【新宿区】大切な人を喜ばせたい夜に。荒木町の和食「きんつぎ」で、絆を深める幸せな晩餐を!
知る人ぞ知る美食の街、荒木町。江戸時代は大名屋敷があり、明治以降は料亭や茶屋が立ち並んで栄えた粋な街です。
今回は、東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目駅」4番出口より徒歩約2分の場所にある「荒木町きんつぎ」をご紹介いたします。
大切な人と一緒に、おいしい料理と共に幸せな時間を過ごしたいなら、ぴったりのお店です。
お店の外観
新宿通りから路地に入って右側を見ると、ビル入口の上から「荒木町きんつぎ」と書かれた看板がありました。この建物の地下1階と地上2階がお店です。エレベーターを利用して入店します。
店内のようす
地下1階はカウンター席(13席)と個室にもなるテーブル席(6席)があります。カウンター席は、料理が目の前で仕上がるライブ感を味わえるオープンキッチンです。
2階は、個室が3部屋あります。通常は4席・6席・8席の個室に区切られていますが、仕切りを外せば最大20名まで着席可能です。
この日は、未就学児を含む5名で予約していたので、2階の個室(6席)へ通していただきました。
白木の香り漂う清潔な空間は、ゆったりと落ち着いて過ごせそうです。
取材日(2024年3月)のおまかせ料理は、全19品。写真と共にご覧ください。
結論を先に言ってしまうと、「どれもが絶品」でした!
おまかせコースでの晩餐会
先付け(前菜)
テーブルの上に並べられた料理を一目見て、子どもたちから「うわー! おいしそう! 」と声があがりました。
一皿ひと皿が宝石のような小鉢のほかに、飲むための「お出汁」も並びました(画面右下)。これは、「この味、わかる?」と問われているようで、 おいしさに本気なのが伝わってくるようです。
小鉢(写真左上から時計回りに)
- 神奈川県産の天然クレソンとお揚げのお浸し
- ブリの胡麻酢がけ
- フルーツトマト・ズワイガニ・スナップエンドウの土佐酢ジュレがけ
- バフンウニとワサビ
- 苺とマンゴーの白和え
- ハマグリのとろろ蒸し
- 新玉ねぎと空豆のすり流し
小鉢一皿ひと皿の、個性豊かな味ときたら! ささやかなアクセントを効かせつつ、素材の良さを引き立てるように、丁寧な調理がされていることがわかります。甘味・酸味・塩味・うま味の絶妙なバランスは、味の競演というにふさわしいもの。
ひと口食べるごとに、瞳孔が広がるようなおいしさを感じたのは、私だけではなかったようです。その証拠に、好きなものしか食べない食べムラ真っ最中の子ども(2歳)が、パクパクと食べ進めていました(注・子ども用メニューではありません)。
鯖の押し寿司
鯖の身の上に、ちょこんと添えられた薬味は、左が本わさび、右は万能ねぎと生姜を和えたもの。わずかな量の薬味で全く違った印象になることに、おいしい、だけではなく、「おもしろい」と感じました。
椀盛
海老しんじょと菜の花のお吸い物。あっさりとした味付けの中にもパンチを感じるのは、海老しんじょのうま味が濃いから。何杯でも食べられそうです。
お造り(刺身)
マグロとヒラメ、シマアジのお造りです。口に含むと、醤油をつけているのに身が甘く、噛めば弾力を感じます。
刺身の鮮やかな切り口も美しくて、素材が良いことはもちろん、料理人さんの腕が良ければこそ味わえる、繊細な一品です。
お酒も、楽しみたい!
普段はお酒をほとんど飲まない筆者。しかし、ここで飲まなければ後悔すると思い、一合だけ飲むことにしました。
今回は栃木県の「大那」というお酒を頼みました。
スタッフの方が瓶を見せてくださいました。その後で、錫の器に入れられて配膳されたのが下の写真です。
ガラス製のお猪口で、金色の煌めきを愛でながら飲むお酒は、すっと爽やかな飲み心地で、もう、幸せ……!
焼き物と強肴(茶碗蒸し、酢の物)
茶碗蒸しは、濃いめの鰹だしが効いていました。卵液と上にかけられた出汁の層が分かれていて、目を楽しませてくれます。小ぶりな器で供されるのも心憎く、もっと食べたいという気持ちになりました。
焼き物は鰆。中心まで火が通りつつ、ふっくらとした身を守る焼き加減。おいしい。
もずくの酢の物にはミョウガが添えられていて、料理とお酒に酔って甘えた舌を、酸味と香りでシャンとさせてくれました。
煮物
牛ホホ肉の煮込みは、普通の固まり肉の固さをイメージしていると、箸の力加減を間違えます。軽い力でホロリとほぐれます。
口に含むと、まるで洋食のような濃厚な味。きけば、ホホ肉は5時間かけて煮込んでいるそうです。味が染みるまでの、身が柔らかくなるまでの時間に思いを馳せました。
ご飯と留め碗、香の物
煮物に舌鼓を打った後、スタッフの方が大きな蒸籠を持って入室されました。蒸籠で蒸したごはんを、一人分ずつ盛り付ける前に見せに来てくださったのです。
今日の具材は、北海道産のサクラマスと静岡産の釜揚げしらす、それに筍とキノコでした。全体的にふんわりと柔らかい食感のなかに、わずかに感じる歯ごたえが、絶妙。
香の物は、自家製のぬか漬けです。丁寧に手入れされていることがわかる、素朴だけど正直なおいしさが、良い。
赤だしの味噌汁は体に染みるようで、もう、最高です。
甘味
最後のデザートは、アイスクリーム。トッピングのきらきらしたものは、ほうじ茶のゼリーだそう。
どんな味なんだろうと期待しながら口に含むと、ほうじ茶の香ばしい香りが、口の中だけでなく、鼻腔へも広がりました。アイスクリームもほうじ茶が香って、少し甘くて、冷たくて、濃厚なのに爽やかで……。
ほうじ茶にはリラックス効果があることは知っていましたが、うっとりする成分も入っているのでしょうか。新発見です(個人的見解です)。
以上、19品を2時間半ほどかけて、ゆっくりと堪能しました。今回は、おまかせコースが一人8,580円(税込。飲み物は別途注文)。
同行した子どもが大喜びしてくれたこともあり、おいしさとお値段以上のお得感に満足して、目尻が下がりっぱなしの夜となりました。
オーナーお二人へインタビュー
後日、「荒木町きんつぎ」のオーナーである料理人の北村徳康さん、佐藤正規さんにお話を伺うことができました。
お二人は、目黒区の学芸大学駅近くにある「件(くだん)」で修業を積んでおられました。働いていた時期は重なっていないにもかかわらず、出会ってからは意気投合。その後、2018年に二人でお店を出す運びとなったそうです。
――(筆者)先日は、おいしい料理をありがとうございました! 小さな子連れでしたが、ゆっくりと味わうことができました。
北村:それは良かったです。当店では、お子様用のメニューこそありませんが、家族でも安心して来られるお店にしたいと思っていたので。個室の予約は通常1ヶ月前(翌月分の予約を月初)から承っています。お子様れのお客様は、平日以外の個室利用でご予約を承っています。可能であれば、後から隣の部屋を予約されるお客様に、当日同じフロアにお子様がいらっしゃることをご了承いただいてご予約を承ることもあります。
――そこまで配慮してくださっていたとは! 手厚いサービスですね。
北村:我々にも子どもがおりますので、子連れで外食する大変さは知っているつもりです。せめて自分たちのお店では、どんな方にも楽しく過ごしていただきたいと思っています。「おいしい料理とお酒を出すのは当たり前。期待を超える価値を提供する」ことを心がけています。
――くつろげる内装も、その一環でしょうか。木の美しさと居心地の良さが素敵ですね。
北村:佐藤も私も、お店の内装を頼むならこの人に、と憧れていたデザイナーさんが同じだったのです。その方に、店舗探しの段階から相談にのっていただきました。そのご縁で荒木町に店を構えることができました。
――地下1階と地上2階で、雰囲気が少し変わりますね。調理は地下のキッチンでするのですか?
佐藤:いえ、厨房は地下と2階、それぞれにあります。お客様に料理をタイミングよくお出しするためです。厨房の規模とお客様スペースの都合を考慮して2フロアーに分けることで、カウンターも、落ち着いた個室も、両方を用意できるようになりました。
――そのときの目的によって席を使い分けられるのは良いですね。
佐藤:お一人でもグループでも、気負わずに来ていただけたら嬉しいです。おいしいものを食べ慣れた大人の方は気軽に、学生さんや若い方なら少しだけ背伸びをすれば来られるような。様々な場面でお客様の「おいしいものを食べたい」に応えられるお店でありたいと思っています。作法や決まりごとに縛られず、自由に楽しく、料理とお酒を味わっていただきたいですね。
――確かに楽しませていただきました! 「大那」というお酒も初めて知りましたが、とてもおいしかったです。
北村:お酒は、自分たちで蔵元に出向いて料理に合うものを探しています。全国に良いものはたくさんあります。このお店でお出しすることで、お客様に知っていただけたら嬉しいです。
――料理をいただいた後なので、お二人の言葉が有言実行されていることを実感しました。本日はありがとうございました。
「金継ぎ」の価値のよう
日本の伝統工芸の技法である「金継ぎ」。割れたり欠けたりして破損した陶磁器を、漆等を用いて修復する技法のひとつです。縄文時代から行われていた技法ですが、これを千利休が「黄泉の国から蘇った物。豪華絢爛な作為的な美しさよりも、情緒を重んじた侘び寂びの美がある」として高く評価したといいます。
名は体を表すと言います。「荒木町きんつぎ」も、佐藤さんと北村さんお二人の力が合わさって、料理もお酒も雰囲気も、新たな価値が増すように感じました。