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冬将軍・渡辺明棋王(37)先手相掛かりで意欲的な序盤作戦 北陸・金沢で棋王戦五番勝負第2局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月19日。石川県金沢市・北國新聞会館において第47期棋王戦五番勝負第2局▲渡辺明棋王(37歳)-△永瀬拓矢挑戦者(29歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 第1局は渡辺棋王が勝っています。

 両者の通算対戦成績は渡辺17勝、永瀬5勝となりました。

 本局、対局室に現れた永瀬挑戦者は、いつもと変わらぬスーツ姿。対して渡辺棋王は和服で、上座に着きます。

「定刻になりました。第47期棋王戦五番勝負第2局、渡辺棋王の先手番でお願いいたします」

 立会人の屋敷伸之九段が開始の声をかけて、両対局者は一礼。持ち時間各4時間の対局が始まりました。

 渡辺棋王はしばし瞑想したあと、飛車先の歩を前に進めました。戦型は相掛かりです。

 両者、飛車先の歩を交換したあと、25手目、渡辺棋王は角筋を止めます。これが目新しい構想。おそらくは渡辺棋王が十二分に準備してきた作戦でしょう。

 永瀬挑戦者の選択肢としては、飛車を横に動かすモーションで歩を取る手があります。はたして横歩を取っていいものか。取る手、取らない手、いずれも考えられます。永瀬挑戦者も決断を迫られました。

 13分の考慮の末、永瀬挑戦者は横歩を取らない穏やかな順を選びました。慎重に収めて、それもまた一局です。

 33手目。渡辺棋王は歩を五段目に進め、角筋を通します。相手の桂が利いているところなので、これもまた驚きの一手。この歩もまた、取ることはできないのでしょうか。ここまでは渡辺棋王が気持ちよく指しているような印象を受けます。

 永瀬挑戦者は角を引いて前線に送り出し、初王手をかけます。渡辺棋王は盤面右に逃げ、右玉(みぎぎょく)に構えました。

 渡辺棋王の今年度成績は19勝17敗(勝率0.528)です。

 先日おこなわれた王将戦第4局では藤井聡太竜王に敗れ、王将位を失冠しました。

「冬将軍」と呼ばれる渡辺棋王。棋王戦では踏みとどまり、10連覇を達成できるでしょうか。

 永瀬王座の今年度成績は31勝19敗(勝率0.620)です。

 将棋界も年度末。残されたタイトル戦の番勝負は、この棋王戦のみです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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