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東京五輪で登場する「女子ゴルフ界のアベンジャーズ」とは? 連覇狙うパク・インビは何を語ったか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

8月4日から埼玉の霞ヶ関カンツリー倶楽部で始まる東京五輪・女子ゴルフ。日本から畑岡奈紗、稲見萌寧が出場しメダル獲得を目指すが、各国の出場選手たちへの期待は大きいことだろう。

特に韓国の期待は一際大きい。ゴルフは世界ランキング上位15位までに入っていれば1カ国最大4名までが出場可能で、今回の東京五輪では6月29日発表の世界ランク基準で2位のコ・ジンヨン、3位のパク・インビ、4位のキム・セヨン、6位のキム・ヒョージュなど、4人が出場する。

朴セリが監督、LPGA専属キャディも帯同

韓国ではLPGAツアーで活躍する女子プロたちを「太極娘子(テグッナンジャ)」と総称するが、パク・インビが金メダルを獲得した前回リオデジャネイロ五輪同様に4人の選手が出場することもあって、「東京でも太極娘子の連覇に期待大」と報じられている。

最強の4人で構成されていることから、世界的に人気なマーベル映画のタイトルを拝借して、「女子ゴルフ界のアベンジャーズ」とも言われているほどだ。

その太極娘子たちの心の拠り所となっているのが、LPGAツアー優勝25回、そのうちメジャー制覇5回を数えるレジェンド、朴セリだ。前回リオデジャネイロ五輪に続き東京五輪でも女子ゴルフ韓国代表監督として連覇を狙う。

2019年夏に単独インタビュ―した際、「五輪は特別な舞台。選手たちが集中できるよう自分は彼女たちの防波堤になり、マネージャーになる。選手たちが何かを必要としているか、どうすればプレーに専念できるか。それを整えるのが監督の仕事」と語っていたが、東京五輪でも準備に抜かりはない。

(参考記事:日本の女子ゴルフと「黄金世代」の可能性…“レジェンド”朴セリはどう見ているのか)

2019年8月には今回の会場となる霞ヶ関CCの視察に訪れているし、韓国ゴルフ協会関係者に話を聞いたところ、出場選手が決まってからは頻繁に連絡も取っていたという。

コ・ジンヨンはデビット・ブルッカー、パク・インビはブラッド・ビチャー、キム・セヨンはポール・フスコ、キム・ヒョージュはジェフェリー・ダレルなど、4選手すべてがLPGAツアーをともにする専属キャディを伴って来日しているが、そこにも監督・朴セリの計らいがあったかもしれない。

そんな普段に近い環境のせいか、昨日行われた記者会見に姿を見せたパク・インビやコ・ジンヨンに五輪独特の気負いのようなものはなかった。

記者会見で女王が見せた風格

マスク姿での会見だったのでその表情までは読み取れなかったが、パク・インビは流暢な英語で受け答えしたあとに韓国語でこんなことも話していた。

「五輪で何もかも忘れて楽しめというのは難しいです。どんな大会よりも負担を感じますが、2回目なのでリオ五輪のときよりはマシ。リオのときと比べるとケガもなく、通常のコンディションで臨めること自体が大きな違いですからね」

前回リオ五輪前は腰や左手親指の故障に苦しみ、出場辞退を促すメディアもあったほど大会前から賛否が多かった。

だが、いざ本番が始まると本来の安定感と勝負強さを取り戻し、金メダルを獲得した。

「あれから5年が過ぎたので肉体的に年を取ったことが、今大会の変数のひとつになるかもしれませんね」

昨日のリモート会見の様子(写真=リモート会見画像キャプチャー)
昨日のリモート会見の様子(写真=リモート会見画像キャプチャー)

冗談交じりで語るところに女王の風格と余裕を感じさせるが、実際に欠場を繰り返した不安の中で迎えた前回リオ五輪前よりも精神的には楽なのだろう。

今年3月のKIAクラシック優勝、4月のロッテ・チャンピオンシップでは2位タイと今季13大会中7試合でトップ10入りを果たしている。五輪前哨戦と位置づけされたエビアン選手権では12位タイ。調子は悪くなさそうだ。

男子プロとは情報交換も?

「霞ヶ関CCでプレーするのは初めて。男子プロたちの試合をテレビで見ながら長いんじゃないかとは思いましたが、実際に9ホールを回ってみてリオのときよりも距離が長く感じられました。ラフも長く難しそうです。特にグリーン周辺のラフは難しく、アプローチでは繊細さが求められると思います」

最後に霞ヶ関CCの印象についても語ったパク・インビ。大韓体育会の関係者によると、一昨日は東京五輪に出場したイム・ソンジェ、キム・シウ、監督を務めたチェ・ギョンジュ監督らとともに食事も楽しんだという。そこでは朴セリ監督らも交えながら、コース攻略のために情報交換もあったに違いない。

五輪の舞台でも韓国の太極娘子たちが優勝争いをリードすることになるのだろうか。注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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