点(約78パーセント)もあり、大きくは減少していません。
7月中旬の暑さが異常であり、例年通りの暑さに戻っただけということもできます。
東京の最高気温の推移をみても、7月中旬は平年を大きく上回り、猛暑日が多かったのですが、7月20日以降の予報では、猛暑日となることなく、平年より少し暑い真夏日が続くとなっています(図4)。
東京の最低気温は、平年より高い日が続く予報で、熱帯夜が続く予報となっています。
また、湿度が高い真夏日が続くという、熱中症になりやすい日が続くということにはかわりはありませんので、引き続き熱中症対策が必要です。
ただ、日本の天気予報を変える可能性のあるフィリピン・ミンダナオ島の東海上の雲の塊には注意が必要です。
太平洋高気圧の強弱と台風の進路
フィリピンの東海上にある雲の塊は、次第に渦を巻き始めています(タイトル画像の円内)。
この雲の渦が、まもなく熱帯低気圧に発達する見込みです(図5)。
台風が発達する目安の海面水温は27度といわれていますが、ミンダナオ島の東海上の海面水温は29度くらいですので、熱帯低気圧がさらに発達し、台風5号になるかもしれません。
【追記(7月20日8時30分)】
気象庁は、フィリピンの東海上の熱帯低気圧を解析し、24時間以内に台風5号に発達すると発表しました。タイトル画像の円の位置より若干南西側の海上です。
昔、筆者が調べた7月の台風の平均的な経路では、ミンダナオ島の東海上の台風は、西進して南シナ海に入るものと、フィリピン・ルソン島の東海上を北上して南西諸島から東シナ海を北上するものがあります(図6)。
これは、その時の太平洋高気圧の強弱と関係があります。
台風が西進して南シナ海に入る場合は、太平洋高気圧が強まっているときです。
台風の上昇流によって北にある太平洋高気圧がより強められ、日本付近はより暑くなります。
一方、ルソン島の東海上を北上するときは、太平洋高気圧が弱まっているときで、沖縄から西日本では台風5号に警戒が必要ということになります。
日本付近の気温は、フェーン現象が発生する地域を除き、極端な暑さにはなりません。
とはいえ、熱帯低気圧さえも発生していない現段階では、台風が発生した場合にどちらのコースをとるのか不確実性が大きく、各国の気象機関の予想が分かれています。
日本の気象庁と欧州中期予報センターが南シナ海へ進む、アメリカ大気海洋庁がルソン島の東海上を北上としていますが、最新の観測データを取り入れた予報で大きく変わる可能性があります。
日本の天気にかかわるフィリピンの東海上の雲の塊に要注意です。
タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図5の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。
図6の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年)、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。