【マラソン大会の前にエナジードリンクって飲んでいいの?】文献を元に、注意してほしいことを解説
ここ一番の頑張り時に助けてくれるエナジードリンク、コンビニでも手軽に手に入るため、お世話になっている人も多いと思います。そんなエナジードリンクは、マラソン大会でも我々の力になってくれるのでしょうか。
エナジードリンクの主な効果は、血糖値の上昇とカフェインによる覚醒効果と言われています。そのなかでランニングに影響が出るとすれば、カフェインの効果でしょう。国際スポーツ栄養学会のウルトラマラソンの栄養に関する文献では競技力向上や覚醒効果を目的として「体重70kgであればカフェイン280~420mg程度の摂取が一般的で、数時間あけて追加する場合は70~140mg程度が適切で安全」としています。
一般的なエナジードリンクは50~150mg程度のカフェインが含まれていますから、2~3本飲んでも大丈夫そうにも思えます。ですがこれは欧米人の話で、一般的な日本人には当てはまらないかもしれません。比較的新しい2022年の文献からみてみましょう。
1.研究デザイン
文献は台湾からのもので、トライアスロンのショートディスタンスにおけるカフェインを含むエナジードリンクの効果を調べたものです。
ここでは習慣的なカフェインの摂取のない12人の男子大学生の競技者に、上記図のようにカフェインを含むエナジードリンクを摂取してもらい、トライアスロンを走ってもらいました。エナジードリンクに含まれるカフェイン111mgは、おおよそ日本国内で販売されているエナジードリンクのカフェインと同程度だと思われます。
2.トライアスロンの結果
トライアスロンの結果、ぶどうジュースのみだと71分6秒±4分26秒、エナジードリンク1回摂取は70分33秒±4分20秒、エナジードリンク2回摂取は73分14秒±5分15秒でした。
この記事の冒頭では、国際スポーツ栄養学会の文献より、カフェイン280~420mgの摂取が一般的と書きました。ですがここでは、その半分に満たない111mgのカフェインではパフォーマンスが向上したものの、222mg摂取すると競技力が低下してしまいました。
3.個人別の結果をみてみると
ですが個人差はあるようです。エナジードリンクを1回摂取したところ、75%の被検者は競技力が向上しましたが、残りの被検者は低下しています。逆に2回摂取したところ25%の被検者のみ競技力が向上し、残りは低下しました。
この文献の結果から、欧米の文献で言われているような多量のカフェインはあまりよい結果をもたらさないということです。個人差はありますが、競技前にエナジードリンク1本程度摂取するのは競技力が向上する可能性が高いのですが、2本以上摂取しての上乗せ効果を期待できるのは少数ということです。
4.なぜ欧米の文献と異なるのか
この文献の考察のなかで、少量のカフェインでフォーマンスが低下してしまったのは、南アジア人のカフェインの代謝が悪いからではないかと述べられています。カフェインを代謝する肝臓にある酵素(CYP1A2)の活性には民族差があり、特に男性、若い年齢層、白人民族の場合、より高いコーヒー摂取量に耐えられるようです。この研究の被検者は、若い男性ではあるもののアジア人で、カフェイン常習者でないことから耐性が低かったものと思われます。
この研究のようにカフェインの効果にはかなり個人差があります。自身のカフェインの適量はどのくらいかは、個々みつけていく必要があります。また胃腸障害や足の攣りに悪影響ともいわれていますので、注意してお使いください。