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白キャン解散直前インタビュー:橋本美桜「最終回を見ないと後悔するから見に来たほうがいい」

宗像明将音楽評論家
橋本美桜(株式会社PLAYYTE提供)

7人組アイドル・グループの真っ白なキャンバス(通称:白キャン)が、2024年11月4日に幕張メッセ幕張イベントホールで解散ライヴ「明日も変わらない1日を」を開催し、7年間の活動に終止符を打つ。

解散ライヴに向けての7人の個別インタビューの5人目は橋本美桜。この取材には、前日のライヴと特典会で解散を意識して喉を使いすぎ、声が枯れた状態ながらも応じてくれた。橋本美桜はドラマの最終回を見られないタイプだというが、それでも白キャンの解散ライヴは見たほうがいいと言い切る理由とは。

できるだけ楽しくいよう

――解散が決まってから、ライヴや特典会で変わったところはありますか?

橋本美桜 「この人にとっては最後なのかも」ってめっちゃ思ってしゃべるようになって、ファンの人と話してると泣きそうになります。11月4日に会える人もいるんだけど、その後の特典会は日程が合わない人もいるし、「しゃべれるのは今日が最後かもしれない」「白キャンのライヴはここで見るのが最後かも」っていう人もいるから、できる限り歌いたいなって思ってたら、めっちゃ声が潰れました(笑)。

――今、声が枯れてるのは、喉を酷使してしまったからだと。

橋本美桜 そうかもしれない(笑)。

――白キャン最後の日々はどう過ごしてるんですか?

橋本美桜 本当に泣いても笑っても最後っていうか。自分たちで決めたことでもあるけど、白キャンが日常化しちゃってるから、解散後があんまり想像つかなくて。メンバーと次の日に会ってないとか想像できてないけど、「ひとつのことでめっちゃ悩んでる時間が無駄だな」って思えてくることが増えて、できるだけ楽しくいよう、って思ってます。

2024年10月14日なんばhatch公演の橋本美桜(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の橋本美桜(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

戻るか辞めるかの二択だった

――白キャンの活動で、嬉しかった思い出や楽しかった思い出はあります?

橋本美桜 むずいな。自分は「最後」っていう決まりがある今の時期も楽しいし、生誕は、ちょっとつらい生誕もあったっちゃあったけど、基本的に全部楽しかったです。

――つらい生誕祭っていうと、5DAYS(2021年7月21日~25日『5DAYS 連続ライブ「Be the IDOL」』)最終日の生誕祭とか?

橋本美桜 普通に頭がパンパンすぎて、「なんでここにいるんだろう?」って思いました(笑)。

――印象深い生誕祭ってあります?

橋本美桜 最後の1個前(2023年7月27日)かな。2019年の生誕で歌ったまねきケチャさんの「きみわずらい」のリベンジの回。解散をちょっと意識してたのかな。毎回生誕のときは「どこが最後になってもいいように」って思ってるんですけど、それが一層強くて、最後の生誕じゃないことは確定してたかもしれないけど、「次が最後かも」って思ったときに、「やりたいこと全部やっとこう」って思って。2019年からの自分がファンの人の中でも蘇るかもしれないし、映像を残してもらってるから、後で振り返れるじゃないですか。だから見てもらえたらいいな、って思って「きみわずらい」を歌いました。

――逆に後悔はありますか?

橋本美桜 みんなに「休んだほうがいいんじゃない?」って言われた時期にちゃんと休まないで続けて、けっこう長く休んだことじゃないですか?

――2023年の秋に一度休んで、2024年の頭から3か月ほど休んだ時期のことですね。

橋本美桜 最初は「自分がただ単に成長できてないな」って思ってただけだったんですけど、年末に思いっきりぶっ潰れて、「これ本当にダメだったんだ」って。

――2023年12月に一度復帰したときはどんな感覚でした?

橋本美桜 焦燥感がすごかったんです、「解散発表までにいないと」みたいな。でも、その1か月のことを覚えてなくて、やばいですよね(笑)。

――その後の3か月の休みの間は何をしていたのか聞いていいですか?

橋本美桜 本当に何もしなくて(笑)、部屋からも出てないんです。外に出たのが、レオくん(橋本家の飼い犬、2023年12月に亡くなった)のお墓参りと、おみくじを引きに行ったことぐらいで、本当にどこも行ってなくて。でも、急に気持ちがパンッて切り替わるタイミングがあって、青木(勇斗/プロデューサー)さんに「今後のことを話したいです」って連絡したんです。

――そこから全国ツアー(2024年4月7日~6月28日『真っ白なキャンバス全国ツアー 2024「私とわたし」』)が始まるわけですね。

橋本美桜 本当にパンッて切り替わったから、「ファンの人を楽しませなきゃ」しか思ってないかも。私が休んでる期間に、ウワーッてなってたファンの人もいて、休止中に「自分、そのためにやってたわけじゃないよな」って思って戻ったんです。本当に戻るか辞めるかの二択で、「また休んじゃいそうだな」っていう自分がちょっとでも見えたら、戻るのはやめようって思ってました。

――今はもう大丈夫?

橋本美桜 全然平気です。ファンの人に「躁状態なんじゃね?」って言われて(笑)。しかも猫を飼っちゃって、本当に躁状態の人みたいになってるけど、私的には鬱の気持ちもあるっちゃあるから、たぶん大丈夫(笑)。

――全国ツアーから白キャンに戻ったときはどんな感覚でしたか?

橋本美桜 「これが自分だ」って思いました。「前の自分は、本当の自分じゃなかったんだな」って。自分は自分なんだけど、「あれっ、本当にやばかったんだな」って自覚ができました。

――最近、猫のルナちゃんを飼うことにしたのはどういう経緯だったんですか?

橋本美桜 生きる目的がないと生きていけないと思ったからだし、たぶん働く意思がないから(笑)、自分で飼った子なので責任を持たなきゃいけないな、っていうのはあります。白キャンが終わる前に、ちょっと落ち着いてる時期に何か考えておこう、って思って。

2024年10月14日なんばhatch公演の橋本美桜(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の橋本美桜(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

白キャン最後の空気感を見ないと惜しくね?

――解散ライヴが幕張イベントホールだと聞いたときはどう思いましたか?

橋本美桜 「幕張、できるんだ」とは思いました。

――それは、やりたかったから?

橋本美桜 白キャンで目標だと言ってたのにやらないで終わるのは、ファンの人からしたらすごい悲しいだろうし、「諦めの解散」だと思われちゃうのも良くないし、「最後は目標に届いたよ」っていうのを見せれたらいいなって思ってたんで、一応やりたさはありました。でも、最初は「大丈夫かな」とは思ったんです。けっこう緊張しいなので、「大丈夫か? ちゃんと堂々と立てるか?」ってめっちゃ思います。

――以前インタビューしたときに、幕張にソロでも立てるようになりたいと言ってましたね。

橋本美桜 言った(笑)。「みんながソロができるようになったら立てるとき」みたいなこと言いました。生誕でみんなソロをやり終わったから、その状態ではある(笑)。

――橋本さんも幕張でソロをやりたいんじゃないですか?

橋本美桜 違います、やりたくないです(笑)。私は7人でやるライヴが好きですよ(笑)。

――なんで急に守りに入るんですか(笑)。

橋本美桜 怖い(笑)。

――7人で立つとしても怖い部分はあります?

橋本美桜 7人で立つからこそ、全員にとって白キャンの最後の思い出になるじゃないですか。自分の一瞬のミスが、人の思い出として思いっきり残るし、集中力が切れる瞬間になるから、嫌だなと思って。そう考えたときに、私は振りを飛ばすことがけっこうあるので(笑)、ちょっと怖いかな、って。「白キャン、最後か……」ってしんみりきてたところで、私が豪快にミスったら、さすがにちょっと冷めるのかな、って。

――「こういう振りです」っていう顔をしては?

橋本美桜 それができなくて「やべ」って言っちゃうんですよ(笑)。

――あはは。そんな心配もありつつ、解散ライヴはどんなものにしたいと思いますか?

橋本美桜 もうラストだけど、「また見たいな」って思ってほしい自分がいて。「白キャンの最後を見れて良かったな、これですっきり終われる」って思ってほしい自分もいるんですけど、最近「なんでこんなにいいライヴをするグループが解散しなきゃいけないんだ」みたいなことを言ってくれる方がいて、自分たちで決めたけど、やっぱり惜しまれてたいっていう気持ちってあるんだな、って思いました。

――逆に言うと、今惜しまれてるのが、ちょっと嬉しい?

橋本美桜 嬉しいですね(笑)。

――人に惜しまれるライヴってどういうものでしょうね?

橋本美桜 歌詞や振りが飛ぶのって、もう一回ライヴがあるって思ってる人のミスなのかな、って。こう言ってミスをしたらマジで笑えないんですけど(笑)、そういう油断を一回も見せなかったら勝ちなのかなとは思います。集中力は、ゾーンに入ったらマジ強いんで(笑)。

――幕張のステージに立ったとき、どんな気持ちになると思いますか?

橋本美桜 えー、わかんないな。私も感極まりそうになることが多いんですけど、特にもらい泣きしそうだから、「わー、きついなー」って思っちゃいそう。自分が泣かないでやりたい、あずちゃ(小野寺梓)はSEから泣いてるだろうし(笑)。開演前の円陣で、もう寂しいと思う。

――解散ライヴを見に来るか迷っている人に何か言葉をかけるなら、どんなことでしょう?

橋本美桜 私、ドラマが終わっちゃうのが嫌で、最終回を見れないタイプなんですよ。「来てもらったら確実にいいライヴを見せる」っていう自信は、自分たちの中にあるんですけど、「こういう性格の人もいるよな」って思ったら、無理にとは言えない(笑)。でも、来てほしいですよ、来てほしいけど、無理やり引っ張って連れてくるみたいなのはしないかな。

――最終回を見ないまま、白キャンを心の中にしまいたい人もいるかもしれないと?

橋本美桜 でも、後悔すると思うから見に来たほうがいいと思う(笑)。私、サブスクで最終回を見れなくなったときに後悔しはじめる人なんで。ないとは思うけど、白キャンのYouTube公式や宗像さんの撮った動画が全部消えたとき、ラストライヴが自分の記憶に何も残ってないのは、「けっこう寂しくない?」と思います。

――見に来いよ、と。

橋本美桜 見に来い、ではありますよ(笑)。「最後の対バン」や「最後の会場」はやってきたけど、「本当に白キャン最後」っていうのはやったことがないから、メンバー全員の初めて見る空気感が見れると思います。って考えたときに、「見ないと惜しくね?」と思います(笑)。

――どんな空気感になるんでしょうね?

橋本美桜 最後はみんな泣いて歌えてなさそうすぎる(笑)。ファンの人も泣いてるし、自分たちも泣いてるしみたいな……大丈夫かな(笑)。でも、「最後を見たくない」っていう気持ちを変える自信はある。私、結婚式に興味がなかったんですよ、自分は感動しないと思ってて。でも、一番仲いい子が結婚するときに見に行ったら、「結婚式バカいい」と思って、「誰か早く結婚しないかな」と思ったんです(笑)。だから、「解散ライヴは見たくない、どうせ寂しいだけじゃん」って思ってる人を、「最後をちゃんと見届けたくなる人」にしたいです。

真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)
真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)

真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』

2024年11月4日(月・祝)

幕張メッセ 幕張イベントホール

開場:17:30 / 開演:18:30

https://shirokyan.com/news/3632/

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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