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ひとり旅の特権! ソロ温泉の達人が湯船でしている2つのこと

高橋一喜温泉ライター/編集者

ソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)の魅力のひとつは、湯船でひとり過ごす時間だ。

日常から解放され、スマホさえも持ち込めない。素っ裸の身ひとつで過ごす時間は、現代社会では貴重である。

一方で、「湯船に長くいられない」「暇をもて余してしまう」といった声も聞こえてくる。湯船の中で退屈に感じるようであれば、それはまだ日常から解放されていなからである。

今回は、「湯船の中でどう時間を過ごすか」をテーマにお伝えしよう。

ひとりきりで対話する

ソロ温泉では、湯船の中でもひとりだ。とはいえ、孤独ではない。リラックスするうちに、頭の中に家族や知人の顔が浮かんでくるかもしれない。彼ら彼女らと想像の会話を楽しむのもいいだろう。

ちなみに、私の場合は温泉と対話しながらひとりの時間を過ごしている。

「とてもいい湯だね。キミに出会えてよかったよ」

「この湯船にたどりつくまで、きっと長い旅をしてきたんだね。地中ではどうやって過ごしてきたの?」

「不思議な色をしているね。どんな成分が溶け込んでいるのかな?」 

文字に起こすと気色悪いが、このような会話を湯と交わしている(もちろん心の中で)。

ただ、温泉のことを深く知ろうとすると、今つかっている湯がどんな個性をもつ湯なのか、だんだんと見えてくる。それが湯浴みの楽しみである。

もちろん、これは温泉マニアならではの楽しみ方である。湯と対話をする必要はない。リラックスして湯に身を預ける。それだけで十分に充実した時間となるはずだ。 

ポイントは五感を全開にすること。外の景色や温泉の流れる音、湯の香りや味、肌触りなどに意識を向ける。そうすると、一時的に日常から距離を置き、目の前の湯と向き合うことができる。

他の入浴客の会話に聞き耳を立てる

また、湯船につかっていると、他の入浴客同士の会話が耳に入ってくることも多い。温泉に入っているときは、何もすることがないから、話の内容によっては興味を引かれ、自然と聞き耳を立ててしまうことがある。

ある温泉にひとりで出かけたときのこと。開放感抜群の大きな露天風呂で、若者2人が仲良さげに話していた。会話の内容から大学の先輩・後輩で、理系の研究室に所属しているようだ。後輩が突然クイズを先輩に出題し始めた。

「ミネラルウォーターの水は雑菌が取り除かれているので腐らない。それなのに賞味期限があります。なぜでしょうか?」

「腐らないとはいえ、経年劣化で品質が落ちるから?」と先輩。

「違います」と後輩。

その後も、先輩はいくつかその理由を答えるが、いずれも不正解。私も自分なりの答えを心の中で用意した。私も会話にまざりたい衝動にかられるが、さすがに迷惑だろう。

数分後、先輩がギブアップすると、後輩は答えを発表した。「内容量が変わってしまうからです。ペットボトル容器は通気性があるので、ちょっとずつ水分が蒸発して中身が少なくなってしまう。記載された内容量と違うと法律に引っかかるんです」。なるほど。思いがけず勉強になり、得をした気分になった。

また、別の温泉の休憩室では、老夫婦のこんな会話が耳に入った。

「今日は人が少なかったな」とおじいさん。

「そうね。人がいなくてお湯が寂しそうだったよ。こんなにたくさん頑張って湧き出しているのに」とおばあさん。

老夫婦のかわいらしい会話に、心がほっこりさせられた。

ただ入浴客の会話を盗み聞きしていただけの話であるが、温泉で心がリラックスしていると、どこの誰だかわからない人の他愛もない会話を聞くのさえ楽しいのである。

大事なのは、湯船では目の前の湯に身を預けること。それにより、ストレスフルな日常から解放され、心も体もリラックスできるはずだ。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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