藤井聡太七段連覇なるか――朝日杯準決勝・決勝の展望
朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞主催)は2月16日に準決勝、決勝が行われる。
昨年優勝した藤井聡太七段(16)はベスト4進出を決めており連覇の期待がかかる。対戦相手とデータから戦型と優勝の可能性を予想してみた。(対局結果は2月13日現在・未放映のテレビ棋戦を除く)
準決勝は藤井七段有利のデータ
藤井七段の準決勝の相手は行方尚史八段(45)。最近では珍しく将棋AIによる研究を重要視しない、昔気質の棋士である。
<藤井七段の最近10局>
12月18日
対門倉啓太五段 順位戦C1 ○
12月25日
対大石直嗣七段 棋聖戦 ○
12月28日
対村田顕弘六段 棋王戦 ○
1月8日
対富岡英作八段 順位戦C1 ○
1月20日
対稲葉陽八段 朝日杯 ○
対糸谷哲郎八段 朝日杯 ○
1月24日
対村田智弘六段 竜王戦4組 ○
1月30日
対中村亮介六段 棋王戦 ○
2月5日
対近藤誠也五段 順位戦C1 ●
2月12日
対池永天志四段 王将戦 ○
<行方八段の最近10局>
11月22日
対谷川浩司九段 順位戦B1 ○
11月28日
対佐々木慎六段 朝日杯 ○
対近藤誠也五段 朝日杯 ○
12月13日
対畠山鎮七段 順位戦B1 ●
12月19日
対橋本崇戴八段 棋聖戦 ●
12月25日
対菅井竜也七段 叡王戦 ●
1月10日
対斎藤慎太郎王座 順位戦B1 ●
1月19日
対菅井竜也七段 朝日杯 ○
対久保利明王将 朝日杯 ○
1月31日
対鈴木大介九段 王座戦 ●
成績が示すとおり藤井七段9勝1敗、行方八段5勝5敗と調子に差があり、朝日杯で稲葉八段、糸谷八段のA級棋士を圧倒した藤井七段に分があると思われる。
ただし藤井七段の直近2局、対近藤五段戦は接戦で競り負け、対池永四段戦は苦しい将棋を終盤相手のミスに救われての逆転勝ちと内容に不安材料もある。
渡辺棋王が最大の壁か
もし藤井七段が決勝に進んだとした場合の相手は渡辺明棋王(34)か千田翔太六段(24)だが、どちらも難敵だ。
<渡辺棋王の最近10局>
1月7日
対斎藤慎太郎王座 叡王戦 ○
1月10日
対畠山鎮七段 順位戦B1 ○
1月13、14日
対久保利明王将 王将戦第1局 ○
1月24日
対佐藤康光九段 朝日杯 ○
対深浦康市九段 朝日杯 ○
1月26、27日
対久保利明王将 王将戦第2局 ○
1月29日
対菅井竜也七段 叡王戦 ●
2月2日
対広瀬章人竜王 棋王戦第1局 ○
2月6、7日
対久保利明王将 王将戦第3局 ○
2月10日
対広瀬章人竜王 棋王戦第2局 ○
<千田六段の最近10局>
12月21日
対郷田真隆九段 朝日杯 ○
12月28日
対石田直裕五段 棋王戦 ●
1月11日
対飯島栄治七段 王将戦 ○
1月16日
対藤井猛九段 順位戦B2 ○
1月24日
対山崎隆之八段 王位戦 ○
1月28日
対羽生善治九段 朝日杯 ○
対渡辺大夢五段 朝日杯 ○
1月29日
対佐々木大地四段 棋聖戦 ●
2月6日
対中村修九段 順位戦B2 ○
2月12日
対高見泰地叡王 竜王戦4組 ●
上記のように渡辺棋王はタイトル戦の番勝負5連勝を含む9勝1敗と絶好調、千田六段は7勝3敗と順調。
予想される戦型は4人とも居飛車党なので最近のデータからは準決勝、決勝いずれも角換わりの最新形に進む可能性が高い。
2年ほど前に大流行した雁木は相手の研究を外す変化球として10~20パーセント程度の出現率、最近めっきり少なくなった矢倉模様の将棋になるとすれば行方八段が先手番の時と思われる。
この棋戦は持ち時間40分の短期決戦ということもあって、序盤から中盤の入り口、仕掛けの前後でじっくり時間を使うことはほぼ不可能だ。どこまで深く各棋士の研究が進んでいるかが勝負を左右するだろう。