前統一王者ロマチェンコが中谷正義に照準 激戦のライト級サバイバルマッチ
ボクシング世界3階級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の復帰戦が決まり、その対戦者候補に日本人ボクサーの中谷正義(31=帝拳)の名前が挙がっている。
ロマチェンコをサポートするアメリカ大手トップランク社のCEOのボブ・アラムがボクシング専門メディアで語ったと報道されている。
ロマチェンコは昨年10月にライト級4団体統一戦でテオフィモ・ロペス(アメリカ)に判定で敗れて以来の再起戦となる。
ワシル・ロマチェンコとは
ロマチェンコは史上最高傑作と呼ばれるボクサーだ。
アマチュアボクシング最高峰のオリンピックで2度の金メダルを獲得し、プロデビュー。プロ入りから僅か3戦目で世界タイトルを獲得し、史上最速で3階級制覇を達成している。
全階級で最強のボクサーを決めるパウンドフォーパウンドランキングでも度々1位にランクされるなど世界での評価も高い。
サウスポースタイルで繰り出す変幻自在のボクシングで強敵をマットに沈めてきた。ハイレベルな攻防から「ハイテク」の愛称で呼ばれ、現役ボクサーでも手本にしている選手が多い。
あまりの強さに対戦相手が戦意喪失して、「ノーマス(もうたくさんだ)」と試合放棄することから「ノーマスチェンコ」とも呼ばれている。
アメリカで評価が高い中谷
そんなロマチェンコの対戦者候補として名前が挙がっているのが帝拳ジム所属の中谷正義だ。
2019年7月IBF世界ライト級王座挑戦者決定戦でロマチェンコに勝利したロペスと対戦し3-0の判定で敗れている。
負けはしたが、ロペスが最も苦戦した試合と言われ、海外で注目を集めるきっかけになった。
そのロペスがロマチェンコに勝利したことで中谷への注目度が更に増している。ロペス戦後、中谷は一時期引退していたが昨年アメリカで再起を果たした。
強打のフェリックス・ベルデホタ(プエルトリコ)対戦し、1回と4回に2度のダウンを奪われるも9回に大逆転TKO勝ちを収めた。
その試合が評価されロマチェンコの対戦候補に名前が挙がったようだ。
現在の世界ランキングはWBC7位、IBF10位、WBO5位にランクされている。
激戦のライト級
まだ正式決定ではないが、対戦が実現すればアメリカでも注目を集めるカードになるだろう。
ロマチェンコも自身のSNSに中谷との写真を投稿し、ファンへどう思うか呼びかけている。
ロペスを苦しめた中谷とロペスに敗北したロマチェンコの対戦は興味深い。
ライト級は、全階級の中でも最も過熱しており以下の王者が君臨している。
本来であれば一つの階級に一人のチャンピオンが望ましいが王座が乱立している状態が続いている。これには賛否両論あるが、ボクシングビジネスが過熱している証拠だろう。
中谷がこの戦線に切り込むためには、アメリカでアピールする必要がある。
ロマチェンコは前回の試合で負けはしたが、長年王座を防衛しアメリカでも抜群の人気と知名度がある。
筆者は、2018年5月に行われたホルヘ・リナレス対ロマチェンコの戦いをアメリカで現地観戦した経験がある。
会場のマディソン・スクエア・ガーデンは2万人以上の人数が収容できる会場だが、ロマチェンコのファンが押し寄せ満員だった。
ライト級では小柄なロマチェンコが、それをカバーする多彩なテクニックで強さを証明した。
実績も名前もあるロマチェンコに勝てば、この階級の王座に近づくだろう。
ロマチェンコにとっても、アメリカで評価が高い中谷との試合は再び世界戦線に加わるためにも重要な試合になる。
両者にメリットがある試合だからこそ交渉がまとまれば対戦の実現は高い。
日本人のライト級の王者は2008年にWBA王座を獲得した小堀佑介以来出ていない。
伝統があり競技人口も多く、日本人には難しい階級と呼ばれたライト級で王座獲得に期待したい。
初夏にアメリカで観客を入れた興行を目指しているようなので続報が楽しみだ。