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胸に迫る「大空の弟」「別れのブルース」。「ブギウギ」が「戦争とうた」のうたを平仮名にした深い理由

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

「大空の弟」のアレンジが変わった

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)が後半戦に入った。第14週「戦争とうた」(脚本:櫻井剛)の第66回では、スズ子(趣里)が再び歌った「大空の弟」は、第49回ではじめて歌ったときとはアレンジがだいぶ違っていた。

「戦時中の巡業バージョンとして、ちょっとテンポが早くなっております。ドラマのなかでは『大空の弟』をスズ子が戦時中に歌って、多くの人たちに共感されることも多かったというふうに描いています」と制作統括の福岡利武チーフプロデューサー(以下福岡CP)は解説する。

はじめて歌ったときはピアノ1本だったが、今回は、ドラムやトランペットも入って、歌詞の内容は重いが、親しみやすい印象だ。また、スズ子は歌の途中でハガキを読むパフォーマンスも行っていた。

「手紙を読む箇所は、もともとの歌にもあったもので、今回、演出の福井充広が動きを加えました。手紙を送ってくれていた六郎(黒崎煌代)への思いと、巡業先の富山でスズ子が出会った、夫を戦争で亡くした静枝(曽我廼家いろは)の夫から送られた手紙への思いをリンクさせたいという考えからです」

ロケで、スズ子が空を見上げて歌ったことも印象的だった。

「やはり空が見えるところでロケをしたいと考えました。しかも神社という場所です。戦争で大切な人を亡くした方々がたくさんいらっしゃることを、エピソードとして入れたいと思ってのことでした」

「大空の弟」とは
スズ子のモデルである笠置シヅ子が歌ったわずか2曲の軍歌のうちの一曲で、作詞、作曲は服部良一。音源が残っていなかったが、2019年に楽譜が発見された。「ブギウギ」では孫の服部隆之が残された楽譜から編曲した。

”戦争”と”うた”を対照的に捉えたかった

茨田りつ子(菊地凛子)は、鹿児島の慰問で、これから出撃していく特攻兵たちの希望で「別れのブルース」を歌う。が、自分の信じた歌を聞いて、帰らぬ道に向かう若者たちに複雑な思いを抱く。これは、りつ子のモデル・淡谷のり子の実話をもとにしたエピソードで説得力があった。

サブタイトルの「戦争とうた」の歌の部分を平仮名にしたことにも思いがあった。

「ちょっとニュアンスを変えたくて、平仮名にすることで、軽やかにうたっているかのような印象になるかなと思いました。また、『戦争』と『うた』を対照的に捉えたかったという思いもあります」と福岡CP。

お正月休み明け、「ブギウギ」の大事なテーマである”うた(歌)”の意味を改めてかみしめながら、後半の3ヶ月、「ブギウギ」を見守っていきたい。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

前半3ヶ月の「ブギウギ」を簡単に振り返り

大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は梅丸少女歌劇団でデビューし、その後、上京。梅丸楽劇団で、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、スイングの女王としてスター歌手になる。

尊敬していて、かつライバルでもある茨田りつ子(菊地凛子)とも切磋琢磨して活動していたが、やがて戦争がはじまり、洋楽が禁止され、思うように活動ができなくなっていく。

楽劇団は解散し、スズ子は「福来スズ子とその楽団」を結成。巡業活動中に、彼女のファンだという学生・村山愛助(水上恒司)が現れた。彼は大阪の大手興業会社・村山興業の御曹司。9歳という年の差、愛助の母トミ(小雪)の猛反対、愛助の病、戦争……と次々とふりかかる困難に負けず、ふたりは愛を貫こうとする。

連続テレビ小説 ブギウギ
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間を振り返ります
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛 菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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