「渋谷ハロウィン」の狂乱とナイトタイムエコノミーの振興
昨晩は渋谷のハロウィンイベントが夜通し大盛り上がりだったようです。こういうイベントを、「斜め上」くらいの角度からバカにしてかかる「意識高い」系の市民、もしくはハナから「ケシカランもの」として批判する所謂「善良な市民」の方々も世の中には多いですが、私はこういう、皆が何も考えずに盛り上がることの出来る、おバカなイベントが大好きです。以下、報道写真より。
【写真100枚】渋谷ハロウィン最終日! 混沌に紛れた美女たちの厳選スナップ
今年の渋谷ハロウィンにあたって、報道各社はどうも月曜日となるハロウィン当日よりも、その前日、前々日の土・日の方が盛り上がるのではないか?という事で、先週末から現地入りをして待ち構えていた模様です。ところが、実はこの土日は完全に空振りに終わり、むしろ仮装している人々が寒々しい状態であったなどと漏れ聞こえていたので、個人的にはちょっと心配していました。当日の夜が非常に盛り上がったとのことでひと安心であります。
という事で、今回の渋谷ハロウィンに関して「日本の夜の経済を盛り上げること」をライフワークとし、そして研究対象としている私の立場から、是非これを機会に「知っておいて欲しいこと」をご紹介しておきたいと思います。それが「ナイトタイムエコノミー」という新しい経済概念です。
ナイトタイムエコノミーとは一般的に「9時-5時」などと呼ばれるお昼の経済活動に対して、「アフターファイブ」以降に行われる経済活動の総称。平日夜に街に集まってイベントを執り行う今回の渋谷ハロウィンなどは、まさにこのナイトタイムエコノミーの象徴とも言える事象であると言えます。
実は今年の渋谷ハロウィンの開催にあたって、渋谷区は毎年交通規制で大混乱となる渋谷駅前のスクランブル交差点を「あえて」歩行者天国化するという政策に踏み切りました。ここには、このナイトタイムエコノミーの振興に「政策」として取り組む、渋谷区による明確な行政指針があったことはあまり知られていません。
以下、東京新聞より転載。
ハロウィーンの混乱防げ 発想逆転、渋谷で車の通行規制
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016102502000276.html
三十一日のハロウィーンに向けて仮装した若者らであふれ返る東京・渋谷で、警視庁は二十八日からの四日間、混雑の状況に応じて一部の車道を歩行者に開放する。これまでは歩行者を歩道にとどめていたが、車の方を規制する「逆転の発想」。ハロウィーンの渋谷の人出が年々増える中、警視庁は今年は昨年以上の人が殺到すると予想しており、転倒事故など混乱を防ぐには車道の開放が必要と判断した。[…]
「狭い歩道は、歩けないほどの大混雑。制止を振り切って道路を横断する人もいる」。警視庁の警備担当者は、昨年のハロウィーンの渋谷の混雑ぶりをこう説明する。一方、若者らには仮装して楽しむ日として定着し、イベントとしての市場規模も拡大。地元の渋谷区は「多くの人に訪れてもらえるのはありがたい」とし、初めて仮設トイレを設置するなど受け入れ態勢を整える。
実は、渋谷区では昨年4月から長谷部区長という新しい区長が就任しました。この長谷部氏、原宿生まれの原宿育ちの44歳という歴代最若手の渋谷区長であり、政治家に転身する前は広告代理店の博報堂にお勤めであったという、いわゆる「文化畑」に非常に造詣の深い区長さんであります。以下、長谷部区長のインタビュー記事からの転載。
渋谷区長・長谷部健さんインタビュー”ソーシャル・ムーブメントのつくり方”
http://mizbering.jp/archives/19081
大きいビルができるなら、ストリートカルチャーも復活しないといけない。
――まちづくりにおいて、多様性というキーワードをどう捉えればいいのでしょうか?
この街がどうなっていくのかということをずっと考えています。どんな街がいいだろうと。僕が子どもの頃と既にこの街はぜんぜん違う。景色も違う。それは先輩方がいい感じに導いてくれたというのがあります。でも上海とかシンガポールに行ってみると、「ドラえもん」で見た21世紀の風景はあっちにありました。
確かに、東京はクールだねといわれ、僕もホームなのでシティプライドは持っているけど、このままではマズいとも思ったのです。クリエィティビティとかイノベーションとか、クールな感じをもっと突き詰めたい。ロンドン、ニューヨーク、パリ、渋谷区と呼ばれるようになるためにチャンスはあります。僕から見ていいなと思う世界の都市は、ダイバーシティ化していて、性別も世代も国籍も越えてチャンスもある。日本の都市にも、そういう時代がくる。その速度を渋谷なら速めることができると思っています。
その「街づくり」の基本的考え方に関しては、上記のインタビュー記事などをご覧いただければ一目瞭然なのですが、いわゆる不動産開発を中心とした旧来型の「街造り」の一方で、街の「文化的開発」にも同時に目を向けなければならない、というのが長谷部区長の基本的な街づくり発想です。
それが一つの政策的な形となったのが今回の渋谷ハロウィンの歩行者天国化でありますし、その他にも渋谷区では観光大使の中に「ナイトアンバサダー(夜の観光大使)」と呼ばれる特別な役職を設置し、まさにナイトタイムエコノミーの活性化に向けて政策的に取り組んでいたりもします。
渋谷区観光大使・ナイトアンバサダーにZeebraが就任
https://jp.residentadvisor.net/news.aspx?id=34428
渋谷区観光協会が新設した渋谷区観光大使・ナイトアンバサダーに、DJ/アーティストのZeebraが就任したことが明らかとなった。
4月20日、一般財団法人渋谷区観光協会は、訪日外国人の増加や改正風営法の6月の施行の動きを踏まえ、区内ナイトビジネス・カルチャーの整備・活性化を目的に、“渋谷区観光大使・ナイトアンバサダー”の役職を新設した。初代ナイトアンバサダーに任命された人気ヒップホップアーティストZeebraは、2013年に発足した団体、クラブとクラブカルチャーを守る会(以下CCCC)の会長を務めている。
すなわち今回の渋谷ハロウィンの乱痴気騒ぎにしても、実は既に「街の活性化にとって好ましいもの」として政策的に推進が行われているものであるということ。そして、このようなナイトタイムエコノミーの振興政策はこれから2020年の東京オリンピック開催に向けて、東京の各主要な繁華街、もしくはその先にある全国の各主要都市に向かって益々広がってゆくものと思います。
是非、皆さんもこれを機会に「ナイトタイムエコノミー」という新しい経済概念に関して、思いを巡らせて頂ければ幸いです。