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全域停電のキーウ 来週はさらに寒くマイナス6度予想も

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
壊された建物の前で雪かきをする人々 (19日、キーウ州)(写真:ロイター/アフロ)

「ウクライナの人々は、初雪の日に願いごとをする。今年人々が何を祈ったのか、私は知っている。あなたはウクライナに何を願うだろうか」

キーウに今季初めての雪が降った今月16日(水)、ウクライナの内務大臣顧問であるA・ゲラシチェンコ氏はSNSにこう投稿しました。

それから1週間が経ちましたが、キーウでは連日のように雪や冷たい雨が降っています。そんな中で23日(水)、キエフ州全域で停電が起きたと外電が伝えました。

ゼレンスキー大統領は、何百万人もの人々が電力や水、暖房を失い、命の危険にさらされているとして、「冬の寒さを大量破壊兵器に変えようとしている」と声を荒げてロシアを非難しています。

真冬のような厳しい寒さに

キーウなどではすでに雪の降る寒さとなっていますが、来週はさらに気温が下がるおそれが出ています。下はBBCの発表しているキーウの気温予想です(24日時点)。

11月末の平均最高気温は3度、最低気温はマイナス2度ほどですが、30日(水)などはマイナス5度、翌日にはマイナス6度が予想されています。

寒さの一因は、北大西洋上に発生する勢力の強い高気圧と低気圧です。この2つの影響でヨーロッパ上空でジェット気流が大きく蛇行し、ウクライナにも一層の寒気が流れ込みます。

キーウの天気予報 (BBCの予報をもとに筆者作成)
キーウの天気予報 (BBCの予報をもとに筆者作成)

※ご参考までに…

ウクライナの気象局は、ホームページを逐次更新しています。リンクはこちらです。先月までは休止していたようですが、以前よりもさらに情報を充実させ、英語での表記も始めたそうです。

ロシアにはもっと痛手

ウクライナ市民はこの寒さの中、非常に厳しい環境下に置かれることは必至ですが、攻め込むロシア兵にとっても同じことです。

米国のニュースメディアやシンクタンクは、冬の天候は装備の整っていないロシア軍に、ウクライナへの影響とは不釣り合いなほど大きな損害を与える可能性があると言っています。また、ロシア軍は歴史的に「冬将軍」に助けられ、冬の戦況を有利にしてきましたが、今回は分からないとも述べています。

お風呂に入る日常

ところで、ストリートアーティストのバンクシーが、ウクライナの被害地に出没して、壊された建物の壁などに絵を残していると話題になっています。

柔道着を来た少年が大の大人を投げ飛ばしているや、がれきの上で逆立ちをする少女の、そのほか浴槽に浸かる男性の絵もあります。(写真は下)

何気ない日常の光景が突如として消えたウクライナに、一日も早く平和な日常が戻ってきますように。寒さが一段と厳しくなる中、益々その思いが強くなります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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