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古い本やダンボールなどにいる、ダニと間違う茶色い虫 実は健康被害が出ることも 対策法は?

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

古い本を開いた時に、淡い茶色の小さな虫を見たことはありませんか? 1mm程度と小さいのでダニと間違われることがよくあるのですが、「チャタテムシ」という虫なのです。日本の家屋内に普通に生息していて、健康被害が出ることもある「チャタテムシ」について生息場所や生態、増やさない方法をお教えします。

チャタテムシってどんな虫?

日本では約150種が記録されていますが、家の中では「ヒラタチャタテ」という種類のチャタテムシがいちばん多く生息しています。私が飼育に携わっているのもこの種ですので、今回は「ヒラタチャタテ」についてお話しします。

ヒラタチャタテの大きさは、1~1.3mmで、透明感のある褐色をしています。全体に柔らかく、翅はないので飛べませんが、活発に動き回ります。成虫も幼虫も同じような形で、メスだけで単為生殖を行い、オスは存在しません。成虫の寿命は長く、5ヶ月以上生きているものもいます。

(※)チャタテムシを写真でご覧になりたい方はこちらから↓

チャタテムシ写真(チャタテムシ|アース害虫駆除なんでも事典)

家の中のどこにいるの?

乾燥食品を好み、保存している小麦粉や乾麺、かつお節、ビスケットなどによく発生し食品害虫に指定されています。また、食品に発生したカビも餌にしているようです。

カビを餌とするため、カビの生えている場所に大量発生することがあります。畳やそば殻の枕、ドライフラワーなどが一例です。ただ、あまりにカビが多いところには生息していません。また、薄暗い環境を好むため押入れや本棚などにもよく見られます。

見かける時期はいつ?

湿度の高い環境を好むので、梅雨から10月くらいにかけて発生することが多いのですが、暖房をかけることで結露があると湿度が高くなり、冬でも発生します。

ダニとの見分け方

ダニと間違われることが多いのですが、家の中に生息するダニは、大きさが0.2~0.5mm程度なので、なかなか肉眼では見えません。肉眼で見えてチョロチョロと活発に動き回っていれば「チャタテムシ」と判断してよいでしょう。

健康被害が出ることも

チャタテムシは、ダニと異なりアレルギーの被害は少ないと考えられていましたが、近年の研究で「ヒラタチャタテ」が新たなアレルゲンであることがわかりました。アレルギー性喘息の患者の中の2割くらいの方がヒラタチャタテ抗原に陽性を示していて、抗原吸入誘発試験においても喘息発作が誘発されると確認されています。

チャタテムシを増やさない方法

ほとんどの家のハウスダストの中からは、チャタテムシが検出されています。すべて駆除することは難しいのですが、増やさないようにするという対処方法をとることが大切です。

カビを発生させない環境を作る

チャタテムシはカビを食べるので、カビを発生させないように心がけることが効果的です。カビは高湿度を好むので、窓を開けて換気して、押入れやクローゼットなどの扉も開けて風通しをよくしましょう。除湿剤を使うのも効果的です。

画像はイメージ
画像はイメージ提供:イメージマート

掃除は小まめに行う

家の中のあらゆるところに発生するハウスダストの中には、チャタテムシの餌となるカビの胞子が多く含まれています。床の上でハウスダストを目にすることが多いと思いますが、あまり気にしない天井や照明器具、家具のすき間、洗面所などにもたまっています。小まめな掃除でハウスダストをため込まないことが予防となります。

チャタテムシが古い本に発生しているのは、本に付いているハウスダストの中のカビの胞子や菌糸を食べているためです。書籍の上のハウスダストも除去しましょう。

食品の保存方法に気を付ける

常温で保存する小麦粉や乾麺などの食品は、チャタテムシの好物です。密閉性の高い缶や瓶に入れて保存し、入り込む隙間をなくすことをお勧めします。涼しい場所を嫌うため、冷蔵庫に余裕があれば冷蔵庫での保存がいいでしょう。

ダンボールはすぐに処分

ダンボールは、湿気を帯びると餌となるカビが生えやすくなります。また体が小さく、薄暗い環境を好むチャタテムシにとってダンボールのフルート(中心紙)部分は格好の住みかとなってしまいます。

もしチャタテムシを見かけたら

チャタテムシが発生している食品は、もったいないですが処分する方がいいでしょう。スプレー剤が使えるところに発生していたら、虫駆除用のスプレー剤で対処できます。部屋の中のいろいろな場所にいる場合は、くん煙剤がいいでしょう。

また、60度では10分で死滅しますので、熱湯処理できるものは、こちらもお勧めです。

最後に…

チャタテムシは漢字では「茶立虫」と書きます。翅のある「スカシチャタテ」という種は、こすって音を出す発音器を持っていて、ピンと張った障子に止まって鳴くと、その音が障子に共鳴して、茶せんでお茶を立てる時と同じような「サッサッサッ…」という音になるということが名前の由来です。

人を刺したりかんだりすることはなく、毒成分を出すこともないチャタテムシですが、ダニと同様アレルゲンになるので要注意です。発生させないためには予防がいちばん大切なので、ハウスダストをため込まないことや、風通しがよい室内にするなどを心がけましょう。この予防法でダニの発生も抑えられます。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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