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【現地レポート】韓国便の制限開始直前の関西空港・福岡空港。福岡と韓国は一時的に近くて遠い国になった

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
出発便が多い時間帯にも関わらず閑散状態の福岡空港国際線ターミナル(3月7日撮影)

 3月9日(月)午前0時以降、韓国からの航空便は成田空港・関西空港の2つの空港のみに制限された。9日以降、日本人が韓国へ向かう場合、韓国人が日本へ向かう場合において双方においてノービザ(査証免除)での入国が認められず、発給済みのビザも原則無効となった。加えて日本入国後は指定場所(日本人は自宅、外国人はホテルを原則とする)で2週間の待機となると共に、国内の公共交通機関を利用しないように要請した。

日本~韓国路線は、成田・関空のみで1日3~4便程度

 3月9日以降、日本~韓国便で運航予定の便は、大韓航空の成田~ソウル(仁川)線の1往復、チェジュ航空の成田~ソウル(仁川)線の1往復、関西~ソウル(仁川)線の1往復、JALの成田~釜山線の週4往復のみとなる予定だ(9日の日本発は韓国系航空会社の折り返し便の関係で一部便が運航)。また、JALは東京とソウルの間の移動手段確保を目的に3月10日・12日・14日の3日間、成田~ソウル(仁川)線で臨時便を運航する計画となっている。ANAは3月11日まで、JALは3月14日までの羽田~ソウル(金浦)線の運休を発表済みであるが、それ以降については追って発表するとしている。

 日本政府による韓国からの入国制限については、3月5日(木)の午後に発表されたことから、両国を行き来する人は慌ただしい動きとなった。規制が開始される前に移動できるのは6日(金)・7日(土)・8日(日)の3日間のみとなり、慌てて航空券を手配する動きとなった。航空各社の関係者の話を総合すると、8日(日)の便の予約が急激に増え、次いで7日(土)の便の予約も直前で入ってきたそうだ。当初は搭乗率1~2割程度しか予約が入っていなかった便に8~9割の予約率に急上昇したケースもあったそうだ。

土曜日の関西空港の様子

 筆者は7日(土)と8日(月)の両日、関西空港、福岡空港の2空港を現地取材した。まず、3月7日(土)の午前中に関西空港第1ターミナルの韓国路線のチェックインカウンターへ向かった。日系航空会社はピーチのみであり、第1ターミナルは、チェジュ航空を除いた韓国系航空会社の便が発着している。韓国行きの便のチェックインをしている光景を取材したが、行列にはなっていないが、ある程度の利用者が手続きを済ませていた。関西空港では欧米路線や東南アジア路線の運航が継続されており、通常に比べると人の数は少ないが、閑古鳥が鳴くほどの人の少なさではなく、一定数の国際線利用者の姿を見ることができたが、中国人や韓国人の利用が多い、お土産店やレストランなどは閑散としていた。

ティーウェイ航空チェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
ティーウェイ航空チェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
エアプサン、チェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
エアプサン、チェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
アシアナ航空チェックインカウンター。アシアナ航空は日本~韓国路線を全便運休する(3月7日、筆者撮影)
アシアナ航空チェックインカウンター。アシアナ航空は日本~韓国路線を全便運休する(3月7日、筆者撮影)
チェジュ航空のチェックインカウンター。チェジュ航空はピーチと同じ第2ターミナルから発着している(3月7日午前、筆者撮影)
チェジュ航空のチェックインカウンター。チェジュ航空はピーチと同じ第2ターミナルから発着している(3月7日午前、筆者撮影)
2019年4月に運航を開始したブリティッシュ・エアウェイズのロンドン行きチェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
2019年4月に運航を開始したブリティッシュ・エアウェイズのロンドン行きチェックインカウンター(3月7日午前、筆者撮影)
第1ターミナルは普段よりは人はかなり少ないが、ある程度の利用者が見られた(3月7日午前、筆者撮影)
第1ターミナルは普段よりは人はかなり少ないが、ある程度の利用者が見られた(3月7日午前、筆者撮影)
お土産店やレストランなどは、チェックインカウンター以上に閑散としていた(3月7日、筆者撮影)
お土産店やレストランなどは、チェックインカウンター以上に閑散としていた(3月7日、筆者撮影)
第1ターミナルの到着ロビー(3月7日午前、筆者撮影)
第1ターミナルの到着ロビー(3月7日午前、筆者撮影)

 関西空港からは、大韓航空、アシアナ航空、チェジュ航空、イースター航空、エアプサン、エアソウル、ティーウェイ航空などの韓国系航空会社が就航していたが、3月9日以降は、冒頭でも触れた通り、チェジュ航空が夜に関西空港を出発するソウル(仁川)行きの1便のみの運航となった。

 関西空港を運営する関西エアポートが3月2日に発表したデータによると、国際線全体1422便のうち半分強の726便を欠航している。今週から韓国便のほとんどが欠航となり、その他の路線でも欠航が出ることから、筆者の計算では国際線全体の7割前後の便が欠航となり、更に空港が閑散することになるだろう。

福岡空港は韓国線完全運休で近くて遠い国になる

 続いて筆者は、7日(土)の夕方及び8日(日)の朝、福岡空港国際線ターミナルへ向かった。福岡空港国際線ターミナルでは、午前中と夕方~夜にかけて福岡空港から韓国へ向かう多くの便が運航されている。既に半分近い便が欠航になっているが、運航されている便は、関西空港同様に制限がかかる直前に日本を出国したい利用者がチェックインをしていた。

 既にほとんどの便が欠航している中国路線と韓国路線の運航比率が高く、7日(土)の夕方、8日(日)の朝ともに空港ターミナル内は、関西空港と比べても圧倒的に人が少なかった。東南アジア便、ホノルル便などは運航されているが、明らかに異変を感じるくらい人が少ない状況だった。

福岡空港国際線ターミナルのチェックインカウンター(3月7日夜、筆者撮影)
福岡空港国際線ターミナルのチェックインカウンター(3月7日夜、筆者撮影)
福岡空港の出発案内ボード。規制前の7日の夕方でも多くの便が欠航していた(3月7日夜、筆者撮影)
福岡空港の出発案内ボード。規制前の7日の夕方でも多くの便が欠航していた(3月7日夜、筆者撮影)
チェジュ航空のチェックインカウンター(3月8日朝、筆者撮影)
チェジュ航空のチェックインカウンター(3月8日朝、筆者撮影)
出発準備中のチェジュ航空。最終日のこの日、福岡からソウル行きとグアム行きが運航されていた(3月8日朝、福岡空港国際線展望デッキから筆者撮影)
出発準備中のチェジュ航空。最終日のこの日、福岡からソウル行きとグアム行きが運航されていた(3月8日朝、福岡空港国際線展望デッキから筆者撮影)
出発準備中の大韓航空系LCCのジンエアー、ソウル行き(3月8日朝、筆者撮影)
出発準備中の大韓航空系LCCのジンエアー、ソウル行き(3月8日朝、筆者撮影)

 まさにアジア路線の依存度が高い福岡空港であり、今後少なくても3月9日~3月末までは韓国便は成田・関西のみの発着しか許可されないことから福岡空港発着の韓国便全便が運休となる。またJR九州が運航する高速船「ビートル」も9日以降は運休となったことから、福岡から韓国への交通アクセスは完全に分断される。飛行機で福岡から釜山までは実際の飛行時間は約35分、ソウルへも1時間弱となっているが、制限が解除されるまでは、入国自体も難しい状況であるが、福岡からソウルへ移動する場合には、関西空港もしくは成田空港経由となり、距離は至近距離なのに、福岡と韓国の間は近くて遠い国になってしまった。

物流面の心配も

 今後心配されるのが便数の大幅減と船舶での往来ができなくなることから、両国間の貨物(物流)にも大きな影響が出ることになる。当面、人の往来は原則なくなることになるが、両国間の物流をどうするのかについても考えなければならないだろう。新型コロナウイルスが沈静化し、1日も早く通常運航に戻ることを願うばかりだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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