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五郎丸歩のトップリーグ開幕、通算1000得点でスタート。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
試合後の五郎丸。次節は「満員に」。(写真:築田純/アフロスポーツ)

ラグビー日本代表の五郎丸歩が、11月14日、国内最高峰トップリーグの開幕節に挑んだ。通常の2倍以上の警備員、約5倍の高校生ボランティアが配置された愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で、ヤマハのフルバックとしてフル出場。前半9分のコンバージョンゴール成功によって、リーグ戦通算1000得点をマークした。トヨタ自動車に18-11で勝利した。

今年9、10月のワールドカップイングランド大会では予選プールで3勝した。両手を胸の前に合わせるしぐさでのゴールキックが話題となり、帰国後は数多くのテレビ番組に出演していた。

雨天に見舞われたこの試合は「8676人」の公式入場者を集めた。同スタジアムでのラグビーのゲームとしては史上最多の観客数を記録したが、13日の開幕戦(パナソニック対サントリー/東京・秩父宮ラグビー場)に続き、前売り券が完売しながら空席のあるゲームとなった。

以下、五郎丸の試合後の公式会見での一問一答。

――ワールドカップ前といまの変化。

「お客さんの数が圧倒的に増えた。まだまだ満員には至りませんでしたが、選手達は最大のパフォーマンスを出せた」

――何かを残せたか。

「ワールドカップの時は(ファンは)映像を通じて(の観戦)。音が聞こえなかったと思います。今回はスタジアム。人と人がぶつかる音、倒れている人が立って仲間のために身体を張る姿…。そういうものを感じていただけたと思います」

――通算1000得点。

「チームが僕にチャンスをくれたなかで8年間、積み上げてきたもの。僕というより、ヤマハラグビー部のタイトルだと思います」

――ラグビーを広めるためにさまざまなメディアに出ていた。それは今後。

「皆さんの前に立つ機会があれば、時間の許す限り対応はさせていただきます。ただ、僕はプレーヤー。グラウンドのなかでしっかりとパフォーマンスを出せるようにしたい。その辺のバランスを考えながらやっていきたい」

――大歓声のなか。

「非常に嬉しかったですね。子どもたちの声もあって。これから(ゴールキックを)外せないプレッシャーが(より)あると思いますが、それも楽しみながら、皆さんに何かを感じていただけたらと思います」

――意識の変化。

「ワールドカップで出せたパフォーマンスを皆さんの前で出すだけだった。そこに何かプラスアルファを加えるということはありません」

――前半9分のゴールキックを捕球したのは小学校6年生の男子で、「五郎丸選手になりたい」と話していた。同じ思いを持つ全国の少年にアドバイスを。

「(苦笑)どうですかね。僕も小さい頃はラグビー選手になりたいと思っていなかった。ただ、目の前に与えられたことへチャレンジし続けた結果、このようなトップリーグの舞台や素晴らしいメンバー(チームメイト)に恵まれています。日々の積み重ねが大事だと思います」

――観客席について。

「もっと観に来たいという方が足を運べる環境になって、選手もファンもハッピーな形で試合を迎えられたら」

――ゴールキック以外での見どころは。

「雨の日のラグビーの戦術としては、エリアを取ることがセオリーになってきます。ロングキックでフォワードを前に出す。観ているお客さんにとっては面白くなかったかもしれないですが、勝つことが我々の目標。フォワードを、前に出せたと思います」

――前半6分、この日最初のコンバージョンは外したが。

「後ろで(自身が心のなかで唱えている)ドレミファソラシドって言っているおじさんがいましたが(場内、笑い声が響く)」

――蹴りづらさは特になく。

「そうですね。外す時は外しますし」

――試合前にジャージィを受け取る際。

「試合前にジャージィをもらって1人ずつコメントをするのですが、『今日は僕の1000得点の日。大切な日。それにあたっては、フォワードがスクラムやモールでトライをした後に僕がキックを蹴りたい。それがヤマハスタイルです。お願いします』という話をしたら、長谷川慎コーチ(元日本代表プロップ、国内随一の強さを誇るヤマハのスクラムは、この人の理論が礎)が『震えた』と(場内、笑い声が響く)。和やかな雰囲気で進みました」

――21日、豊田自動織機との次戦はホームグラウンドの静岡・ヤマハスタジアムでおこなわれる。

「ヤマハスタジアムは、まだラグビーの試合で満員になったことはないんですね。まずは空いている席がないぐらいびっしり埋まって、(チームカラーの)青一色のなかで試合したい」

――1000得点を決めた時に特別な気持ちは。

「ないですね。淡々と蹴ってました」

――ワールドカップとトップリーグの違い。

「エディー・ジョーンズさん(前日本代表ヘッドコーチ)がよく言っていたのは『日本と世界ではゲームのスピードが違う』ということ。走る距離、ボールが動く速さが違うと常々言っていました。それは改めて(感じた)。雨ということもあると思いますが、スローだったかもしれないですね」

――(当方質問)コンディション調整の難しさは。

「コンディションを整えるうえでの難しさはなかったです。メディアさんに出していただくことと練習のバランス。そこについてチームの皆にサポートしてもらっている。感謝したいですね」

――(当方質問)日本代表の選手としてトップリーグを戦うが。

「チームが変われば目標も変わる。それでも自分がベストパフォーマンスを出さなければならないことは変わらない。しっかり練習して、自分のベストパフォーマンスを出せれば」

――キックを蹴る際にフラッシュが焚かれたり。集中への難しさが。

「(日本代表の欧州遠征で出かけた)ジョージアでは目にレーザーを当てられたこともあるので、フラッシュなんてかわいいものです」

――試合を振り返って。一時、追い上げられたが。

「開幕は特別なものです。気持ちが高ぶり過ぎてコントロールできない部分も出てくる。そのなかで勝てたのが大きい。課題はたくさん上がったと思う。1つひとつ調整して次に臨みたいです」

――自身の課題。

「ネガティブなことを言ってもしょうがない。全体的にはよかった」

――トライに繋がったランもあったが。

「結果的によかったと思います」

――1000得点を受け、次に目指すものは。

「あまりないですね。目の前の1試合、1試合に自分のパフォーマンスを出すことです」

――体重は。

「イングランドへ行って少し落ちて、こちらで少し戻った。プラスマイナスゼロですね。…(笑みを浮かべ)トンカツ分、ですかね(帰国後のバラエティー番組で食べた)。あまり(これ以上)増やす必要はないかなと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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