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【福田次官辞意表明】 財務省事務次官がいきなり辞めるその背景

安積明子政治ジャーナリスト
財務省は福田次官を斬り捨てたのか(写真:ロイター/アフロ)

辞意表明は不本意?

 女性記者にセクハラ発言をしていたという疑惑を週刊新潮に報じられた財務省の福田淳一事務次官が4月18日夜、辞意を表明。そしてさっそく財務省で取材に応じている。

「週刊誌に掲載された私の記事については事実と異なるものと考えており、裁判で争っていきたいと考えている」「財務事務次官として職責を果たしていくのは困難な状況になっているので、辞任を申し入れた」

 要するに福田次官は、セクハラ発言を否定しつつ辞任するというのだが、その言い分がなんともすっきりしないのだ。記者に囲まれたその表情にも、不満が如実に現れていた。

18日に事情が重なるタイミング

 それにしても辞任がなぜこのタイミングなのか。その理由のひとつが4月20日にワシントンDCで開かれるG20財務大臣・中央銀行総裁会議だ。

 国会開会中の大臣の外遊は国会の了承を得るのが通例だが、野党が森友学園問題や加計学園問題、そしてこの福田次官のセクハラ発言問題を理由に反対していた。だが3月のG20に欠席せざるをえなかった麻生財務相にすれば、今回はなんとしても出席したい。しかも2019年には大阪でG20が開かれ、日本が議長国となる。そこで野党の反対を押し切り、政府の判断の下でG20に参加することになった。

 財務大臣が外遊する間、次官の人事を変えることは不可能だが、それでは政局がますます混乱してしまうが、それをなんとか防止しなくてはいけない。そこで麻生財務相の外遊前の更迭ということになったという。

 また18日午後、女子大生との交際を週刊文春で報じられた米山隆一新潟県知事が辞任を表明したことも、福田次官の辞任と関係していたのではなかったか。米山知事は独身だが、女子大生との間で金銭のやりとりがあったことで、本人も「違法」に当たる可能性を認めた。若い女性との間のトラブルという点で、福田次官と米山知事のケースは似ているように見える。自民党寄りではない米山知事が辞任しながら、福田次官が残留ということでは、財務省への風当たりがますます強くなる危険がある。

 おそらくはこうした事情が複合して、福田次官は18日に辞意を表明することになったのだろう。また福田次官と同期入省で、今年3月に懲戒処分を受けた上で国税庁長官を辞任せざるをえなかった佐川宣寿氏との“バランス”も考慮されたのではないか。いち早く財務省が切り捨てたように見えた佐川氏に対し、福田次官の場合は表向きでは公平さを装いつつも財務省の顧問弁護士事務所が付き、優遇されていたようだった。

テレビ朝日の会見で窮地に

 なお“被害者”である女性記者については、テレビ朝日が自社の経済部所属の記者であることを明らかにした。19日未明に会見して経緯を説明するとともに、財務省に対して抗議することも表明した。もっともテレビ朝日については、女性記者が以前から“被害”を訴えていたにもかかわらず放置していた責任は否定できないだろう。しかしこれで“被害”と“被害者”が明らかになり、福田次官が言い逃れを続けることは難しそうだ。

 官僚中の官僚である財務省事務次官の首を飛ばした前代未聞のセクハラ問題。これが氷山の一角ではないと誰が言えようか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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