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なぜ、急に春になったのか 今月上旬は「10年に一度の高温」可能性

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
3月8日頃から全国的に気温がかなり高くなる見通し(ウェザーマップ作画)

 この先2週間も暖かい空気に覆われやすく、8日頃からは西日本から北日本にかけての広い範囲で、気温がかなり高くなる見通しです。気象庁はこの時期としては10年に一度の高温となる可能性が高いとして、早期天候情報を発表し、注意を呼びかけています。

あっという間に春本番

 暦にあわせるかのように、1日夜は関東地方で春一番が吹きました。急に暖かくなった印象です。例年ならば、春一番が吹いても、すぐに寒さがぶり返し、なかなかコートが手放せないことが多いのですが、今年は様子が違うようです。

 この先10日間の東京の気温を見てみると、来週以降、最高気温が20度の日が続く予想です。さらに、朝の気温が高いことも特徴で、暖房費が節約できてありがたいです。

【東京の10日間予報】気象庁の週間天気予報に、ウェザーマップ予報を加えたもの:ウェザーマップ作画
【東京の10日間予報】気象庁の週間天気予報に、ウェザーマップ予報を加えたもの:ウェザーマップ作画

冬はぶり返すのか

 春への歩みは順調なのでしょうか。注目すべき現象が上空約22キロ、成層圏で起こりました。2月16日頃、北極の上空で、大規模な成層圏の突然昇温が始まり、気温が数日で30度以上も上昇したのです。

【30hPa高度と平年偏差図】上図は2023年1月中旬、下図は2023年2月下旬:気象庁ホームページより、筆者加工
【30hPa高度と平年偏差図】上図は2023年1月中旬、下図は2023年2月下旬:気象庁ホームページより、筆者加工

 成層圏の突然昇温により、北極を取り巻く偏西風の流れが大きく変わります。偏西風は冷たい空気と暖かい空気の間を流れているため、気温が大きく変化する原因にもなるのです。

【5日間平均】500hPa高度偏差図(3/8~3/12):ウェザーマップ作画、筆者加工
【5日間平均】500hPa高度偏差図(3/8~3/12):ウェザーマップ作画、筆者加工

 この先の予想図(3/8~12)によると、偏西風が欧米側に偏るため、英気象庁は今後、気温が低くなると注意を呼びかけています。

 一方、日本付近では北側を流れ、暖かい空気の影響の方が大きいでしょう。欧州とは対照的な天候となりそうです。

 2018年にも大規模な成層圏の突然昇温が起こり、英国はかなり寒くなったそうです。そのとき日本は気温が高く、全国的にサクラが早く開花しました。

 寒の戻りが全くないとは言い切れませんが、季節の進みは例年以上に早くなると思います。

【参考資料】

気象庁:高温に関する早期天候情報(西日本~北日本)、2023年3月2日14時30分発表

英気象庁(Met Office):Which weather drivers will affect the outlook for March?、 28 February 2023

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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